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番外編3-3

クリスマス・イブはカップルと女性客で店は混雑していた。

この日は、海人がピアノを弾きにやって来るという事もあり店の裏側もいつもより人の出入りが多く落ち着かなかった。カズのテンションがいつも以上に高いのは分かったが陸も何か落ち着きなく時計ばかり気にしていた。ナオはマスターから海人の恋人である夜理が来るので2階の部屋に案内するように頼まれていた。海人の恋人である夜理は何度か店に来たことがあったので知っていた。色白の美人でモデルのようにスタイルも良く笑うと花が咲いたように艶やかであった。2人の歳の差はひと回り近くあったが美男美女のお似合いのカップルだと思った。


夜理がやって来たのは8時半ごろだった。入り口をずっと気にしていたナオは直ぐに向かうと声をかけた。


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。ご案内します」

「お願いします」


ナオの言葉に夜理は頷いた。夜理は一緒にいた女性に何か囁くと女性は驚いて店の中を覗き込んでいた。ナオは、その女性が以前マスターと一緒に来た女性だと直ぐに気がついた。前の時のように濃いメイクはしておらずナチュラルなメイクとワンピースがとても似合っていた。

2階へ案内している途中、2人は楽しそうにおしゃべりをしていた。どうやら夜理の方が年下らしく一緒の女性は美鈴という名前である事も分かった。VIPルームへ着くとドアをノックしてから声を掛ける。それから2人に笑顔で頭を下げると夜理も笑って返してくれた。男なら誰もがときめいてしまうような笑顔だ。後ろにいた美鈴もお礼を言うと笑って返してくれたふとその時、落ち着かないでいる陸を思い出した。以前マスターと彼女が来た時も陸は気にしていた。


(ああ、そうか)


ナオはマスターの言葉を思い出した。


(彼女が陸の大切な人なんだ)




陸がその大切な女性を連れて来たのは、それから半年くらい経ってからであった。

しかし紹介してくれたのは夜理であった。


「ナオくんとカズくん。彼女は美鈴さん」


夜理の紹介にカズは素早く手を差し出し美鈴の手を握る。


「よろしく〜」


少し驚いたようであったが美鈴も笑って返していた。それから自分の方を向き笑顔で話してくれた。


「ナオくんはクリスマスの時に案内してくれたら覚えてるよ。大人っぽくてしっかりしているのに私より年下だって聞いて驚いたんだ」


ナオも美鈴の言葉に驚いてしまった。そういえば夜理と一緒に来た時も、夜理より年上だと言う話をしていた事を思い出す。それなのに自分より下だと勝手に思い込んでいた。


「へぇ。美鈴さん、いくつなの?ナオは23だったよな」


カズが興味深げに聞く。


「24だよ。あんまり見えないでしょう」


美鈴の言葉にナオは相槌をうてなかったが、カズは気にせず頷く。


「見えねぇ。21か2ぐらいかと思った。んじゃあ陸とは4つくらい離れてんだ」

「そうだね…4つ離れてるね」


美鈴は普通に答えてくれたがナオは何かヒヤヒヤした。

案の定、陸が少し不機嫌な顔で口を挟んだ。


「別に幾つ違ってもいいだろう。それより美鈴達は買い物行くんだろ。行ってくれば?」


陸の言葉に夜理は肩を竦めるのが目に入った。その後、夜理から少しだけ教えてもらったのだが陸は独占欲が強く美鈴が他の男と話す事を好まないのだと教えてくれた。何か以外でもあり頷けるようでもあった。その後、陸が美鈴を連れてくる事はナオが知っている限りなかった。

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