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#15 食材になる魔物のお勉強


 わたしのスキルの内容が判明し、なるべく多くの色を学びコロルに取り込んでもらわないといけなくなりました。

 さらに、コロルとスキル使用のため、魔力を上げないといけません。

 そのために、コロルから聞いた情報を元に、魔物のことを知ろうという流れになりました。


 本来、わたしは研究所でスキルの研究がされる立場ですが、わたしが倒れている間にレディリカがリアム様と話してくれたそうです。

 マナの枯渇は命に関わる。だから、スキルの研究よりも魔力アップを優先するようにと。


 レディリカが講師として、わたしに教えてくれることになりました。

 コロルは、わたしが倒れてしまってからずっと起きていたようです。今はコロルボックスのポケットに腕をかけるように、寄りかかって寝ています。


「では、僭越ながら講師を務めさせていただきます。まず、魔物は確認されている種類は三十種類あります。その内の十種類が、食材を落とす魔物となります」

「マンペラがニンジンかブロッコリー。確か、ミナレッチャというのがジャガイモを落とすのだったわね」

「そうです。ダスティ様のスキルを考えると、今後、魔物退治かそれに同行する形になるかと思います。覚えておいて損はありません」


 そう言って、レディリカが用意してくれたと思われる魔物の一覧表を渡されました。

 そこには魔物と思われる姿も描かれていて、どれも愛嬌のある可愛らしい見た目をしています。

 動物性、植物性と戦利品ごとに分けられていて、動物性の欄に見覚えのある色が描かれていました。


「これは、スヴェラね? あれ、でも確か、スヴェラは深緑の山羊ではなかったかしら」


 色は合っています。しかし形が、少し違うような?

 確かに角はあったと思うけれど、左右に一つずつだったはず。四本もなかったはずだけれど、わたしよりも魔物を見ている数が多いレディリカが描くのですから。

 恐らく、わたしが見間違えたのでしょう。


 そう思いつつ、一覧表から顔を上げました。

 レディリカが、顔を真っ赤にして目を泳がせています。


「も、申し訳ありません。絵があった方がわかりやすいかと思ったのですが……す、すぐに片づけますね」

「どうして? レディリカがわたしのために作ってくれたのでしょう? 可愛らしい絵だと思うわ。わたしは絵が描けないから、そもそも描けるだけで羨ましいもの」

「ダスティ様……ありがとうございます」

「赤毛は昔からヘタ。スヴェラは、角は二本だけ」

「なっ!? よく見てください。私はきちんと角を二本描いています」


 レディリカと話していると、チェイミベル様が入ってきました。そして突然、レディリカの絵を酷評します。

 絵を批判されたレディリカは、同意を求めるようにわたしを見ました。

 わたしは思わず、レディリカから目をそらしてしまいます。


 ごめんなさい、レディリカ。わたしも角が四本だと思ったわ。


「……チェイミベル様。本日は、どうしてこちらへ?」

「パピの仕事。詳細不明のスキルのことを記録として残さないといけない」

「なるほど。わたしは魔力を上げることが急務なので、その供給源になる魔物について勉強していました」


 机に置いていた一覧表を指差します。

 レディリカの真面目さがわかるその表を見ると、チェイミベル様は鼻で笑いました。

 努力の結晶を鼻で笑うなんて、と抗議しようと思いましたが、悲しいかな、わたしの目線はチェイミベル様の手元へ行きます。


 リュックから紙の束を取り出したチェイミベル様は、何も見ていないのにさらさらとスヴェラを描きます。

 黒で描かれているはずなのに、スヴェラの深緑の色が浮かび上がってくるような気がしました。躍動感があって、今にも動き出しそうに見えます。

 レディリカを補助しようと思っていましたが、完璧すぎる仕上がりにぐうの音も出ません。


「……チェイミベル様、すごいですね。なぜこんなに正確に描けるのでしょうか」

「パピのスキルの一つ「記憶・全」は、見たもの全てを覚える。後は、そのまま模写するだけ」

「ほぁー……。すごいですね、スキルって」

「別にすごくない。ケレイブ様の方がすごい」


 なぜそこでリアム様?

 そんな疑問を抱きつつ、チェイミベル様のお顔を見ているとほっこりします。

 まるで恋する乙女のように、ほんのりお顔を赤くされている様を見ると、どんな話題でもリアム様と繋げたいのだろうなと思ってしまいます。


「そういえば、リアム様はお忙しいでしょうか。マンペラをいただいたので、お礼をしたいのですが」

「ケレイブ様は暇じゃない。パピから伝えておく」

「はい。それでは、お願いします」


 はて、なぜ睨まれたのでしょう?


 チェイミベル様に睨まれた理由はわかりませんでしたが、その後も勉強を続けました。

 レディリカが描いた愛嬌のある絵の隣に、チェイミベル様の完璧な絵が一覧表に追加されます。

 魔物の情報は、細かいところもレディリカが書いてくれていました。その中でも気になったのは、二~三歳ぐらいの子供の大きさをした、灰色の鶏。

 こうして事前に情報を知っていないと、遭遇したときに頭が混乱してしまうかもしれません。情報、大事。


 その日の昼食は、レディリカがシチューを作ってくれました。

 チェイミベル様と討論することが多いですが、何だかんだいって昔馴染みなのでしょう。チェイミベル様にもシチューを出していました。


 ニンジンが苦手というチェイミベル様に、レディリカがだから成長しないのだとからかいます。

 そんな話の延長上で、二人の年齢が二十四だと初めて知りました。レディリカは納得ですが、あんな愛でたくなるような身長のチェイミベル様が、わたしよりも年上。

 人間、見た目ではないのだなと思いました。





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