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涙、あふれる  作者: 桃口 優/最愛を紡ぐ作家


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十章 「涙を流すわけ!?」

また動きがあります

静寂はいつも突然壊される。  

 その日はいつもより寒かった。


「今話題の涙する話を聞いてくれるお店はこちらかしら?」


 ブランドもので着飾った女性はそう言いながら店に来た。 


「はい、そうです」


 彼女からザワザワした冷たさを感じた。


「ふーん、雰囲気はいい感じね」   


 彼女は店をゆっくりと物色するように見回す。


「ありがとうございます。お客様にリラックスして話してもらえることを心がけています」



「ねぇ、あなた。そもそも人が、涙を流す訳を知ってる?」  


 彼女は突然私の目を見てそう言ってきた。

 なんだか相手にのまれる感じがする。

 それぐらいは大体私も知っている。

 でも、彼女の考えも聞いてみたかった。

 だからこう答えた。


「いえ、知りません」


「大きく分けて3つ理由があるわ。1つ目は乾燥や細菌から目を守るため。2つ目は目に入った異物を取り除くため。3つ目は悲しいや悔しいなどの感情の涙」


 彼女はさらに話を続ける。


「人間の機能から考えれば、3つ目は人が都合よく作り出すもの。それのどこにも真実なんてないわ」


 彼女は私がお金で話を買い取っていることをバカにしてきただけとすぐにわかった。 

 だから黙っていた。


「あなたが何をしたいかわからないけど、人が涙を流すのは自分がかわいいからなのよ。そしてそんな自分を人にアピールしたいからなのよ。嬉しくて泣くのも、悲しく泣くのも根底にあるのは同じよ。深い意味なんてないわ」


 なんでだろう。こんなことを言ってくる人もいつか現れるとわかっていた。

 現に今もそうだとすぐにわかった。

 それなのに、今胸が苦しい。


「お客様、貴重な意見ありがとうございます。ところで、涙する話はどのようなものですか?」


 私が立ち尽くしていると、水篠さんが助け船を出してくれた。

 こういう人の対応を水篠さんは本当にうまい。前にも変わったお客さんが来たときも対応してくれた。

 

 

「どんな人が店をやっているか見に来ただけよ。いいのは見かけだけね。こんな世間知らずの幼いお嬢様だったなんてがっかりだわ」


 女性はそのまま帰っていった。

 私は何も言い返すことができなかった。




 涙はきっとそんな理由で流れるのじゃない。 

 そう思いたかった。

 それじゃああまりにも悲しすぎるから。

 はっきりと言えないのは、私にはなぜ人が涙を流すのかわからないからだ。

 私はこれまで生きてきて一度も自分の意思で涙を流したことはない。

 もちろん、赤ちゃんの頃は普通に泣いていた。

 でも物心ついた頃から今までは泣いていない。

 自分が体験していないことは、なぜそれが起きているのか本当の意味ではわからない。知識だけで納得させるのも違う気がする。

 辛くても私は涙を流さなかった。

 我慢していたわけではない。本当に涙が流れてこなかったのだ。感情がないわけでもないと思う。

 涙を流す以外は普通に怒ったり落ち込んだりするのだから。

 だから、私は涙が出る瞬間を味わいたい。

 他の人の涙する話を聞けば涙とは何かわかるかと思った。

 私も同じように涙を流すかと思った。

 私は、そのために涙を求めていた。

お読み頂きありがとうございます。



涙を流したい理由に近づいてきましたね

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