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そして家に帰ってきた私。
部屋に入るなり、灯りもつけず寝台の上に泣き崩れた。
パトリス様の言葉が頭から離れない。
――『私たちは思い合っていた仲なの』
そんな二人の間に私は入ってしまった。
フェリシアン様に想う方がいたこと以上に、フェリシアン様に辛い思いをさせてしまったことに心が痛んだ。
あの微笑みの下で、どれほどの哀しみを抱えていたのだろう。
そんな素振りを露とも見せず、ずっと優しく接してくれたフェリシアン様。
パトリス様もまた優しい方だった。
物腰柔らかで、二人の仲を引き裂いた私にも嫌な態度ひとつ取らなかった。
まさにお似合いの二人。
そんな二人のあいだに立つ私。
――私は一体どうすれば良いの?
悲しみが渦を巻いて、呑み込まれしまいそうだった。
泣いても泣いても、涙は枯れることなく溢れてくるようだった。




