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「はあ」


 私は読んでいた本から視線を外し、顔を上げた。

 集中できなくて、自室の窓から見える景色に目線をやる。

 無意識に出た溜め息は自分でも思いの外、重かった。

 あれから十日。

 あの日から毎日、フェリシアン様と公爵令嬢の姿が頭にちらつくようになってしまった。

 あの後フェリシアン様は私のもとに来てくれて、再び夜会のパートナーを務めてくれた。

 いつも変わらない優しさをその瞳から感じとった時、私は心底ほっとした。

 フェリシアン様の口から公爵令嬢について語られることはなかった。

 デビュタントを終えてから一度だけ、フェリシアン様にお会いすることがあった。

 その時のフェリシアン様の態度はいつもと変わらず、結婚式の準備も順調に進んでいると教えてくれた。


――きっと私の考え過ぎね。


 フェリシアン様と公爵令嬢との間に、本当に親密なものがあるならば、『責任』からとはいえ好いていない相手との結婚を選ぶとは考えにくかった。

 フェリシアン様は誠実な方だもの。

 フェリシアン様が何も言わないなら、私が気にしたところで何にもならないわ。

 結婚式の準備をここまで進めてくれたフェリシアン様に今更あれこれ思うのは、失礼な気がして、私は思考を中断した。 

 そして、読みかけだった本に再び目を落とした。

 今、読んでいるのは庶民の暮らしに焦点を当てた本。 

 最近、王立図書館で借りてきた本だった。

 フェリシアン様の『民に常に寄り添え』というお言葉を聞いてから、私も庶民のことを知りたいと思うようになっていた。

 成人も迎えていない一男爵令嬢にできることなど知れてるため、自分で考えたなりにこんなことから始めてみたけれど。

 

――それでも、少しでも将来の役にたったら良いな。


 そう仄かに願いを心に灯して、私は本に集中したのだった。


 それから二週間後。 

 結婚式を四日後に控えた夜。

 私はあるパーティーに出席した。



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