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そして夜は明ける

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ん……俺は一体……。え、どこだここ?」


城で強烈な一撃……いや何撃か食らったあと、俺はいつの間にか、群青色の空間にいた。地面はドライアイスでも仕込んだかのような霧がたち込めており、辺りには、星のようなものが、小さくきらめいている。これは……もしかして……。


「あ、起きましたかコータ君。なんだか久しぶりな感じがしますねぇ。昨日飲みあかした間柄だというのに」


目の前に、ゼノンが立っていた。後ろに手を回し、相変わらずのニヤケ面で、(あざけ)るようにこちらを見ている。


「おい……ひとつ聞いていいか?」


「ええどうぞ」


「もしかして俺、死んだ?」


「はい、あっけなく」


「あ~、超殴りてぇなぁお前の顔っ! なんだろうねこの気持ちは!」


「愛の裏返しでは?」


「死ね」


どうやら俺はあの流星群によって、死んでしまったらしい。まぁあれだけの隕石食らったら、《獅子王の加護》でダメージ軽減しても無駄か……。だよなぁ。


俺の額がピキピキしてるのをお構い無しに、ゼノンは「あ、そうそう」と言いながら、手をポン、と打つと、なにげない感じで衝撃の事実を口にした。


「ちなみにですが、あの魔術師の始祖はまだ生きてますよ」


「バッドエンドじゃねーかっ!!」


希望はどこへやったの! せっかくルルカが新たなトラウマ作りながら、世界の終焉を食い止めたというのに! その結果、こうして俺も死んだのに! せめて『激しい戦いの末、両者共々、この世から去る形となった……。』みたいな感じで締めてほしかったなぁ!


「ほら、ご覧なさい。あれが城崩壊後の映像です」


ゼノンが、とある方向を指差す。そこには、城で見たようなスクリーンが存在しており、その中に、なんかマヌケな格好でぶっ倒れている俺と、傷口を手で押さえて唸っている老人の姿があった。


「あのじいさんがヴァンか……」


「そうです。そしてあの車に轢かれたカエルみたいなのがコータ君です」


「お前って人が死んでても煽るのやめられないの?」


「性分が悪魔寄りですからねぇ。死体蹴りはかかせません」


クスクスと笑い続けるデタラメ悪魔。いつかこいつにはエターナルドリンク一年分を送りつけて困らせてやりたい。


それにしても……困ったな。あのままヴァンも死んでくれる算段だったが、これだといよいよ対抗手段がない。奴が回復し、魔力を溜め込んだら、またあの《メテオライト》が発動されてしまう。あれ? これ、なにげにガチのバッドエンドでは?


「なぁゼノン……」


「ええ、言いたいことは分かりますよ。復活させてほしいのでしょう?」


「さすがゼノン! やっぱ高次元の存在ってのは頼りになるなぁ」


「じゃあ頼んで下さい」


「あ?」


こいつ俺を殺しといてなに言ってんの? むしろ「すいませんでした、今すぐ蘇生させます」が正解だろ? こっちは五体満足で死体が維持されてるだけでもほめてもらいたいくらいなのに。


「私が手助けしなければ、世界はそのまま滅亡していました。それが今、その滅亡を完全に阻止できる一歩手前まで来ています。これは誰のおかげなんですかね? ほら言ってみてください」


ぐぬぬ……。


「……お、お前の……」


「『お前』? いやいやコータ君、私はそんな名前ではありませんよ。そこはちゃんとしてくれないと困りますねぇ。ただでさえ弱っちいのに、礼儀知らずときましたか!」


ぐぎぎっ……!!


「……ゼノン様のおかげ……です」


「はい? 聞こえないですねぇ。ほら、もっと大きな声で。まだウシガエルの方が声量ありますよ? といっても、君はどちらかというとヒキガエルですが」


「ゼノン様のおかげですっ! どうか私を生き返らせてくださいませんでしょうか!!」


頭からエターナルドリンクぶっかけてやりたい……っ! こいつの煽りパターンは何種類あるんだよ! ちくしょう、こいつがただの人間なら半殺しにしてやるのにっ……!


俺がヤケクソ気味に大声をあげたところを見て、ゼノンは満足そうに笑みを浮かべると、言った。


「ええ、蘇生しましょう。当たり前じゃないですか。今、あの現場にいるのは君と魔術師だけ。直接トドメをさせるのは、君しかいないのですから」


おお……なんだよ、やっぱ俺の強さを認めてくれてるとこもあるんじゃねえか……。


「ゼノン……お前ってやつは……」


「なんてたって、転生者相手にトドメをさせてないのは君だけですからねぇ! ジェノサイドレーザー戦も、コンダクター戦も、ウタカタ戦も! そうでしょう? どれも他力本願の、激弱転生者コータ君!」


「うん、上げて落とすのやめてね? あとお前たちと会う前はけっこう倒してたから! 弱くないからっ!」


いい奴だと思ったらすぐこれだ。ほんと、この悪魔ときたら……。でも、まあ……なんだかんだ、いい奴なんだよな。本当にピンチになったら、こうして助けてくれる。


あの村での一件から、こいつを救世主だと思わなかった日は、一度もない。……ゲラゲラ笑ってるけど。


「じゃ、このままだとゲームが進みませんし、しょうがないから、君を蘇生させてあげます」


そう言いながら、ゼノンは指をパチン、と鳴らした。すると、俺の体が白く光始めた。


「魔術師の始祖……彼は《盗賊王の加護》を持っています。君が復活したとなれば、彼はそのスキルで、すぐさま瓦礫の下にでも潜伏してしまうでしょう。逃せばもうチャンスは訪れません」


「おう、了解した」


「必ず倒して、無事に帰ってきてくださいね。でないと屋敷代も払えませんから」


「お、おう……それも分かった」


「では、そろそろ蘇生が完了しますよ。さぁ、チャンスはたった一度きり……だから」


次の瞬間、俺を包む光が強くなり、そして。




「外すなよ、最後の希望(ラスト ホープ)





ゼノンはわざとらしくそう言うと、ニヤっと笑いながらウィンクをした。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うぅ……なんだというのだ。我輩の計画は完璧であったはずなのに……クソっ!」


城の中でさんざん聞いた、老人の声が聞こえる。


「まぁいい……。魔法耐性に富んだ我輩には、この程度、かすり傷よ……。時が経てば、また《メテオライト》で……!」


「させねえよ」


俺は勢いよく立ち上がると、目の前の魔術師に言った。


「なっ……! き、貴様はっ……」


ヴァンが驚いた顔でこちらを見る。そりゃそうだろう、あんな無様な格好で倒れてた野郎が、いきなりピンピンして起き上がったんだから。


思えば、城に来てからもずっと無様だったなぁ。そんで死ぬときですらアレだもんなぁ。死に方まで運が悪いとかほんと、勘弁してほしいよ。


そう、そんだけカッコ悪い姿を晒し続けたんだ。


だから。


「く、クソっ……煩わしいっ! すぐにでも潜伏して……っ!?」


締めくらいは、カッコよく決めさせてもらうぜ。


「じゃあな」


そして俺は、ヴァンに急接近し、抜刀と切り払いを、ほぼ同一のタイミングでこなした。


次の瞬間、剣がヴァンの脇腹を切り裂いた。一瞬にして切り払われたことにより、血が吹き出る前に、ヴァンの体が、ゆっくりと地面に倒れていく。


「がっ……は……!」


チャンスはたった一度きり。それなら。




「《居合い斬り》しかねえよな」





どさり……と、ヴァンが倒れた音を確認すると、俺はエクスカリバーを鞘にしまった。戦いは、刹那(せつな)の間に終わった。


俺は後ろに転がった、ヴァンの遺体に視線を向けると、


「どうか次は、穏やかな人生が送れるよう、祈ってるよ」


そう言い残して、俺は瓦礫にまみれた道を歩んでいった。空はもう明るくなり始めていて、あの絶望的な赤ではない、生命力に溢れたオレンジの光が俺たちに差し込んでいた。

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