始まりの都市
五つの国が併合してできた国パフレメア、その中央に位置する都市パレスには多くの人が集まる。商人や旅人、ほかの都市からの旅行者など様々だが、一番多いのはやはり魔法を学ぶために来る人だろう。この都市で魔法を学び優秀な成績を残せば、国の兵士として仕えることができ、そうなれば国から大きな援助を受けることができる、大きな出世を夢見る若者、彼もその一人だった。
「やっと着いた~~!」
たどり着くや否や彼は大声をあげた。彼の住んでいた場所はドが付くほどの田舎だ、ここにたどり着くまでに半日近くかかっている。余裕をもって出てきたつもりだったが彼が着くころにはもう夜中のなっていた
(めっっっちゃ疲れた、今日はさっさと宿探して休もう)
「止まれ」
彼が街に入ろうとすると門番らしきものに声をかけられた。
「貴様名前は?何しにここへ来た?」
「名前はカイト、ここには魔法を学びに来た」
「魔法学園に入学しに来たということか、推薦証は持っているか?」
基本貴族でない限り、学園に入学するには推薦証と呼ばれるものが必要となる。推薦証とは、“こいつは入学するに相応しい”と国が認めた場合にのみ手にすることが出来るもので、これが無ければ平民は入学すらできないのだ。
「あるよ、これだろ」
カイトは胸から筒状の箱を出し、門番に渡した。
「…確かに確認した、通れ」
カイトは門番にペコリと一礼して中に入った。
次の日、さっそくカイトは入学手続きをするために魔法学園へ向かった。
「ここか…」
初めて目にする学園は、学びの場所というより一つの街のようだった。入り口付近にはいくつか店のようなものがあり、少し奥を見ると数えきれないほどの建物が並んでいる。そして一番奥のひときわでかい建物は、まるで城のようでこの学園がただの学園でないことが一目で思い知らされた。
「ここに並べばいいのか?」
学園の入り口の前に長蛇の列ができていた。
(すごい量だな、これが全員入学生か?)
そして小一時間並んでようやくカイトの番が来た。
「推薦証をお見せください」
受付の男に言われてカイトは推薦証を渡した。
推薦証をしばらく見ていた男の顔が、突然険しくなった。
「カイト…君がそうか、悪いが君はこの中には入れないよ」
「…は?」
男の言ったことが理解できず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「な、なんでだよ!?推薦証があれば入学できるはずだろ!?」
うろたえるカイトとは裏腹に男は冷静に話しを続けた。
「推薦証を発行する者にはもう一つ仕事があるんだ」
「もう一つの仕事…?」
男はうなずいて話を続けた。
「そうだ、それはなこの学園に推薦した者の魔法適性値を送ることだ」
魔法には大きく分けて五つの属性がある。火、水、風、光、闇、魔法適性値とは、自分の魔力がこの五つの属性にどのくらい適しているのかを数値化したものである。
「…もう一つの仕事ってのは分かったが、それがどうしたってんだよ」
「それが問題なのだよ、当然君の魔法適性値は送られてきた。しかしなそれが0だったんだ」
「は?0?」
男は大きくため息をついた
「そう0だ、要するにお前はどの属性にも適性をもっていないということだ。それがどういう意味か分かるか?」
カイトは頭が真っ白になってしまった。突きつけられた現実を認めたくないと言うように、頭が考えるのを拒否してしまっている。そのまま男の次の言葉を待つしかなかった。
「魔法適性値が0ということ、それはお前がどんなに努力しても魔法を使うことが出来ないということだ。これがお前が入れない理由だ。理解したか?」
その言葉が合図だったように、カイトは膝から崩れ落ちてしまった。しかし同時に一つ疑問が生まれた。俺に推薦証を渡したのは故郷の村長だ、ではなぜ村長は俺に推薦証を渡し、ここに来させたのか。俺が魔法を使えないことを知っていたのに
カイトがうなだれたままそんなことを考えていると、男が急に口を開いた。
「普通ならお前にはこのまま帰ってもらうんだが、君の結果に興味を持ったのかあるお達しがあってね」
「お達し…?」
「そう、国王に直々に仕える兵団、その団長のヒミル団長からだ。“明日の7時に王宮に来い“だとさ」
「王宮!?なんでそんなところに俺を…」
「さあな、行ってみたら分かるんじゃないか?」
カイトは結局そのまま前の日泊まった宿に帰った。自分が魔法を使えないという事実、明日王宮に呼ばれているという現実、このあまりにもでかすぎる出来事に、頭がついていかなかった。ゆっくり考える時間が欲しかったのだ。
(王宮に呼ばれた、最初は戸惑ったがこれはチャンスだ。明日、王に気に入られれば、もしかしたら王宮で働けるかもしれない。そうなれば魔法の勉強なんかしなくても支援を受けることが出来る。そうなれば、俺は…)
思考の途中で睡魔が襲ってきてカイトはそのまま眠ってしまった。
明日、カイトに待ち受けているのは幸福か、それとも…
初めまして、ペルです。マイペースに更新していくので気長にお待ちください。(多分次からはもう少し短くなります)