碓氷 幸太(変態)
「ノア~! もう、びっくりさせないでよ~」
ルルカはそう言って、ノアの額を小突いた。額への小突きは、身長の高い者が、低い者へ行う行為のイメージだったので、なんだか奇妙な光景だった。だがまぁ、微笑ましい光景でもあるか……。そんな、女の子同士のイチャイチャを、その目に焼き付けていた時だった。
俺は、とんでもないものを見てしまった。
ノアのゾンビ服の裂け部分から、その豊満な谷間が、チラチラとこちらを覗いていたのだ。
二人ともじゃれ合っているせいか、その事に気づいていない。逆に、そのじゃれ合いが、谷間を出現させたり引っ込めたりさせている原因でもあった。焦らし方がえぐい。いやエロい。
だが、それ以上にびっくりしたのは、ノアがわりと巨乳だったことである。普段、ゆったりとした修道服を着ているため、体のラインは完全に隠れていた。そのため、あのような二つのメロン……いやスイカか……? とにかく、あれだけのモノを持っていたとは、夢にも思わなかった。
(青年よ……聞こえますか……)
うわ頭の中にゼノンの声が入ってきた。 なにこれ……。
(あなたは修道女の、あろうことか同い年の女性の谷間を凝視している……そうですね?)
(くっ……こいつ、直接脳内に……! じゃなくて、お前また変な技を)
(凝視してましたね?)
(してましたね)
(君にプライドはないのですか?)
(いやあんなん誰でも見ますやん。こちとら健全な日本男子ですよ? 金髪美少女の谷間とか学校でもお目にかかれないレアものですやん)
(ちなみに、今の君の心の声、皆さんにだだ漏れですよ)
は?
あれ、ルルカとノアがめっちゃこっち睨んでる。おいおいマジかよ……。これからガチのサバイバルホラーが始まりそうな雰囲気なんだけど?
「お前さぁ……人の心の中公開音声にするとかどういう神経してんの?」
「こういう神経ですけど」
「谷間チラチラ見る神経もどうかと思うんだけど?」
「コータ……信じてたのに……」
「いやそっちは普通の神経だから。男の子みんなそんなもんだから」
ダメだ女性二人の視線が痛い。言い訳はよそう。なんとか話題を変える方向にしよう。えーと、どうしようかな……能力とかの話でも振るか?
「いやー、それにしても、ノアの《女神の加護》ってすげぇよな!」
「そうですよね! なんてったって、胸元がまさに《女神の加護》そのもの! 高い防御力をほこっているのも頷けます! でも、それ以上に高い防御力をほこるのはやはりZウォール! ルルカさんのZウォールは、信頼と安心の防御性能ですよね! ルルカさんのZウォール!」
ゼノンお前何してくれてんの? 話題反らそうとしてたのに火に油注いだ形になったんだけど? どんだけ人類を茶化すの好きなのこの悪魔。
「また私の胸をZウォールって言った!」
「おや? 私は「ルルカさんのZウォール」と言っただけで、胸の話などしていませんよ?」
「その意味深な言い回しはもう言ってるようなもんじゃない!」
「私の胸……女神の加護……だったんだ……」
「ノア、落ち着け。それは女神の加護じゃないぞ」
実際そのレベルのモノだけど。てかこのままじゃ埒があかないな。食堂に移って夕飯にしよう。せっかく買った屋敷が消し炭になる前に。
「ところでノア、食堂はどこだ?」
「あ、そうでしたそうでした。もう料理は用意されてるんですよ!」
「こちらです」と、ノアは自分が今出てきた部屋の方へ案内した。そっちが食堂なのかよ。まんま某ゲームと変わらん構造してるな……。
食堂に入ると、さらに俺とルルカは驚くこととなった。料理があまりにも豪勢だったからだ。真っ先に、これいくらしたんだろう、と金回りの話が浮かんできた俺はもうダメなのかもしれない。屋敷の購入額も恐ろしいが、目の前の料理も、それくらいはしゃいじゃっているのだ。
「うわ~すごい豪勢……」
「ほんと、合成かと思うくらいだぜ」
「は?」
「すいませんでした」
「あ、私……着替えてきますね」
「そっちもすいませんでした」
「コータ君、私に謝ることは?」
「お前は「すいません」だけじゃ許さねえからな?」
そんなやりとりをしながら、俺たちはそれぞれの席に着いた。ノアだけは別室で着替え中だ。せっかく用意したゾンビ服が、ただのセクシー服となっては、食事中に着てるわけにもいかないだろう。料理を見ればいいのか、ノアを見ればいいのか分からなくなる。
「今コータ変なこと考えてなかった?」
「いやーバ◯オのこと考えてたわー最初のゾンビに出くわしたら部屋を出るのねーふーん」
いやだ魔術師こわい。
「ところで、この料理は一体どうしたんだよ」
料理の値段もこわい。
「これはさすがに、ノアさんとのプチクエストで稼いだお金で買いましたよ。もっとも、買ったのは食材だけで、調理したのは私ですが」
よかった、値段はこわくなかった。
「へぇー、お前料理もできるのか」
「わ、私も料理くらいできるしっ」
いやなんでルルカが張り合ってんだよ。しかもそういう言い回しの子はだいたい料理じゃなくて兵器を生み出すのも知ってるから。それを主人公が食べて、ぶっ倒れて泡吹くとこまで読めてるから。
「あれ、コータ君……もしかして、料理もできて、しかも超強い私に惚れちゃいました?」
「俺『性別不明』は恋愛対象じゃないから。すまんな」
と、ゼノンと下らないやりとりをしていると、
「お待たせしました~」
以外と早く、ノアは戻ってきた。修道服に戻ったのかと思いきや、今度はパジャマ姿で現れた。上はモコモコした可愛らしい服だったが、問題は下だ。ショートパンツから覗く、白い太ももがやけにまぶしい。この子スタイル良すぎだろ……。これは神の遣いですわ。
「コータ、やっぱり変なこと考えてない?」
「やっぱ拳銃の弾は温存したほうがいいもんねーあまりゾンビと戦わない方がいいよねあのゲームねー」
なんで分かるんだ。俺の顔ってそんなにスケベ顔なのか? 個人的に、平凡ですぐ忘れちゃいそうな顔だと思ってたんだけど。あれ、それはそれでどうなの?




