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犯人の居場所

―――――――――――――


「なんか、解決したな」


アンデッドたちが消え、変なテンションで踊っていた市民たちが、正気に戻って恥ずかしそうにどこかへ散り散りに立ち去っていくのを見ながら、俺は無表情で言った。


「そうね」


「そうだな」


最前線で、同じく苦悩していたルルカとリンファも、無表情のまま答えた。


「えっと、その……皆さん、ほんとにお疲れ様でしたっ……」


宿から出てきたノアが頭を下げながら、必死に労いの言葉をかける。


「楽しい夜でしたね。むしろまだ踊り足りないくらいです」


ゼノンが体を左右に揺すりながら、楽しそうに言った。


……まぁ、これでみんな救われたわけだし、絶望的な展開は、またもや回避されたのだから、よしとしよう。


「てかお前、しばらくはおとなしくしてる予定じゃなかったのか? まぁありがたいんだけどさ」


未だゆらゆらとしているゼノンに問い掛けると、奴はキョトン顔で答えた。


「はい。だから直接手を出したわけではなく、サポートしたまでです。まさかあんなに光魔法が集まるとは思いませんでした。あれはエファリス市民の結束力が生んだ、感動のミラーボールです」


『感動のミラーボール』ってなんだよ。パワーワードにもほどがあるだろ。


俺が感動のミラーボールにつっこもうかウズウズしていると、ゼノンはさらに続けた。


「それに、今回の件に関しては私ではなく、ノアさんを称賛すべきでしょう」


「え?」


俺は思わずノアの方を向いてしまった。それに合わせ、ルルカとリンファの視線も、ノアへと注がれる。さすがに何か言わないといけないと思ったのか、ノアはその小さな口を開いた。


「その……都市全体に光魔法を行き渡らせたい、とゼノン様に懇願しました。全員を回復させ、同時にアンデッドを滅ぼすには、それしかないと思って」


「私は面白い提案だと思ったので乗ったまでです。事実、エファリス市民の力が足りなかったら成立しない作戦。ノアさんがエファリスの皆さんを信用していなければ、決行には踏み切らなかったでしょう。……まぁ私は力が集まらなかったオチも見たかったのですが」


「やっぱお前そっちか」


不信感マシマシの瞳でゼノンを見ると、あいつはニヤリと笑って言った。


「だってあのまま光魔法が集まらなかった場合、あの玉は『くす玉』になる予定でしたので。パカッと開いて『残念! エファリス市民の力はこの程度でした!w』みたいなのが出るんですよ」


「あぁ~エファリスの人たちが優秀でマジでよかったぁ~こいつのアホみたいな締めくくりで終わらなくてよかったぁ~」


やっぱり本質は悪魔。結局俺たちが助かっていたかは、紙一重の運命だったわけである。とはいえ、あのサポートがなかったら全員救出は絶対に無理だったので、感謝こそはしているが。


……それはそれとして。


「にしても、なんでいきなりあんなのが涌き始めたんだ? これも運が悪いからってんじゃないだろうな」


俺がげんなりした顔で言うと、リンファが眉間にシワを寄せながら言った。


「なにより、私たちが訪れたタイミングでの事だからな……。どうも、運が悪かっただけではない気がするが……」


リンファの言うとおり、確かに、あまりにもタイミングが良すぎる。まるで、俺たちを狙いすましたかのような……。


「……なんで俺たちに仕掛けてくるんだろう」


俺がそう呟くと、まっ先にぎょっとしたのはルルカだった。


「え、そんなの絶対『転生者』な私たちに向けてに決まってるじゃん! だって、この都市には転生者をよく思ってない人もいるんでしょ? 絶対それよー!」


「落ち着け」


頭を抱えながらわぁわぁ喚くルルカの頭に軽くチョップする。「ぷぇ」と小さく言ったルルカが黙ったのを確認すると、俺は後を続けた。


「もしそいつらだとして、同じ市民を巻き込むか? そもそも、アンデッド使いなんて普通、聖域都市にいないだろ」


「も、もしかしたらアンデッド使いなのを隠してたのかもしれないじゃない」


ルルカの疑問に答えたのは、ノアだった。


「いえ、その場合は、私たち聖職者が『瘴気』を見逃さないはずです。……あ、えっと、瘴気というのはですね……」


首を傾げるルルカに、ノアは一通り説明した。


「なるほどー、じゃあ違うわね!」


全てを聞き終えたあと、ルルカはにっこりと笑いながら言った。こいつ本当に理解したのかな……。


「まぁ、とりあえずそういうことだ。だから、犯人はこの都市の人ではなく、別の存在である可能性が高い」


「でも、仮に別の存在? ってのが犯人だったとして、その人たちからもやっぱり瘴気は出るんでしょ? なんで分からなかったのかな」


うっ、ルルカが瘴気を理解してる上に、鋭いとこ突いてきやがった。そこは腐っても魔術師、やはり頭はそこそこ切れるみたいだ。じゃあなんで普段はあんな暴走してるんですかね……。


「もしかして、犯人は全然違うところにいるんじゃないか?」


リンファが指をパチンと鳴らしながら言った。閃いたときの動作が古臭い上に、なぜかすごいドヤ顔である。


「そうかもな。つってもエファリスにはいないわけじゃん? この周辺を探すのはさすがに……」


と、俺が頭をポリポリと掻きながら参っていると、今度は俺の方が閃いた。


「……周辺……そうか」


「どうしたんですかコータ君。その、見てるこっちが恥ずかしくなるような探偵じみたもったいっぷりは捨てて、早く結論を述べて下さい」


「う、うるせぃ! ちょっとそういう雰囲気に乗っちゃっただけだから!」


俺は赤面しながら、咳払いをすると、話し始めた。


「エファリスの周辺を、綺麗な水路が囲ってたよな? てことは当然、地下水路なるものもあるわけだ」


「ま、まさかそれって……!」


探偵小説におけるいかにもな合いの手を入れるルルカに感謝しながら、俺は言った。


「ああ、そのまさかだ。アンデッドたちからは、腐敗臭の他に、ヘドロ臭さもあった。最初はアンデッドだからだろう、としか思っていなかったが……あれは、多分、地下水路の臭いだったんじゃないかと思ってる。つまり、犯人は……」


俺はそこで、地面を足でたん、と鳴らして、言った。


「エファリスの真下……地下水路に潜んでいるはずだ」

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