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フィルムカメラにまつわるストーリーその6

作者: ユニトール

中浜健太は、地方の物販業に勤務する47歳。

東京の私立大学を卒業後、地元に戻り長年にわたって同じ会社で働いてきた。

彼は、ネット販売部門の統括責任者としてITの発展を目の当たりにしてきた。


健太の趣味は、スポーツ観戦とスポーツをフィルムカメラで撮影すること。

就職して最初のボーナスで購入した高機能なフィルム一眼レフカメラは、

1/8000のシャッター速度でコンティニュアスAFが優秀で高速連続撮影

(最高7コマ/秒)が可能な彼の宝物だった。

市のマラソン大会や県の陸上競技会場で、そのカメラを駆使して撮影することは、

彼にとって最高の楽しみだった。


しかし、時代は変わり、デジタル技術は急速に進化していった。

健太は連写速度20コマ/秒の最新型ミラーレスカメラを手に入れ、

その快適な撮影に魅了された。ただ、新しいカメラの魅力に心を奪われながらも、

彼の心の片隅にはフィルムカメラを気に留めていた。


健太は、インターネットが一般に広まりつつある頃に入社、

会社初の大卒新入社員として新たな風を吹き込んだ。

彼が作成したショッピング機能付きのホームページは、

会社の業績を大きく押し上げ、地元紙で大きな話題になった。

その後もネットの大手ショッピングモールやオークションサイトに出店。

好調な業績により新卒の優秀な社員も増え、会社は200人規模にまで拡大した。


しかし、健太が会社に持ち込んだプログラミング技術も、

次々に入社する社員によって、より高度な発展を遂げ、

彼は立場的には部長と言う役職を得たが、

第一線から少し離れ、実質的にサポートの立場に移行した。

健太は、若い力に目を細めながらも、第一線を退いた自分を、

自宅の防湿庫に保管したフィルムカメラに重ねていた。


休みの日、健太は久しぶりにフィルムカメラを手に取った。

ただ、スポーツの撮影にこのカメラを使うことはもうなかった。

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