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絶望世界の仕組み

__________________________________________


ゼノンの放った一言に、場が凍った。こいつ、今さらっととんでもないこと言わなかったか? なんなら屋敷購入より衝撃的なことを言った気がする。


ア然としたままの俺とルルカに、ゼノンは微笑を絶やさずに続けた。


「ちなみに比喩とかではありませんよ? この世界は正真正銘、神から見放された世界なのです」


「あー、ゼノン? もうちょい詳しく話してもらえるか?」


俺の要求に、ゼノンはお菓子を消すと、タキシードモードに入れ替わった。そして、コホン、と一つ咳払いをすると、今の話を詳しく説明し始めた。


「まず、前提として、『世界』というのは複数存在します。君たちが元いた世界や、この世界以外にも、たくさんね」


ゼノンはいつの間にか手元に出していたホワイトボードに、その図を描きながら、こちらに見せ、話を続ける。


「そして、その複数の世界を、神々が全て統括しているかというと……実はしていないのです。というより、統括しきれないほど、世界の数が多すぎる、という方が正しいでしょうか」


「なんで神様はそんなに世界を作っちゃったのよ」


無責任だわ、とルルカは頬を膨らませて言った。ゼノンは苦笑しながらも、「それは、」と続けた。


「『観察』するためです。ぶっちゃけ、神とはいえ、やってることは君たちで言う『科学者』と変わらないのです。そのため、観察対象はできるだけ多い方が、データは集まりやすい。ただそれだけの理由で、複数の世界が誕生したのです」


「えー! なんなのそれ! だいたいなんの実験なのよ!」


「うーん、それを説明しちゃうと、世界の禁忌に触れるというか、君たちの頭がバグっちゃうというか……」


「あー、分かった分かった、高次元の話ってやつな。じゃあそれはいいから、説明を続けてくれ」


「分かりました。では、ここで問題です。神の直接的な介入なしに、世界の命運とはどのように決められているでしょう?」


あまりに唐突過ぎる質問に、俺は答えられないでいた。それはルルカも同じらしく、うーん、と難しい顔をしながら、エターナルドリンクをすすっていた。まだあったのかよ。てかなんも考えてないだろお前。


ゼノンは「ハイ時間切れ」と言うと、これまたさらに衝撃的な答えを口にした。


「答えは『サイコロ』です」


「は?」


「え?」


俺たちが再びポカンとする様子に、ゼノンはクスクスと笑いながら、言った。


「まぁ正確には『サイコロに似た運を左右するシステム』を、一世界ごとに設けた、という話です。そもそも世界は、そのままだと大きな(かたよ)りを見せたり、一歩も発展しないなど、うまく機能しないことがほとんどでした。そこで、サイコロによる『運要素』を追加することで、世界に起伏が生まれたのです。化学における奇跡的な発見や、強い軍隊が悪天候によって敗北する、などの事象は、全てそこから来ています」


「へえー……」「ふーん……」


上の空で返事する転生者組に、ゼノンは「ここからが問題です」と釘を刺すと、その問題点について話し始めた。


「『運要素』を、全ての世界に設けたまではよかったのですが……なんせ、世界の数が多すぎます。それだけあると、当然、『やたらに出目が悪い世界』なんてものも、出てきてしまうのですよ」


「あっ……!」


ルルカが何かに気付いたように、口を押さえた。俺も、つい身をのりだし、「それってつまり……」とこぼしていた。ゼノンはこくん、と頷くと、ホワイトボードに描かれた複数の世界のうち、一つだけをグルグルと囲った。


「そう、まさにこの世界が、その『出目が特に悪い世界』なのです。そんな事象が偏った世界、研究対象には適しませんよね?」


「だから、神々から見放された世界……」


俺は驚きと困惑が隠せないまま、ゼノンが言った言葉を復唱していた。なんてこった。俺はそんな破滅寸前の絶望世界に転生しちまったのか。トラックと事故ったのは仕方ないにしても、転生者先まで事故るなんて……。なんてついてないんだ。


だが、次にゼノンから出た台詞は、以外なものだった。


「いえ、実を言うと、まだその段階では見放されていなかったのです」


「なんだって?」


「『運が悪い世界』が出てくることも、神々は承知の上でした。そこで、比較的うまく機能している世界から、機能に支障をきたさない程度の人間……すなわち、『その世界での必要性に乏しい人間』を、こっちに引っ張ってくることで、均衡を保とうとしたのです」


「そのうまく機能してる世界ってのが、俺たちの世界で、必要性に乏しいってのも、俺たちのことなんだな?」


なんだか、自分で言ってて悲しくなってきた。だが、ゼノンはそれをフォローするかのようにこう続けた。


「いえ、君たちは本当に偶然です。他の転生者たちは、『元ニート』や『元不登校』などの、まさに不必要という水準で、この世界に転生されました。もちろん、他の『出目が悪い世界』にも、転生者は配属されています。それで、全て解決したかのように思えたのですが……」


そこで、ゼノンは真顔になった。


「なんとこの世界は、その転生者さえも、出目が悪かったのです。他の世界が『転生者システム』によって回復を見せる中、この世界は、悪い転生者の大量派遣により、ただでさえ悪かったそのバランスを、さらに崩しました。こうなると、神々が地上に降りて奇跡を起こしまくるなどしない限りは、元には戻りません。ですが、そんな面倒なことをするより、もっと簡単な方法があります」


「放置、か……」


「そのとおり。こうして、悪い転生者が蔓延する、神さえも見限った世界が誕生しましたとさ」


ゼノンはそう言うと、指を鳴らしてホワイトボードを消した。そして、再びスナック菓子を出し、頬張り始めた。


「……そんな……そんなことって……」


ルルカが落胆に満ちた表情で、空になったドリンクを握りしめた。俺もルルカと同じ気持ちだ。神様が勝手に作り出した世界で、人類を翻弄し、しかもダメになったらほったらかしにする……。こんな話があっていいのかよ。俺たち、いや、この世界の人たちだって、あんなに必死に生きてるんだぞ……!

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