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再び巻き込まれる転生者たち

なんか聞いたことあるようなタイトルばっかだし、しかもこれらのラノベはおそらく、俺たちが今まで相手にしてきた奴が主人公だ。そりゃ、悪の転生者でさえなければ、そういうラノベ主人公みたいな物語を紡いでいたのかもしれんが……。


「今度発売される『魔術師転生!~魔術師の始祖な我輩、民衆から追放されるも転生してさらに強くなって「ざまぁ」展開にする~』もご存知ない?」


「知らないし多分それ「ざまぁ」にとどまらないから! 人類滅亡するから!」


「コータ君、ネタバレはよくないですよ」


「うるせーよ!」


俺たちがつい先日悲惨な目に遭った話まで物語にしようとしてやがる! 正直むしろ読みてぇとか思っちゃったけど!


「……ったく、そもそもなんで作家さんなんかやってるんだお前」


「私も、この屋敷の家賃に少しでも貢献したいのですよ。だって買ったの私ですからね」


「あんたが勝手に決めたんじゃない!」


「そりゃそうなんですが、この屋敷を選んだのには、ちゃんと深いわけがあるんですよ」


今になって何を言い出すんだこいつは。この屋敷を購入した深い理由……? もしかして、この屋敷には何かすごい秘密みたいなのがあるのか……?


「家賃が高ければ、君たちがクエストに出まくるだろうから、ゲーム的には面白いと思って」


「ぶっ殺すぞ」


「うわ、コータ君がとうとう言葉を選ばなくなってきました。人は変わるものですね」


この屋敷はゲームを進行させるための自動装置ってか? 実際、家賃がらみでこうしてギルドに向かおうとしちゃってるけど。あー、なんか手玉に取られてる感じしてがすげぇ腹立つ。


「ブロンズさん、こちらの暴言製造マシーンはコータ君といって、私の小説の構想を練る手助けをしてもらってます。彼はこう見えて、王都で噂の転生者なんですよ」


「おぉ……あなたが……!」


「いやまぁ転生者ですけどそいつの手助けとかしてませんから。あと毒舌製造マシーンには言われたくないから」


練るもなにも、冒険してりゃそういう奴と遭遇しちゃうんだからしょうがない。まさかそれを小説化するなんて夢にも思っていなかったが。……って、こんなことしてる場合じゃねー!


「コータ、そろそろ……」


「ああ、そうだな。じゃ、俺たちギルドに行くんで、失礼しますね」


俺たちは家賃と情報収集のためにギルドに行くところだったんじゃないか。こいつらとラノベ談義してる時間なんてない。一刻も早く、ノアを楽にさせてやらねば。


そう言って、その場から立ち去ろうとした時、ゼノンに襟首を捕まれた。


「ぐぇっ! ちょ、もうなんなんだ! 早くギルドにいかせろや!」


「いや、転生者である君に、今日は話があるんですよ。……もちろん、ルルカさんにもね」


「は?」


「え?」


なんだかただならぬ空気を感じ取った俺たちは、その場で固まった。ゼノンは、俺たちが話を聞く姿勢に入ったことを確認すると、いつもの妖しげな笑みを浮かべ、口を開いた。


「近々、王都主宰による『転生者コロシアム』が開催されます。そこに、君たちも参加してもらおうと思いましてね」


「転生者コロシアム? なんだそりゃ?」


「簡単に言えば、転生者同士で戦ってもらう大会ですね。王都主宰なので、報酬もたくさんもらえることでしょう」


なんかとんでもないこと言い出したぞ。ただでさえ転生者がらみでひどい目に遭ってる俺たちが、他の転生者と戦いまくる? なんだそのゾッとするような企画は。


「わ……私は参加しないわよ? そんな危ない大会!」


ルルカの言うとおりだ。転生者の強さは、他でもない俺たちが一番知っている。勝てる勝てない以前の問題だ。なにより、極悪な転生者が参加したら大惨事だ。


「そうだそうだ。ヤバい転生者を王都に入れるつもりかよ?」


「いえ、会場は王都から離れた場所にありますので、被害の心配はいらないかと」


「へぇ……。ってそういうことじゃねー! 王都側はチート能力持ちの敵がわんさかいることを把握してないのか?」


「いえ、していますよ。むしろ、君たちよりも把握しています。ノアさん以外の調査隊の報告者もいるわけですから、なおさらです」


ブロンズさんが「なんの話してんだこいつら……」と怪訝そうな視線を寄越してくるのをよそに、俺はゼノンに質問した。


「そりゃどういう意味だ? 分かってて招き入れるつもりか?」


「まさか。そんなことはしませんよ。この世界にいる悪の転生者の比率をある程度把握しているから、こういった大会を開けるということです」


「比率? この世界にいる転生者は、私たち以外のほとんどが悪い奴じゃないの?」


「確かに悪い転生者が多いことは事実ですが、それは他の世界と比べた場合です。通常の世界に、転生者の『善』と『悪』がそれぞれ9:1で存在したとすると、この世界は五分五分くらいです。さらに、その『悪』の転生者の中にも、完全な悪というわけではなく、『ただやる気がない』『能力をイタズラに使っている』などの、『善ではない転生者』も含まれます。そうなると、本当に極悪な転生者など、実は少ない方なのですよ」


「もっとも……」と、俺たちを半目で見ながら嘲笑すると、


「君たちはなぜかやたらに、その『完全悪』の転生者に遭遇しやすい傾向にあるみたいですが」


と、かわいそうなものを見るような目で言った。


「要は、俺たち自身の運が悪かったってことか。まぁ言いたいことは分かるんだが、それでも危険なことに変わりはないだろ」


「ええ。ですが、転生者が一斉に集まってくるのですから、冒険に必要な情報も得やすいと思いますよ。なにより、悪の転生者が参加していたなら、その場にいる善の転生者で討伐すればいいだけの話。向こうだって、それぐらいは理解してるでしょうから、下手に悪事は働けないでしょう」


「……確かに」


「でも、なんで王都はいきなりそんな大会を開催したの?」


「王都としては転生者の能力や、自分たちへの脅威の度合いなど、データ収集が目的なのです。結局、このままなにもしなければ、王都はいずれ、悪い転生者に滅ぼされかねません。身を守るためのバリケードを失った上、隕石の件もありますし、大会で良い転生者を見定め、あわよくば引き抜こうという思惑もあるでしょう。なりふりかまっていられないからこそ、大きな賭けに出た、というのがこの大会の本当の事情でしょうね」


「バリケードを壊したのはあんただけどね」


いまだ根に持っているルルカが、恨めしそうにゼノンを睨む。それより、隕石の件が王都に知られていたことの方が驚きである。


「隕石の原因を、なんで王都が知ってるんだ?」


そう聞いてみると、ゼノンはブロンズさんを横目でチラっと確認し、突然俺に迫ってきた。大人の女性らしい、上品な香りが鼻腔をくすぐる。俺がその香りに内心ドキドキしているのをよそに、ゼノンは顔を近付けると、こそっと耳打ちし始めた。


「王都には、ルルカさんとまでは行かなくとも、それなりの上級魔術師が揃っています。その中には、隕石の赤い光を魔法の光と認識できた人も何人かいたことでしょう」


「なるほど……。で、その件は内密にしておかないと国民がパニクる、と。だから大会に乗じて、こっそり自衛力を高める手立てを考えたってとこか。でも、なんなら普通に募集かければよくね?」


「さっきも言ったように、戦闘データも欲しいわけですからね……。データ収集もスカウトも一気にできる大会形式の方が手っ取り早いと思ったのでは? ま、あくまで推測の域を出ない話ですがね」


「でもお前隕石の件ラノベにしちゃったじゃん。内密ってのはどうしたよ」


「ちゃんと改変されてますからご心配なく」


「マジ? なら今度読ませてもらうわ」


「あのぅ……お二人ともなんの話をされているのですか……?」


ブロンズさんが困った顔で聞いてきたのを、ゼノンと俺は満面の笑みで返し、「いえいえお気になさらず」とハモった。そして、ゼノンは改めて、転生者二人に向き直ると、いつもの妖しげな微笑を浮かべ、言った。


「さあ、転生者に関する新たな情報を得られるチャンスかもしれません。どうしますか、お二人とも」

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