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 私はそれからエレン嬢になるべく会いに行った。週に一度は会いに行こうと心がけたものの、どうしても時間が取れない時は月に一度になってしまった時もあった。

 祭りの開催が近くなったためそれに向け、街に置く警備団員の配置決め、見回りの順路、ほか何かあった時の増員の人数、予めの街の安全の確保などやるべきことが多く、休みが取れなかったためだ。祭りの日は人出が多くなるため、必然王都を守る警備団も多く借り出される。そのため私は王都警備団に入ってから、祭りの日を休んだことはまだ一度としてなかった。


 そうこうしているうちに半年が経ち、エレン嬢がドレスを着られるようになった。

 今までは傷のせいでドレスが着られず外に出歩けなかったが、やっと外に出られるようになったのだ。

 だというのに、彼女は私に「街に連れて行って」とは言わない。

 私が今まで付き合いのある女性ならば、婚約者の特権でこれ幸いとばかりに当たり前のように強請るであろうことを。

 思えば、彼女はこれまで一度として、私に何かを望んだことがなかった。

 私の会話をただ楽しそうに聞く彼女。

 その榛色の純粋無垢な瞳がそれだけで満足だと語っていて、けれどその瞳がそれ以上のことを彼女にしてやりたいという気持ちにさせる。


「ドレスを着られるようになったのなら、この次は外に出掛けてみないか」


 彼女がドレスを着て数度目の折、私から誘うことにした。


「え?」


 目を見開く彼女。


「こうしてお茶を飲むのも悪くないが、たまには外に出るのはどうだろうか。良い気晴らしになると思う」


「はい。私もお出かけしたいです」


 顔を赤くさせて喜ぶ様子に、私も顔を綻ばせた。


「そうか。では、次の休みの日に街にでも行ってみよう」


「はい」


 そうして、初めて婚約者らしい約束を彼女と交わしたのだった。




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