表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/114

混沌の廃城

俺は、機能停止寸前の頭を、なんとか復活させた。怒りと絶望に震え続けた体は、むしろ、心拍数が上昇して、熱くなってくるのを感じる。うつろげな目は、徐々にある一点を目指して動き始める。そして俺は、その()()()な声がするスクリーンの方へと、頭を上げた。


そこには、あのデタラメ悪魔が、狐のような笑みを浮かべて、しっかりと映りこんでいた。


『ええ、本当ですわ、ゼノン教授』


『そうでしょうそうでしょう。この時期はやっぱり、隕石対策しておかないと危ないですからね』


信じられないほどクソみたいな茶番を始めるゼノン。映像はなぜかスタジオ風になっており、キャスターの席にはゼノンと、女寄りのゼノンの二人が座っていた。そしてその二人は、まだ語り続ける。


『でも、対策って一体何をしたらよろしいんですの?』


『いい質問ですねー。というわけで、実際に対策する様子を、生中継でお届けします。現場のゼノンさーん!』


次の瞬間、映像が切り替わり、タキシードにヘルメットという、珍妙な格好をしたゼノンが映し出された。ゼノンは崖の上に立っており、その背後には、あのプリト村が広がっていた。


『はい、現場のゼノンです。ただいま、あの村の上空に巨大な隕石があります! あのままだと、スタジオのVTRみたいになっちゃいますよね! そこで! 今回こちらを用意しました! こちらがプリト村上空の映像です!』


再び画面が切り替わり、今度は村の上空の映像となった。だが、そこにゼノンはいない。代わりにいたのは……。


『ちょっとー! なんなのこれ! なんで私こんなところにいるのー!? ねえ、誰かー! 私今浮いちゃってるんですけど!!』




「ルルカぁー!?」『小娘ぇ!?』




俺とヴァンの間抜けな声が重なり、部屋に響いた。あれ、なんでだ? ルルカはあの罠に引っ掛かって……それで…………!


『なぜだ、なぜ貴様が生きているっ! 第一このふざけた映像はなんだ!』


ヴァンが今までに聞いたことのないほどの怒気をはらんだ声で、誰もが気になっていることを指摘する。それに返答するように、スクリーンからまた、あの悪魔の声が流れた。


『なぜって、そりゃあの罠にかかってるのはルルカさんじゃないですもの。単なる人形です。あ、もしかして血のことについてですか? あれは昨夜、私が飲んだ赤い飲み物ですよ! 飲みたければ奈落のそこへGO!』


GO! じゃねえよ。てかなに普通に会話しちゃってんだよ。


『ねえー! なんかでっかい石みたいなのが私に向かってきてるんだけどー!? なにこれ怖いっ! ちょ、ほんとに止まらないんだけどあれ! うわあ待って待ってぶつかるいやだいやだ待って助けてぇー!!』


ルルカが真っ赤な空の中心で、(あい)を叫ぶ。だがルルカにはどうしようもないらしく、手足をバタバタさせるだけで、浮遊位置は変わらなかった。そんなルルカのことなどお構い無しに、隕石は接近していく。


『ルルカさん、あなたの加護ならきっと大丈夫ですよー!』


『え! ゼノン!? ちょっとあんたどこにいんのよ! ってそれどころじゃない! もうダメぶつかるー!!!』


ルルカの絶叫と共に、あの対【ウタカタ】戦で聞いた、鈍い金属音が鳴り響いた。いまだ泣き叫ぶルルカに対して、隕石はその軌道を、真逆の空の彼方へと変え、飛んでいった。


『素晴らしい! さすが《神鏡の加護》ですね! あんな隕石さえ跳ね返しちゃうなんて! やはり隕石対策にはルルカさんが一番!』


俺は一連の流れを、口をあんぐりと空けながら見ていた。


が、同時に。


「……はは、ははははっ……」


いつの間にか、笑みが溢れていた。そうだった。かつて村が転生者に襲われた時だって……あいつは……ゼノンは、こうして面白おかしく、絶望をはね除けてしまったじゃないか。


「最初っからやれってんだよ……」


だんだん笑いが強くなってきて、涙が出てきた。俺は何も失ってなどいなかった。いや、失わずに済んだんだ。あの、どこまでもふざけていて、最高に頼りになる、最強悪魔によって。


『なんだ……なんだこれはっ! 一体何が起きているというのだ! あのタキシードの人間は何者だ! なぜこんなことができる!』


『質問が多い魔術師さんですねぇ。そんなの決まってるでしょ。だって私……』


ああ。そうだな、お前は。




『めちゃくちゃ強いですもん』




かつて、村で言い放ったあの台詞を、さも当然と言わんばかりに吐き捨てた。


『……ふざけるなぁ! 理論を言え、論理を構築しろっ! なんだその知慮に欠けた言い分は! そんなデタラメな説明で納得できるわけがないだろうっ!!』


「納得できるわけねえだろ、実際あいつはデタラメなんだから」


俺は、慌てふためくヴァンの声を聞き、内心ほくそ笑みながら言った。


「納得なんて、魔術師の始祖だろうが無理だ。どれだけ知識があろうが、知恵があろうが、そんなものを遥か彼方に置き去りにする勢いで、奴は別次元なんだから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ