転生者たちの矜恃
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「ただいま」
薄暗く、厳かな雰囲気を漂わせた空間で、青年の声が響いた。そして、奥の暗がりから、その声の主は現れた。
内海 零は、つまらなそうに、置物の壷や、絵画に手を触れながら、自身の帰還に対する返事を待った。
「おかえり、レイ」
縦に長いダイニングテーブルの、中途半端な場所に座っている少年は言った。どこにでもいそうな風貌の少年でありながら、やけに眼差しが鋭い。レイはその眼が嫌いだった。
「どうだった?」
少年は、頭の後ろに手をまわし、暇そうに椅子を鳴らしながら言った。レイがわざとらしく肩をすくめてみせると、少年は「あっそ」とだけ返し、今度はテーブルに突っ伏した。
「王都に住んじゃえばいいのに」
不敵な笑みを浮かべながら、少年は呟く。レイは「冗談だろ」と、同じく不敵な笑みを浮かべながら、後を続けた。
「あんなに人が集まった場所、気持ち悪くてしょうがない。君だってそうだろ、結斗」
結斗と呼ばれた少年______紫芽 結斗は、そりゃ違いない、と言わんばかりにクスクスと笑った。そんな紫芽に構わず、「他は?」とだけ呟くレイに、紫芽は大きく伸びをしながら、顎で部屋の端を差した。
そこには腕を組んだまま、壁にもたれ掛かった人物がいた。パッと見ただけでは、男性か女性か判別不可能な長さの赤髪。その色は火……というより、凝固した血液のような赤黒さをしていた。それとは対照的に、切れ長の目には青い光が宿っている。
「あー……あんたもいたの? 相変わらず、影が薄いね」
レイがおどけたように言って見せる。が、その人物は黙りこくったまま、裏の暗がりへと溶け込んでいった。
「レイ、あんまり意地悪すると、君の首が飛ぶよ」
「それは怖いね。あんな奇妙な奴に飛ばされたら、死んでも死にきれないよ」
紫芽は再びクスクスと笑いながら、暗闇へ消えていった『奇妙な奴』の方を見ながら、頬杖をつき、言った。
「奇妙な奴、か……。言い得て妙だね。ほら、君は奇妙な存在なんだってさ、『高次元の悪魔』さん?」
その暗闇から、返事は帰ってこない。紫芽は心底つまらなそうにあくびをすると、レイを横目で見ながら言った。
「ま……どうせ僕が一番強いに決まってるけどね」
レイは、紫芽の子供染みた自尊心が嫌いだった。そして同時に、こいつはおそらく、ずっとこのままだろうとも思った。それこそ…………彼から能力を奪わない限りは。




