そして大会へ
何はともあれ、買ってきた服は、みんなどれも似合っていたみたいだ。金という金は消し飛んでしまったが、まぁこういうのも悪くない。それぞれの以外な姿が見れて、これでまたパーティの距離も縮まったはずだ。
「ね、狙ってないです! ほんとに可愛いと思って買ったんですー!」
「さぁて、どうでしょうね。ノアさんは以外と腹黒ですからね。下手すると私より悪魔っぽい」
ゼノンがノアを冷やかし、それに対してノアが首を横に振りながら、ポコポコとゼノンを叩いてる様子をボーッと眺めていると、ワンピース姿のルルカがこっちに寄ってきた。近くで見ると、より大人びた印象が増す。……ダメだ、またドキドキしてきた。服を変えただけ、もっと言えば身にまとう布を変えただけだ。もっと機械的に処理しろ。平常心だ。
「ありがとね」
ルルカの第一声は感謝の意だった。俺は脳内で機械的処理をひたすらに自己暗示しつつ、「おう」と返した。声が上擦っていないだろうか。あるいはゼノンに爆笑されていないだろうか。そう思い、横目で、ゼノンの方を見る。……よかった、ノアに頬を引っ張られていてそれどころじゃないみたいだ。いやノアすげえな。
「ま、服は買ってもらっちゃったけどー……。大会では手加減しないからね!」
「ああ、全力でかかってこ……って、いやいやお前はむしろちゃんと手加減しろ。出ないと闘技場が滅ぶ」
あと多分お前は何もしなくても加護で勝てちゃう気がするんだけど、一生懸命修行に励んでるみたいだからこれは言わないでおこう。
だが、俺の返しに、以外にもルルカはドヤ顔をしてみせた。なぜここでドヤ顔なんだ。てかその顔やめろ。地味に腹立つ。
「大丈夫。私には秘策があるから」
そのままドヤ顔でウィンクすると、「じゃ、そろそろ着替えてくるね」と、別室へと向かっていった。どや顔ウィンクの腹立ち度はこの際どうでもいいとして、『秘策』というのが気になる。多分あいつのことだから、ろくなのは用意してないと思うが……。
「っもう! じゃあ分かりました! そんなに言うなら脱げばいいんでしょ! 脱げば! 私のお腹が真っ白であることを今から証明しま」
「うわぁー!! ノアなにやってんだ!! 物理的に腹を見せてどうする! ゼノン、お前どんなからかい方したらこんな暴走し始めるんだよ!」
「さぁ? 私は思ったことを口にしただけですがねぇ」
俺は、悔しさに滲んだ顔でなぜか服を脱ごうとするノアと、火に油を注ぐ勢いでからかい続けるゼノンの両方を制止しながら、その晩を終えた。……この世界も、普段からこれくらいのドタバタ劇で収まればいいんだけどなぁ。
そして、あっという間に数日が過ぎ……。
――――――――――――――――――――――――――――
『さぁ皆様、お待たせ致しました! とうとう転生者コロシアムが始まります!』
俺たちは、闘技場の控え室にいた。実況と思わしき声が控え室内部まで届き、それに続くように歓声が響き渡る。声量から察するに、かなりの観客が集まっているようだ。あれ、戦いとか以前に俺って大勢の前に立ったことあったっけ? ……あ、なんかお腹痛くなってきた。
俺が検討違いのことで緊張している横で、ルルカが心配そうに俺に問いかけた。
「コータ大丈夫?」
「あ、あぁ……。戦闘は問題ないんだが、大衆に見られるとか陰キャには辛いものがありまして……」
「え、そっち?」
ルルカが難しい顔をしながら首を傾げる中、控え室にいた見知らぬ顔ぶれの何人かが小さく「分かる」と呟いた。この人たちも転生者なのか……。そして陰の者なのか……。転生者陰キャ多すぎ問題なんとかなりませんかね……。
『さぁ、それでは選手入場です!』
うわぁ心の準備できてないのにお呼び出しだよぉ。しゃあねぇ、腹くくるか。
俺は、同じく控え室にいた、ルルカ、リン、イスケ、松田さんの顔を順繰りに観察していった。なんだかんだ、それぞれの顔にも思い詰めたものが読み取れる。それが『緊張』なのかは分からないが、少なくとも平静ではないことは分かり、俺は少しだけホッとした。よかった、俺だけじゃないみたいだ。
そんな雑なメンタルコントロールをしながら、俺は闘技場へと足を運んだ。
「「「おおおおおおおおおお!!!」」」
踏み入れた途端、控え室で聞いたのとは比べ物にならない、地面を震わすほどの歓声が闘技場に響き渡った。360°全てに並ぶ観客の存在は、どこかのドーム的な会場におけるアイドルになった気分である。なるほど、アイドルにはこう見えていたのか。お腹痛い。
『彼らが今回の選手たちです! これから始まるのは、この彼らによる凄まじい能力のぶつかり合い! なぜそんなに強いのか……。細けぇことは気にしねぇ! 勝った奴が一番強いんだ! 今日はそれを決めるためだけの戦いなんだぁー!!』
めちゃくちゃ熱入ってんなあの実況。なんかごめんね、賞金目的で参加しちゃって……。




