#50 器と告白②
リアム様の救助をするため口を寄せてから少しして、流れ入るマナが減ってきたと感じたため離れました。
ちらりとリアム様を窺えば、顔を真っ赤にしています。そんなリアム様を見て、わたしも釣られて顔を赤くしました。
っ、わたし、今……!!
急性マナ超過症になっていて酩酊状態だったわけでなく、わたしは通常の精神状態で行動しました。
これは人命救助ですが、最早キスです。ポポポポッと全身が熱くなりました。
「あ、あのっ」
「な、何かな、スータレイン嬢」
「こ、こんなときですが、リアム様に伝えたいことがあります!」
「な、何を?」
「わ、わたし、ダスティ・スータレインは、リアム様をお慕いしています! わたしと、結婚前提のお付き合いをしていただけないでしょうか!!」
弾んだ心臓をあえて落ち着かせず、勢いで告白しました。
ギュッと握った手で胸を抑え、目を閉じてリアム様の返事を待ちます。
しかし、少し舞っても返事がありません。告白は失敗かと、様子を窺いました。
「……リアム様?」
「ま、待って! ちょ、ちょっと待ってもらえるかな!」
わたしから離れていたリアム様は、部屋の隅で顔を隠していました。腕から垣間見えるお顔は赤く、耳まで染まっているような気がします。
なるほど、これも赤系統のコロルキューブとして活かせそうです。
思わず、そんなことを考えてしまうほど、リアム様の様子をずっと見ていたくなりました。
少し落ち着いたのか、リアム様は平静を装うようにソファに座りました。わたしもリアム様に倣い、斜向かいに腰を下ろします。
「え、えっと、まず、スータレイン嬢の気持ちはとても嬉しい。だけど、ちょっと考えてほしい。スータレイン嬢は十七歳。おれは二十六歳だ。年の差がありすぎる」
「そうでしょうか? わたしは気になりません」
「ほ、ほら、スータレイン嬢は男爵令嬢だ。おれは王兄だし……スータレイン嬢に、苦労をかけたくない」
「苦労は承知の上です」
「で、でもね?」
好感触なような気がしましたが、それでもリアム様の言質は取れません。
それだけ理性が働いているということ。それはすなわち、そういうこと。
「……申し訳ありません。器もなくなってしまいましたし、リアム様を救えたわけでもないですしね。大それたことを言いました。忘れてください」
「ま、待って!! って」
ソファから立ち上がったわたしの手を、リアム様が掴みます。そのときに慌てすぎたのか、リアム様は机に脚をぶつけたようです。
一度はすぐにその手を離しましたが、回り込んで躊躇うように掴み直しました。
「う、器のことは、失敗じゃない。おれのマナが多すぎたのと、おれがはしゃぎすぎた。あれだけ何度も、ずっと魔法を使えるのが初めてだったから……って、ごめん。こういうことが言いたいんじゃなくて……」
焦っているようなリアム様。落ち着いてもらおうと、掴まれた手で誘導し、ソファに座ります。
目を泳がせていたリアム様は、落ち着いたのか、わたしをまっすぐに見つめました。
「ダスティ・スータレイン嬢。これから、様々なことで迷惑をかけてしまうと思う。でも、その全てから守りきると誓う。もし、まだ気持ちが変わっていないのなら……おれと、結婚前提の恋人になってほしい」
「はい。喜んで」
「ダスティ!」
感極まって、というような感じで、リアム様に強く抱きしめられました。
名前を呼ばれるのは初めてのはずなのに、なぜかそう呼ばれることがしっくりきます。
わたしも、リアム様の背中に腕を回しました。
それから。
わたしの名前を呼んだことを謝罪するリアム様と、今後のことを話しました。
器にマナを貯蓄することには成功。ただしその後リアム様が魔法を使い続けてしまったため、またリアム様の中にマナが貯まってしまった状況。
今後ははしゃぎすぎなければ、しばらくは持つとのこと。
ただ、緩和しただけであって、まだ根本的な解決には至っていません。
これからリアム様と過ごす中で、その方法を捜していくことになりました。
これまで何度か確認されていた、四属性持ち。そして初めて確認された、魔描召喚士。
今後の対策として、どれくらいの頻度で器を作ればいいのか。四属性持ちの寿命問題はどうなるのか。
まだまだ課題はあるものの、未来に光が見えた。
「死を待つばかりだった、おれに希望を与えてくれてありがとう。ダスティ、これからもよろしく」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。そうだ。恋人のお願いということで、結晶花を」
「いや、それは駄目だ。結晶花は、ダスティのために使う」
「リアム様。なかなか頑固ですね」
「……そんなおれは嫌か?」
「いいえ。そんなリアム様も、お慕いしています」
改めて気持ちを伝えると、リアム様の手がわたしの頬に伸びてきました。
こ、これは、もしかして??
わたしは緊張しながら期待して、ギュッと目を閉じました。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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魔物の設定以外は突貫工事だった本作。
ダスティとケレイブの今後だとか、ジュリーと審問官だとか、たぶんまだ続きがありそうな気はします。
ですが、本当に突貫工事でして……。
続きもしくは他のキャラの話をまとめられたら、また書くかもしれません。
またの機会にお会いしましょう。
お会いできると良いな。
それでは。




