#48 チェイミベルの想い②
「あなたは、ケレイブ様とどうなりたい?」
「どうというか……わたしは、別に」
「本音で話す。パピに同情はいらない」
チェイミベル様の真剣な眼差しを向けられます。
チェイミベル様がリアム様を好きなのは、我が家に鑑定士としてリアム様が来たときから明白。睨まれたり忠告を受けたりしたけれど、チェイミベル様はジュリーやカリカのようにわたしを害そうとはしなかった。
それはチェイミベル様の年齢も関係しているかもしれません。十五歳と二十四歳では、考え方が違う。
それでも、リアム様を好きだということはわかったのです。何かしら、妨害をしても違和感はなかった。けれど、チェイミベル様は一切していません。
わたしを害して、リアム様の目に映る女性を自分だけにする。
そう思ったとしても、実行に移さなかった。それはひとえに、リアム様の容姿や権力に関係なくリアム様本人を慕っているから。
幻滅されたくないという、乙女心からなる気持ち。それだけ、本気だということ。
わたしは居住まいを正し、チェイミベル様に言います。
「わたしも、リアム様が好きです」
「それなら、覚悟は?」
「覚悟、ですか?」
思いも寄らない事を聞かれ、首を傾げます。
そんなわたしに、チェイミベル様は今後の予測を教えてくださいました。
わたしが召喚した器がリアム様のマナ過剰症を緩和させて、リアム様の寿命が伸びることになったら。
リアム様の気持ち次第ではあるものの、結婚するかもしれない。貴族令嬢の中の暗黙のルールを破る可能性があり、そうなったときに最後までリアム様と一緒にいるのかどうか。いられるのか、どうか。
「……正直、わたしとリアム様では釣り合わないと思います。立場も、年齢も」
「それは関係ない。ケレイブ様次第」
「そ、それは、そうですけども……リアム様のお気持ちもありますし」
「あなた、バカ? ケレイブ様、見ていればわかる」
「わかると言われましても……。わたしは、出会ってまだ間もないですし、わたしが目撃したリアム様以外知らないですよ?」
「ケレイブ様、明らかに違う。よく笑う」
「そうですね。確かによく微笑まれます」
「……パピには、あんな顔見せてくれなかった」
悔しそうに言うチェイミベル様は、本当にリアム様のことが好きなのでしょう。
そんなチェイミベル様からすれば、わたしに向けられているリアム様の微笑みは勝敗がはっきりと出てしまった。
「……チェイミベル様としては、どうなのでしょうか。長く慕っていますよね? もしリアム様の寿命の問題が少し緩和したら、気持ちを伝えようとは思わないのでしょうか」
「ケレイブ様の隣にいる条件。パピからは崩さない」
先程教えてくださったことでしょう。
隣にいる条件として、恋愛事に対応しないと。
「でも、前提条件が崩れるじゃないですか。寿命が延びれば……」
「関係ない! ケレイブ様、あなたしか見ていない!」
フーッと怒りを露わにしながら目に涙を浮かべる、チェイミベル様の悔しさがわかります。
好きだけど、好きだからこそ、昔の約束を守る。その約束を違えてしまったら、隣にいることすらできなくなってしまうから。
恋敵のわたしに危害を加えず、一途にリアム様を想うチェイミベル様。そんな彼女が、たまらなく愛おしい。
わたしは思わず、チェイミベル様を抱きしめてしまいました。
「っ、なに?」
「チェイミベル様……。明日最低限の器の数を確保して、リアム様に会ったら。わたしの気持ちを、リアム様に伝えてみようと思います。立場とか、年齢とか考えずに」
「なんでパピに宣言?」
「チェイミベル様は、わたしの恋敵です。しかしそれ以上に、リアム様を好きな者同士です。チェイミベル様には、正直でありたいのです」
チェイミベル様の反応を見るため、一度離れました。
チェイミベル様は満足げな顔をして、頬をかきます。
「ふ、ふぅーん。ダ……ディーがそう言うなら、パピも公平に対応する」
「ありがとうございます! えぇと、わたしもチェイミベル様をお名前でお呼びしても?」
「か、勝手にすればいい。パピはパピリア」
「パピリア様。ちなみに、公平とはどのようなことでしょう?」
パピリア様に窺うと、わたしが知らないリアム様のことを教えてくださいました。
婚約者時代のこと、その後のこと。リアム様がいかに格好良く、素晴らしい人柄であるかということ。
話す舞台をソファからベッドの上に移し、わたしはパピリア様が眠るまでリアム様の良いところを聞いていました。




