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夕闇の転生者

そう言って、ノアは再びくすくすと笑った。ゼノン……あいつ、人を励ましたりできたのか……。いや引っ掛かるところはそこじゃない。よりによってあいつと同じとはどういうことだ。


「ゼノンと一緒にしないでくれ……。俺はあんなやつに似たくはない」


「ふふ、すいません。でも、ゼノン様もお優しいところがあるんですよ?」


ノアはトコトコとこちらに寄り、俺のすぐ横に並んだ。ゼノンに優しいところねぇ……。 あいつの場合、それさえも俺たちをおちょくるための発言の可能性がある……なんて勘繰ってしまう。


「ま、なんでもいいけどさ。とりあえずノアは超役立ってるから。大丈夫大丈夫」


気恥ずかしくなってきたので、わざと台詞を砕けさせて誤魔化す。ノアは「はい」とだけ言うと、歩を進め、俺の前へと出た。


「じゃ、行きましょうか。私のセンスでとびっきりのを選んであげますよ!」


先に進んで行くノアの背中を見て、俺はホッと胸を撫で下ろした。心のしこりが取れたようでよかった。ノアがどんな人生を歩んできたのかは分からないが、もう少し、自信を持ってもいいと思う。そんなことを考えながら、俺はその小さな背中を追いかけた。


――――――――――――――――――――――――――――――――


その後、無事、ルルカに合う服も見つかり、ついでに……そう、本当についでにゼノンに贈る装飾品も手に入った。そして、ついてきてもらったお礼としてノアにも服を買い、俺はお小遣いを全て失った。服って高い。


「いやぁ~辺りはもう夕暮れだな! 俺の財布も影を落としつつあるし、いやあ愉快愉快!」


「コータ……大丈夫ですか? すいません、私の分まで……」


俺と、俺の財布を気にかけてくれるノアは本当にええ子や……。心配そうに見つめるノアに、俺は「冗談だよ」と手を振った。


「金なんてクエストクリアすりゃ、なんとかなるよ。それに、俺はノアにお礼がしたくて買ったんだ。後悔なんて一ミリもない。むしろありがとな、ノア」


「い、いえいえ、こちらこそお役に立ててよかったですっ」


深々と頭を下げるノアを見て、俺は慌てて止めさせた。むしろ頭を下げるのはこっちだってのに……本当にこの子には頭が上がらない。


そんなやりとりをノアとしていた時だった。まだ少し、賑わいの残る町並みに、何か異質な空気が漂うのを、道の先の方から感じとれた。


異質な理由はすぐに分かった。何者かが、じっとこちらを見ながら、微動だにせず立っていたからだ。周りが商売や談笑、店じまいをする中、その人物だけがまるで世界から置いてかれたかのように、そこにいる。夕闇に染まっていく町の中で、その人物は感情の読み取りにくい、淡白なトーンで声を発した。


「やぁ。久しぶりだね。コータ」


内海 零は、手を上げ、微笑を浮かべながら言った。辺りが暗いせいか、笑っているはずなのに、不思議と穏やかな表情には見えなかった。


「おう、レイか。久しぶりだな」


相手の声掛けに、とりあえずこちらも挨拶を返す。内海 零……。俺と同じ転生者でありながら、なんの能力も与えられなかったという、異質な転生者。彼にはいろいろと謎が多く、掴み所のない男だ。そして……なぜだかは分からないが、気が合いそうにない。彼の態度とか無能力が問題ではなく、ただただ、直感でそんな気がしているだけだが。


「シスターもこんにちは」


レイが、相変わらず笑顔を顔に張り付けただけのような、変化の少ない表情でノアにも挨拶をする。ノアは小さな声で挨拶すると、それっきり何も言わなくなってしまった。


「コータは転生者コロシアムに参加するみたいだね。僕は無能力だから、当然参加しないけど」


「うぅ……返しにくい言い回しするなよ」


「ははは、そんなつもりはなかったんだけどね。でも、羨ましいとは思うよ。圧倒的な能力で無双するのは、さぞかし楽しいだろうね」


そこで、不意にレイが影を見せたような気がした。能力がないこと自体に、劣等感を抱いているのだろうか。……いや、気のせいか。多分西日が生む陰影から、そんな風に見えただけだ。


「じゃ、僕はこれで。参加はしないけど、観戦には行くつもりだから、一回戦で負けるような真似はしないでくれよ?」


「おう。保証はできないけどな」


「じゃ、健闘を祈るよ」


そう言って、彼は、影の深みが増しつつある路地裏へと消えていった。なんだか、ただ会話をしただけなのに妙な緊張感があった。レイと気が合わない要因として、この謎の空気感に慣れないというのはありそうだ。


ふと、横を見ると、ノアがじっとしたまま動かないで立っていた。体に力が入っているのが見てとれる。俺はいたずら半分に、ノアの目の前でパン、と手を打った。


「ひゃっ……!!」


ノアが驚いて、大きく目を見開いた後、その表情のまま俺の顔を見る。その表情はたちまち不機嫌そうな顔へと変わっていった。小さく膨らましてるほっぺたかわいい。ツンツンしたい。


「どうしたよ、ノア。レイとは初対面だったか?」


不機嫌さを打ち消すため、レイの話題を出す。ノアは再び表情を変え、今度は煮え切らない顔へと変わった。眉間にシワを寄せるシスターの顔はなかなかレア顔だ。


「い、いえ……。あの方のことは知っています。ですが……なんででしょうか、私はあの方に怯えている気がします」


「怯えてる?」


「……いや、やっぱりよく分かりません。あまり話したことがないから、身構えてるだけかもです」


あーくっそ分かるわそれ。友達との間柄ならめちゃくちゃ喋るのに、友達の友達とかが相手だと急に預けられた子犬みたいになるやつね! そんでもって家に帰ってから「あの時もうちょっとうまく返せたんじゃね……?」って自分の会話スキル反省するやつね!

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