#46 赤色捜し、もしくは……
八重咲きの薔薇をリアム様のマナ過剰症緩和のための器としました。
薔薇と言えば赤。そして八重咲きとわかるように、花弁の縁は濃いめの色で描いて区別できた方が良いと思います。
そうして捜し始めた、赤色。
何があるかと考え、一番身近なのはダスティローズでしょうか。わたしの髪色で、手入れがされていれば少しは華やかな色味になるかと思います。
その繋がりで言えば、ジュリーの髪もそうでしょうか。赤から橙の濃淡のある色ですが、例えるならば夏の太陽のような赤、でしょうか。
図鑑に載っていた薔薇の赤。チューリップの赤。どちらも赤いですが、違う赤みがあります。
レディリカによれば、人の手が入っている薔薇と野薔薇では、また色味が違うようです。実際に見たわけではないので表現はできないですが、赤色捜しの参考になりました。
「ダスティ様。ピーチを切りました。ご休憩されてはどうでしょうか」
「ありがとう、レディリカ。……そういえば、レディリカも髪が赤かったわね。意外と髪が赤い人って多いのね」
「髪色は、保有するスキルも影響するとされています。それに加え、遺伝も」
話をしながら、短い木の串が刺さっているピーチを見ました。
薔薇を表現するにあたり、ピーチの色は入れても良いかもしれないと。
皮が剥かれている状態のため、今わかるのはわずかに確認できる繊維のような赤。というよりかは、赤に見えるピンクという感じかしら。
「レディリカ。まだ皮を剥いていないピーチはあるかしら。あるなら持ってきてもらえる?」
「かしこまりました」
わたしの指示を受け持ってきてくれた、ピーチをまじまじと見つめます。
産毛の部分。割れ目の影。全体の色と、薄い黄色にかかる部分。
よくよく観察してみると、ピーチは赤系統の色に加えられるような色味をしていました。
フルーツで言えば、焼いたリンゴも表現できるでしょう。
表面の部分はシワがある箇所とそうでない箇所。火が通りづらくて元の皮の様子を残す箇所。
レディリカに焼きリンゴを用意してもらうよう頼み、食料庫へ行ってさらなる赤を捜します。
パプリカにトマト。トウガラシにラディッシュ。
同じ赤系統の野菜でも、色味の違う赤を発見できます。
季節的に今はないもの、他国のもの。挙げていけばきりがないほど、赤色は食べ物だけでもたくさんあります。
今視認できない赤に関しては、コロルキューブとして蓄えられないでしょう。
それに、蓄えられるコロルキューブの数にも限りがあります。
半透明の区分けされた箱には、コロルキューブが百個までしか入りません。
そこまで考えたとき、ふと思いました。
薔薇とは赤いものだ。そう考えて、赤色を捜していました。
リアム様と検証を重ねないとわかりません。ですが、十歳の頃から蓄積されているマナは、いくら八重咲きの薔薇といえど一つ分で足りるのかどうか。リアム様の身体に負担がかからないぐらいの、マナを貯蓄しなければいけません。
色は視認すれば毎日同じ数だけ用意できます。ですがもし、一回の召喚で必要分の貯蓄ができなかったら?
検証次第ではありますが、何事も想定しておいて損はないでしょう。
召喚するのはわたし。それならば、わたしの見解次第で薔薇の色はどうとでもなるのでは。
そうなると、最大で召喚できるのは赤、橙、黄、黄緑、緑、深緑、紫、茶、白の九色。
紫が一番難しいでしょうが、八回は召喚できるくらいのコロルキューブを集めましょう。
「ダスティ様。きりの良いところで休憩してください」
レディリカに声をかけられ、席に戻ります。そして何気なく、ピーチを食べながらレディリカを見ました。
レディリカの髪は、情熱的な赤。瞳は、少し熱を下げたような赤みのある橙。
そう。人は髪と瞳の色がある。
リアム様ならば、輝く金髪とミントグリーンの瞳。
八重咲きの薔薇を召喚する一例として、髪色を縁に、瞳の色を広い面での色づけとして使っても良いかもしれない。その逆も。
それがリアム様の色ならば、まさしくリアム様にふさわしい薔薇の器となるのでは。
……ダスティローズと薄い緑なら、わたしの色。わたしが、いつも傍に、なんて。
妄想を膨らませてうっかり口元を緩めていると、お客様が来訪しました。
何か決意をしたような、チェイミベル様が。




