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虐げられた魔描召喚士(マジカルートサモナー)、王兄の心を癒やす。  作者: いとう縁凛


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#47 チェイミベルの想い①

ラストスパート。

今日中に終わります。


「チェイミベル補佐官? 本日訪問の予定はなかったはずですが」


 レディリカが対応しようとしますが、チェイミベル様はその動きを手で制します。


「真剣な話。二人きりで話したい」

「わかりました。では、レディリカは自室で待機していて」

「かしこまりました」


 新たに焼きリンゴを二人分切り、お茶の用意をしてレディリカは下がりました。


 今日のチェイミベル様は、いつもと違うようです。紙の束を持っていないし、コロルを捜そうともしない。

 本当に、真剣に話をしにきたようです。

 チェイミベル様がわたしにする、大事な話。それは決まっています。


「あなたは、本当にケレイブ様を助ける?」

「はい。助けたいと思っています」

「スキルが失敗する可能性は? そうなった場合の対処は?」


 チェイミベル様に問われ、失敗したときの対処を考えていなかったことに気がつきます。

 恐らく、八重咲きの薔薇を召喚すればリアム様のマナを貯める器にできるでしょう。ですが、それはリアム様との共同作業です。

 以前見せていただいた感じだと、リアム様はマナを移すことに支障はないでしょう。

 器の中にざっくりと入れるか、花弁一枚一枚にマナを入れるか。その違いはありますが、リアム様ならばできると信じています。


 前回、器はリアム様の大量のマナに耐えきれないで壊れています。そしてそれはリアム様に逆流し、苦しませてしまいました。

 次にやるときは、そんな失敗は許されません。


「……正直、スキルが失敗したときのことは考えていませんでした」

「不誠実。ケレイブ様の命、預けるに値しない」

「失敗を恐れていては、何もできません。わたしは、リアム様のためにいくつもの器を召喚する予定でいます。一つでは、リアム様のマナを受け止めきれないと思うので」

「いくつ作るつもり?」

「わたしが蓄えられるコロルキューブで、色を揃えられるのは九色中、八色。最低でもその数は召喚する予定で、色の組み合わせによってはもっと多くの器を召喚しようと考えています」

「口では何とでも言える。パピが監視する。八個出すまではケレイブ様に会わせない」

「望むところです」


 チェイミベル様も、気が気ではないでしょう。わたしの結果次第では、リアム様の生存確率が大幅に下がってしまいますから。


 わたしはそれから、チェイミベル様の監視付きで、器となる八重咲きの薔薇の召喚を始めました。

 これまでに上げていた魔力は順調に向上しています。魔描用板の大きさが変わり、召喚するにも魔力消費が激しくなりました。

 それでも、事前に紙で練習していた成果がでたようです。効率良く召喚でき、開始二日目にして六つの八重咲きの薔薇を召喚しました。

 一日に三つという計算で、明日になれば最低限の数を召喚できることになります。


 八つでは足りないかもしれないので、もっと出す予定です。リアム様とお会いできていないので、八つ召喚したとして八重咲きの薔薇が不発に終わる可能性もありました。

 それならば、原因を究明してさらに召喚するのみです。


 また明日気合を入れて召喚しよう。

 そう思っていると、寝る前の時間にチェイミベル様がわたしの部屋を訪ねてきました。


「少し、話する」

「はい。どうぞこちらへ」


 チェイミベル様をソファへ案内し、わたしはその斜向かいに座ります。

 チェイミベル様がした話は、社交界に出ていないわたしは知らない内容でした。


 リアム様は四属性持ちで、そのスキルは何度か確認されている。故に、寿命の身近さも知られているそう。

 リアム様は薄命の貴公子と呼ばれ、王兄だけれども、貴族令嬢の誰も手を出さないということが暗黙のルールになっていたと。

 チェイミベル様はリアム様のスキルが鑑定されるまでは婚約者だったそうで、鑑定後に白紙に戻された。五年も一緒にいたため、もちろんチェイミベル様の中にリアム様への気持ちは残る。

 けれどチェイミベル様も、暗黙のルールに則って行動していたそう。


「チェイミベル様だけ、リアム様をお名前でお呼びしていますよね?」

「ケレイブ様が、婚約の話をなくすとき許してくれた」

「なるほど。ですが、それは逆に残酷ではないでしょうか。恋愛事に疎いわたしでもわかりました。リアム様が、チェイミベル様の気持ちに気づいていないとは思えません」


 指摘すると、チェイミベル様は教えてくれました。

 リアム様は今後婚約者を取らない。それでも傍にいるなら、補佐官ということなら可能だと。気持ちを前面に出されても対応はしないと。


「ケレイブ様の名前を呼べるのは、パピだけ。それが、優越」

「それはこれからも変わらないのでは」

「違う。ケレイブ様、明らかに違う」

「違う? 何がでしょう?」


 チェイミベル様は、わたしをじっと見つめます。それはこれまで何回か見た睨みではなく、何か願いを込めているかのような眼差し。






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