表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/114

時雨の森

「じゃあ時雨の森に行くか」


そう切り出すと、ルルカは口元を押さえてくすっと笑った。その仕草がやけに可愛くて、俺はついドキマギしながら「ど、どうした……」と問いかけた。


「いや、ね? なんか昔やってたRPG思い出しちゃって」


「……あー、なんか分かるわ。このたらい回しな感じな」


「そーそー。「西のほこらへ行け!」とか「南の海を渡れ!」って感じでさー……。あえて指示を無視して、知らない洞窟入ってみたりしてね」


ゲームについて楽しそうに語るルルカは、その時だけ、普通の女の子だった。おそらく、生前はゲーム好きだったのだろう。なんかこうして会話してると、同級生と喋ってるみたいだ。


「あのさ、コータ」


このままゲーム談義が続くと思っていたら、ルルカが急に呼び掛けた。


「ん、どうした?」


「このまま世界救ったりしたらさ。もしかして、元の世界に戻れたりするのかな」


「それは……」


「あ、いや、いいのいいの! もうちゃんと割りきってるし、この世界で生きていく覚悟はできてるから! ただ……」


そこでルルカは、俺をまっすぐに見つめると、


「戻れたらさ、一緒にゲームとかしたいよね」


そう言って、照れくさそうに、「エヘヘ」と笑った。その顔には照れの他に、少し寂しげな様子もうかがえた。元の世界に戻れる保証なんてないし、無責任なことは言えないけど……俺は。


「……そうだな。じゃあ俺ルルカのプレイ見てるわ。ポテチとか食いながら」


冗談めかして、そう返した。空気が湿っぽくならないように。


「えー、なんでよー。そこはコントローラー持とうよ」


「だって俺ゲーム下手だもん」


「じゃあ私が指導してあげるって」


そんな感じで、二人で楽しげに笑いながら、歩き始める。元の世界か……。戻れるかどうかとか、考えたことなかったな。この世界で生きるのに精一杯で、そんな余裕もなかった。……でもまずはコロシアムだ。戻れるかどうかは、目の前のイベントをひとつひとつクリアしていけば、いずれ分かることだろう。


元の世界にちょっぴり寂しさを感じながら、俺たちはギルドを出た。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「いやぁあああああああああ!!!!」


と、しんみりしたかと思いきやすぐこれだ。


ルルカが絶叫しながら、森の中を駆け回る。その後を、ギガスライムやヘルリザード、その他大勢の上級モンスターが追いかける。スライムもリザードも、ぶっちゃけ、液体とトカゲをめちゃくちゃ極悪に描いたような容姿だ。なんか単調だなーと、モンスターのビジュアルについて感想を抱きながら、ルルカとモンスターたちの追いかけっこを眺めていた。


「コータのバカぁ! 前を歩いてくれるって言ったじゃない!」


「歩いてたわ! なのにお前がいきなり「すごい! 本当に雨降ってる~」とか言って走り回り出したんだろうが!」


「だって~!」


喚き散らしながら走るルルカに、ヘルリザードが飛びかかるも(はじ)かれていく。さらにそこにギガントスライムが液体を飛ばすが、それも跳ね返され、反射された液体によって、他のモンスターが溶かされていった。


魔法を使わなくとも、モンスターが次々に戦闘不能になっていく様はまさに無双状態なのだが、その無双している本人が泣き喚いているという異様な光景が、そこにはあった。俺はそんな様子を見ながら、


「へぇ、加護持ちでも雨は弾かないんだな」


と、新たな発見をしていた。


「水弾いちゃったらシャワーとか浴びれないでしょーが!」


そう返答しながら、ソードウルフ(上位種)の刃を弾き返す。あー、言われてみれば確かにそうだな。と、思いながら、俺も自分に迫ってきたモンスターを次々に薙ぎ払っていった。全ての攻撃が捌けるわけだから、体当たりや噛みつきをしてきたモンスターにとっては、もはや絶命と同意義である。


「コータも中々やるじゃない!」


「まぁ王都来る前の森で、こいつらのアンデッド版を相手にしてたからな。なんなら今だって《剣波》で一発なんだけど、他の転生者もいるかもしれないしな……。だから頑張って弾いててくれ」


「そんなー!」


そんなやりとりをしつつ、森を進んでいく転生者二人組。俺は剣を振るってなんとか進んでいる状態だが、ルルカにいたってはただ走ってるだけである。あいつが臆病な性格でさえなければ、先陣を切るのに適しているのはむしろルルカの方なんだけどなぁ……。


「あーやっぱり怖い! コータ、なんとかしてぇ~!」


「なんもせずにモンスターボコボコにしてる奴が言う台詞じゃねえな……」


ルルカにツッコミを入れながらも、さすがにかわいそうに思えてきた俺は、ある提案をしてみた。


「Zウォールとまではいかなくとも、今だけ簡易バリケードみたいなの張るのはできるんじゃないか?」


「それだぜ!」


もはやパニクりすぎて口調まで変わってしまっている。だがルルカはそんな状態にありながらも、サッと後ろを振り向くと、手をかざし、「リフレクター!」と叫んだ。……ん、リフレクター?


次の瞬間、ルルカの前に、わずかに青みがかったガラス板のようなものが出現した。ルルカに飛びかかっていくモンスターたちが、リフレクターに弾かれ、こっちに迫ってくる。


「おおぉいいっ!! なんでリフレクターなんだよ! 《バリア》でいいだろそこは! あと俺がそっちに行ってから展開しろや!」


「あ、ごめん。焦っててつい……」


ルルカがガラス板の向こうでテヘペロする。バリアならまだしも、リフレクターであるため、常にこっち側に弾き飛んでくる。そのせいで、どんどん俺の周りのモンスター密度が上がっていった。


「は、はやくリフレクター解いてくれぇ! さすがに捌き疲れてきたぞ!」


もはやアイドルに群がる厄介なファンのような光景が、俺の周りで展開されていた。それを必死に斬っていきながら、ルルカに呼び掛けるも……。


「ちょ、ちょっと待っててね……。えっと、どうやって解除するんだっけ?」


「クソがあああああああああああ!!」


あの子、魔力、威力は反則級なのに扱いがポンコツなのなんで? チートであるゆえの代償なの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ