生殺し
「お客様は生殺しを御所望ですか?」
わたしは返事はできなかったが、恐らくそう問われていた。
わたしはレストランの奥に通された。
そこでわたしは表皮をちまちまと、十何年かけて剥がれた。
「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ。」
わたしはレストランのあるテーブルに通され、そこで座っている。
このレストランは死ぬまでいてもいいし、自ら退店してもよかった。そういうレストランだった。
…痛かったかどうかと言われれば、最初は痛くてもがき苦しむときももちろんありましたかね。
でも最後の方はあまり感覚も記憶もなくて、叫ぶこともなかった。というか、叫ぶ気力が無かったのか。
今もそんな感じだけれども、まあとにかく座って待っている。
周りの客を見ると大抵の人はちゃんと皮があって、各々いろんな注文をして過ごしている。
わたしは特に注文もせずに座ってなにかを待っている。
…さすがに痛むな。疲れてきたな。飽きたな…。
少し言い訳をさせてほしい。
わたしは一番最初に注文を聞かれたとき恐らくその意味をよくわかっていなかった。
多分その後も度々ほんとにこの注文でいいのかと聞かれたのだろうけども、わたしは頑なにこの注文を貫き続けた。
もしかしたら注文を聞かれていることに気付いてなかったことさえあるかもしれない。
わたしは今日もただ座っている。