#30 スキル披露までの道のり
陛下にスキルを披露するまでの七日間。
わたしはスキル合宿を行いました。
まず、コロルのために魔力が高くないといけません。コロルボックスを展開し続け、魔力とは、スキルとは何かを身体に染みこませます。
次に、魔描用板に描くための色集めと、描く際に多大なる魔力を消費すること。これにも慣れていきます。
そして、魔描用板に描くたびに急性マナ超過症になるまでがセットです。
さすがに何度もリアム様の魔力を譲渡してもらうわけにはいかないので、倒れる度に休養して、という毎日でした。生野菜を無心で食べる日々は、できれば繰り返したくはありません。
わたしのことを全面的に任されているのか、それともまたリアム様がその身を削るようなことをしないようにするためか。
チェイミベル様が泊まりがけで、ずっと訓練を見てくれていました。
リアム様から魔力譲渡を受けてから、チェイミベル様からわたしへの対応が少々厳しくなっているような気がします。いえ、それは気のせいではないでしょう。
わたしは、それだけのことをリアム様にさせてしまったのです。
七日間はとても厳しい訓練期間でした。
そこでふと、研究所島に来たことのことを思い出します。あのとき馬車を襲った男性は、もしかしたら厳しい訓練から逃げようとしていたのではないかと。
リアム様の黒い微笑みも思い出し、身体がぶるりと震えます。
あのときのリアム様は、貴族に配慮していることを言っていました。ですがその言葉を借りれば、家から出て少し時間が経ったら、あの微笑みを浮かべるリアム様が考える教育課程をこなさないといけないのです。
それは、きっと。もしかしたら、訓練所から逃げ出したくなるような教育課程なのかもしれません。
貴族出の方々は、人によっては甘やかされてきたでしょう。国から課されている義務とはいえ、反発もありそうです。
その反乱分子を、力で抑えるリアム様。
それは王兄という立場もそうだし、四属性持ちということもそうでしょう。
だから、リアム様は強くないといけない。強いと思わせないといけない。
なぜこんなにもリアム様のことを考えているのかといえば、単純に目のやり場に困っているから。陛下の元へ行くため、リアム様にエスコートされているのです。
訓練生の金ボタンがついた白い制服を着たわたしを、同じ配色の正装をしたリアム様が研究所五号棟内の部屋へ連れて行きます。
わたしが住む家に迎えに来てくださったときの、チェイミベル様の表情が忘れられません。
リアム様は、王兄。陛下の兄で、王子様。普段から人目を引く容姿をしていると思っていましたが、正装となるとその破壊力は絶大。
チェイミベル様の気持ちを知っているわたしですら、見惚れてしまうようなお姿でした。ですがそんなリアム様を見慣れているのでしょうか。レディリカは、顔色一つ変えませんでした。
最初に急性マナ超過症になって四日後。七日の内の後半、毎日のように顔を見せてくれていたリアム様のお姿を見ていなかったというのも、思わず見惚れてしまう原因だと思います。
男性のリアム様に向ける言葉ではないですが、美人は三日で飽きるという格言。まさに、その通りでしょう。
見慣れていたお顔を数日見ないというだけで、リアム様の整っているお顔や均整の取れた体格に目が行ってしまいます。
鍛えられているとわかる背中は、広く大きく、頼りがいがあると感じました。
リアム様がエスコートしてくださり、わたしは五号棟のある一室に通されます。
華美な装飾はない、けれど質素すぎない部屋には陛下と数人の侍従がいました。リアム様とわたしとレディリカが入ると、陛下に頭を下げて部屋から出て行きます。
陛下は、リアム様とご兄弟ということがよくわかりました。
まばゆい金髪と、リアム様よりも少し濃い緑の瞳。柔らかな面差しが、リアム様を少し年若くしたような印象を受けました。
「スータレイン男爵令嬢。よく来てくれた。兄上から、あなたはとても優秀なスキルだと聞いている」
「お褒めにあずかり光栄です」
「さっそくだけど、スータレイン嬢のスキルを見せてもらえるかな」
「かしこまりました」
わたしは、背負ってきたコロルボックスを展開しました。




