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桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


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第五話:空を舞う弓使い、天音 -2

「今は共闘です!俺たちも鬼を討ちに来ました!力を貸します!」


太郎は、天音に共闘を申し出た。彼の声には、村人を救いたいという切実な願いが込められている。


「…仕方ありません。ですが、油断はしません」


天音は、渋々といった様子で頷いた。その瞳は、まだ太郎たちへの警戒を解いていない。


太郎たちは天音と協力して鬼を討伐する。


太郎は、無意識に仲間の鼓舞の能力を発動させた。

彼の全身から放たれる微かな桃色の光が、黒鉄と琥珀の体を包み込み、彼らの能力を限界以上に引き出す。その力は、天音にも伝わり、彼女もまた自身の能力が向上していることに驚く。


「みんな!力を合わせるぞ!」


太郎の号令が、森に響き渡る。


「体が…軽い!?若様の力が…!」


黒鉄は、驚きに目を見開いた。彼女の剣の動きは、これまで以上に鋭く、速くなっていた。


二本の刀が、風を切り裂き、雑魚鬼の群れへと突進する。

彼女の足捌きは、まるで舞を踊るかのように流麗でありながら、その一撃は、鬼の分厚い皮膚を容易く切り裂いた。鮮血が飛び散り、鬼の呻き声が響く。


「わーい!力持ちになった気分!これなら楽勝だね!」


琥珀は、元気いっぱいに叫び、鬼の周囲を幻影で撹乱する。彼女の素早い動きは、雑魚鬼の目を眩ませ、互いに攻撃させるほどだった。


幻影が、鬼の群れの中に無数に現れ、鬼たちは混乱して同士討ちを始める。

その隙に、琥珀はクナイを投げつけ、鬼の急所を狙う。


天音は、地上で戦う太郎たちの力に驚きながらも、その連携を見て、自分も力を合わせるように狙いを定めていく。彼女の白い羽が、空中で大きく広がる。


「この力は…まさか…私の能力まで引き上げている…!?一体、何者なのでしょうか、あの男は…!」


天音は、心の中で驚きを隠せない。彼女の放つ矢は、風の魔力を帯び、鬼の弱点を正確に射抜く。

一本の矢が、まるで五月雨のように、複数体の雑魚鬼の頭部を同時に貫いた。

その矢は、鬼の皮膚を容易く貫通し、次々と鬼を倒していく。


三人の連携が始まり、戦況は一気に好転する。


黒鉄は、二刀流で鬼の猛攻を捌き、太郎の槍が鬼の巨体を貫く。

琥珀は、素早い動きで鬼の死角に回り込み、幻惑の魔法で鬼の目をくらませる。

その隙を天音が見逃さず、上空から正確な矢を放ち、鬼の動きを封じる。

彼らの攻撃は、まるで嵐のようだった。雑魚鬼たちは、為す術もなく、次々と倒れていく。


「ぐおおおおお!」


鬼は、苦痛に叫び声を上げる。彼らの連携の前に、鬼は為す術もなく、次々と倒れていく。血と瘴気が入り混じった匂いが、あたりに充満する。地面には、倒れた鬼の亡骸が累々と横たわり、その体からは、ゆっくりと瘴気が立ち上っていた。


雑魚鬼の群れを討伐し、太郎たちが一息ついたその時、集落の奥から、これまでとは比べ物にならないほどの強大な邪気が立ち上った。


地面が微かに揺れ、半壊した家々の瓦礫が、音を立てて崩れ落ちる。闇色の瘴気が、集落の中心から渦を巻きながら立ち上り、空を覆い始めた。

その瘴気の中から、巨大な鬼が姿を現した。それは、先日太郎と黒鉄が戦った鬼よりもさらに大きく、全身に禍々しい紋様が刻まれている。その瞳は、血のように赤く、明確な知性と、圧倒的な威圧感を放っていた。その存在感は、村全体を恐怖で支配するかのようだった。


「よくぞ、我の雑兵どもを屠ったな、人間ども。だが、ここから先は、この私が相手だ。貴様らの血肉、この地獄の糧としてくれるわ!」


ボス鬼が、地響きのような声で咆哮した。その声は、集落全体を震わせ、村人たちの怯える声が、さらに小さくなる。


「くそっ…!こいつが、この集落のボスか…!昨日戦った鬼よりも、遥かに強い…!」


太郎は、槍を固く握りしめた。その全身に、緊張が走る。彼の顔には、強大な敵を前にした、武士としての覚悟が刻まれていた。


「若様、警戒を!並大抵の鬼ではありません!」


黒鉄は、二本の刀を構え、太郎の前に立つ。その琥珀色の瞳は、ボス鬼の動きを警戒深く見据えていた。彼女の体からは、若様を守るという強い意志が漲っている。


「うわ~!なんか、超ヤバいのが出てきたよ~!」


琥珀は、その強大な邪気に、思わず身をすくめた。しかし、その瞳の奥には、好奇心が宿っている。彼女は、この新たな強敵との戦いに、わずかな興奮を覚えていた。


「この邪気…私の矢が、震えています…」


天音は、弓を構えながらも、その強大な力に圧倒されていた。彼女の白い羽が、微かに震える。


「みんな!気を引き締めろ!こいつは、俺たちの力を合わせなければ、勝てない!」


太郎の号令が、集落に響き渡る。四人の間に、一瞬の緊張が走った。彼らの瞳には、強大な敵を前にした、しかし揺るぎない決意が宿っていた。


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