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決意

そう問いかけられた俺たちの体が、つい強張る。できれば応援側に回りたい。……だが。


―――――――お二人がいたから、私はこうして頑張れるのですよ―――――


「しゃあねえなぁ……いっちょ、やりますかぁ……」


「あーあ、コータが参加するんじゃ、私も退くに退けないじゃない」


転生者二人が、わざとらしく、伸びをしたり、首をコキコキと鳴らす。その様子をブロンズさんが「なんだこいつら……」と引き気味に見る中、ゼノンは嬉しそうに手をパン、と叩くと、


「じゃあ決まりということで! 詳しくはギルドの人に聞いて下さい。さぁブロンズさん、お待たせ致しました。早速仕事の話をしましょう」


と、ブロンズさんを引き連れて、あっという間に奥の部屋へと消えてしまった。なんかあいつの詐欺師みたいな口調で、トントン拍子に話が進んじまったが……。まぁ、報酬もあるらしいしなぁ。やると言った以上、引き下がれない。


「じゃ、今度こそギルドに行くか……」


「そうね! よぉし、私のファイアボールを、世間の皆様にお届けしてやるわ!」


「いやお届けしちゃだめだろ。いい加減、ファイアボールを調節できるようにするか、それ以外の魔法を習得しろよ」


「《サンダーボルト》とか?」


「皆殺しする気かな? 今の話のどこに上位魔法習得する流れあった?」


「う、うるさーい!」


これから重大なイベントをこなすって時に、いつものように噛みつき合っている転生者二人組は、その後もしばらく言い合いながら、ギルドへと向かった。


――――――――――――――――――――――――――――――


「ここではエントリーできないんだよねぇ」


ギルドに着くなり、開口一番、ケティが言った。いつものようにドリンクをちゅーちゅーしているが、入れ物のラベルが違う。えーと、なになに……『エターナルドリンク【メシア味】』……? え、なにそれ。


「えー! じゃあどこでしたらいいのー!?」


俺がエターナルドリンク【メシア味】に気を取られていると、ルルカが困り顔で叫んだ。そんな叫ぶ内容でもないのだが……基本、この子は声が大きい。音量も魔力も調節できない魔術師なのだ。


「【時雨(しぐれ)の森】に行けば、エントリー会場あるよ。ま、エントリー場所がそこなだけで、コロシアムはまた別のとこなんだけどね」


ケティはそんなルルカには動じず、呑気に言った。


「時雨の森……。あ、俺そこ知ってるわ。一年放浪してた時に行ったことある」


「へぇ~。どんな感じのとこなの?」


ルルカが興味津々に、顔をぐいっと近づけてくる。あー近い近い。声量や魔力もアレだが、距離感もオーバーだ。そういうことばっかやってると、多くの男子は勘違いしちゃうからやめとけ。


「ま、まぁ……なんというか、常に雨が降ってるとこだな。不思議なもんだよな」


「えーすごぉい! そんなとこなら、きっといろんな冒険者が立ち寄るわね!」


「いや、それがだな……」


俺が苦い顔をし始めたのを、ルルカが不思議そうに「ん?」と言いながら、小首を傾げる。その様子を、ドリンクを飲みながら見ていたケティは、ストローから口を放すと、俺の代わりに説明した。


「ルルカ。あそこはね、凶悪なモンスターばかりが集まる、危険度Sの森なんだ。普通の冒険者が入ったりなんかしたら、(しかばね)になって、森の養分となるだろうね」


「え……」


「雨が降り続けているのは、そんな無念の冒険者たちによる、恐怖や悲しみの涙が降り注いでるからだとか言われてるよ」


そう説明し終えると、ケティは、ニッコリと笑った。普段、ダウナーなケティがこんな笑顔を見せたのは初めてだ。もしかしてこの子、わりとSっ気があるのでは……?


そしてそのドSケティに、怖い話を聞かされたルルカさん(十九歳)はというと……。


「……私やっぱ参加しない」


そう言って、回れ右をし始めた。


「おい待て。ノアのために戦うんじゃなかったのか」


「だってぇ~! 怖いものは怖いんだもんっ……!」


「なにガキみたいなこと言ってんだ! だいたいお前チート魔術師だろ! それに城の時だって大丈夫だったじゃねえか! あっちの方がよっぽどホラーチックだったろ!」


「だからぁ! 私は確かにちょー強いけどモンスターが怖いんだってば! それに……」


「それに、なんだよ!」


「……お城の時は、コータが前を進んでくれてた……し……?」


と、なぜか急にしおらしくなるルルカ。しかも台詞まで最後の方がゴニョゴニョしている。……なんだこの雰囲気。


「あ、あれは……仕方なかったからであって……! じゃ、じゃあさ、今回も俺が前に出て、モンスター倒すからさ。それでいいだろ?」


「……うん」


ルルカはうつ向いたまま、上目遣いにこちらを見ると、小さくコクン、と頷いた。……あれ、なんかむず痒くなってきた。なんでだ、俺たちは時雨の森に行くって話をしていただけじゃないか。なのに、なんだか顔が熱い。


あークソ、こんな時ゼノンがいてくれたら! いつものように茶化す感じで「おや、コータ君ってばもしかして照れてます? 女の子に頼られたぐらいでそんな反応とか! これはもうフリーズじゃなくてホット童貞ですねぇ」とか言って雰囲気を壊してくれたのに! あれ、自分で言っててなんかムカついてきたな。帰ったらゼノンにエターナルドリンク【メシア味】飲ませようかな。


ゼノンがとばっちりをくらったところで、ひとまずは俺たちの話はついた。あとは時雨の森に向かうだけだ。正直あの森は、俺も得意ではないから、さっさとエントリー済ませて帰ろっと。


「ありがとな、ケティ。大会は俺が優勝してみせるから、応援に来てくれよな」


「うん。楽しみにしてるよ」


「えー? 優勝するのは私なんですけどー?」


「うん。ルルカも頑張ってね」


そう言って、ケティは去っていった。去り姿を目で追っていると、ケモ耳が、愉快にピョコピョコと動いているのが確認できた。ああ見えて、意外と大会を楽しみにしているのだろうか。それとも俺たちがボロ負けするのを高みから見届けたいのかな。……いや、S疑惑があるとはいえ、ケティはそんな娘ではないだろう。多分。

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