#23 誕生日①
審問のための部屋を出たわたし達は、研究所三号棟からも出ました。
「妹さんの審判が下ったら、知らせるね」
「ありがとうございます」
「今日はもう遅い。ガソスまで戻る馬車はもうないんだ。そこで、スータレイン嬢は二つの選択肢がある」
「何と何でしょうか」
「一つは、チャスタに乗っておれの家に行く。もう一つは、五号棟まで行って仮眠室で休む。どっちが良い?」
「それはもう、五号棟まで行くこと一択だと思います」
「そう? それは残念」
ふふっと笑うリアム様は、どこか儚げに見えました。南の空から落ちる、満月の明かりのせいでしょうか。
男性に美人というのは表現として違うと思いますが、リアム様を見て思ったのはまさしく、美人薄命。スキルの性質上、婚約者を持たないと言っていました。
もしかしたら、そういうことなのかも、と思います。数奇な運命に翻弄されるような、そんなスキルなのかもしれません。
リアム様がチャスタ様の手綱を引き、四人で五号棟まで歩きます。
秋の深夜はとても静かで、虫の音も聞こえません。リアム様の隣を歩くチェイミベル様の弾んだ声が、よく聞こえます。
出発地点の三号棟がある敷地から抜け、西に進むようです。リアム様と、チェイミベル様。わたしと、レディリカ。
それぞれが歩き、五号棟へ向かいます。
「レディリカ。五号棟は何を研究するところなのかしら」
「五号棟は、複合的なスキルを研究する場所になります。リアム様が五号棟の最高責任者を務めておりまして、チェイミベル補佐官もこちらの出身ですよ」
「なるほどね。そういえば、リアム様のスキルは鑑定と他に何かあるのかしら」
「リアム様は、火、水、風、土の四属性を持っています」
「えっ、すごい!」
「えぇ、本当に」
レディリカが、どこか憂いを帯びたような顔になりました。今の話の中で、どこにそんな要素があったでしょうか。
レディリカに質問しようとしましたが、話題を変えられてしまいます。その相手は、前を歩くリアム様。
「今夜は五号棟の仮眠室で休みますが、これからどうしましょうか。ダスティ様のスキルも確定しましたし、煉瓦造りの家でなくても良いと思います」
「そうだね。煉瓦造りの違う家に行っても良いし、居住区の中から選んでも良いし。ただ、妹さんは三号棟預かりだけど、彼女の侍女がいるからね。そことは離れた方が良いかも」
「あの侍女は、ジュリーの所で世話をするのでは?」
「通常はね。ただ、極刑にならないようにするとして、スータレイン嬢の妹さんがしたことは殺人未遂だ。外界との接触は最小限になる。よほど忠義心の高い侍女なら傍にいることを申し出るだろうけど……」
ジュリーの侍女であるにもかかわらず、カリカは仕事を放棄してリアム様を見ようと侵入しました。忠義心よりも自分の欲望の方が強いはず。
「では、あの侍女は研究所の敷地から出すということでしょうか」
「あの侍女は、スータレイン家が雇っているよね? 特に何もなければ、そのまま戻ってもらうことになると思うよ」
ジュリーの侍女としてついてきたカリカ。本分を忘れて、わたしが住む家に侵入してきました。
そのまま、帰るかどうか。
ジュリーが対応できない代わりに、わたしがスータレイン家の代表としてカリカと話さないといけないかもしれません。
四人で歩いていると、目的の五号棟に着いたようです。
日付が変わるぐらいの深夜なのに、いくつかの部屋にはまだ明かりがついていました。皆さん、研究熱心ですね。
建物の造り自体は、三号棟とあまり変わりません。鉄格子がないぐらいでしょうか。
裏の方へ回り、リアム様の案内で一階にある仮眠室へ向かいました。
ベッドが集合しているような大部屋ではなく、一つのベッドが小部屋にあるような場所です。
それぞれが一部屋ずつ使うことになり、入室しました。
長めだったので分けました。
続きはこの後更新します。




