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[短編]交差点Pにxを続けて赤い糸になるまで

掲載日:2021/12/08




「うん、だから、この点A(3,9)の接線(せっせん)の傾きを求めるのは」

「せっせんって、せっぷんと似てない?」

「似てない。…どこから話聞いてなかった?」

「…座標がどーたら、こーたら」

「開始10秒かよ!」


 俺は頭を抱えて机に突っ伏した。


 冬休み前の最後の補習に出されたプリント。


「終わったやつから帰っていいぞー」


 先生のそのセリフから1時間以上経ってもまだ帰っていない心愛(ここあ)を見に来たら捕まった。


「ねぇ、波瑠人(はると)、クリスマスは何してるの?」

「バイト。はい、ここから解いて」

「交差する点Pが…」


 カリカリとシャーペンの音が響く。


 うつむいた心愛(ここあ)の前髪がふわりとこぼれて、まつげにかかる。

 俺はまつげにかかった髪を人差し指で、そっと外す。


 冬の教室は、室内灯に照らされてやけに白々しい。


 2問目まで解いた心愛(ここあ)が、視線はプリントに向けたまま、話しかけてきた。


「ねぇ、大学、決めたの?」

「うん、行かないで働くよ」

「…波瑠人(はると)、頭いいのに」

「お前よりはなぁ」


 たぶん、心愛(ここあ)は進学だ。それも地元ではない大学に。


 今は、目の前にいるけど、2年後には離れている。この接線のように。


 曲線と直線が一瞬だけ交差する。


 そして、離れる。二度と交わることはない。


 それでもいいからと、付き合い始めたのが、今月初め。

 バイトのシフトも決まった後だった。


「ねえ、波瑠人(はると)、このグラフ、あたしたちみたいだね」


 カリカリと書いたまま、心愛(ここあ)が言った。


「…そうだな」


 上手い切り返しもできなくて、そのまま答えた。



「この身体的接触は、どこだと思う?」

「は?」



 しんみりとした俺の気持ちをへし折って、心愛(ここあ)は続ける。


「こう、ちょっと触れてる感じの交差点がPだとするなら、これはキスだと思うの」

「いや、ちょっと待って。お前、今はそのプリントを」

「なんのために、ひとり残ったか教えてあげようか?」


 にんまりと顔を上げた心愛(ここあ)の手元を見ると、全て解答欄が埋まっていた。


「お前…!」


 全部解けてるじゃないか!


「さ、交差する点Pを解いて終わりにしようよ」


 そう言って、心愛(ここあ)は俺の唇にキスをすると、首を傾げて可愛く笑った。





 帰り道に手を繋ぎながら、


「xって、キスの意味じゃない。それで波瑠人(はると)とキスしたいなーと思って居残りしてた」


 と無邪気に笑う心愛(ここあ)が俺のバイト仲間になるのを知るまであと少し。



 そして、「あたしも一緒に働く〜」と心愛(ここあ)が言うまであと1年。




 そして、「結婚しようか」と俺が言うまであとx年。





 そして、子どもが…








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― 新着の感想 ―
[良い点] んなるほどぉ~♡♪ こぉんな感じで、書くと良き♡♪なのですね~…♡♪ 甘々~♡♪ラヴラヴぅ~♡♪(*´Д`*)(*´▽`*)♡♪ 知略…汗 ひっかかってるオイラ…滝汗(;´Д`) んでも、…
[良い点] たわいない話ながらも、そこに数学だの接線だのを使う所が小憎い。交差点の投稿100件超で、数学が出てくるのってこの話だけなんですよね
[良い点] やだもう♡ 可愛い♡ [気になる点] >無邪気に笑う 彼女の内心は、本当に無邪気なのかな……♡
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