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特異点

シスターの顔が、みるみるうちに恐怖と怒りの入り交じった表情へと変わる。その反応に満足したのか、さらに転生者は煽り立てる。


「ほら、シスターなんだろ? 目の前で人が殺されるぞ? 黙って見てねえでなんとかしてみろよ」


霞がかりつつある俺の視界に、シスターがこちらへ駆け寄ってくるのが映った。転生者に対して手を合わせ、必死に頭を下げている。


やめてくれ。


俺のなんかのために、頭なんて下げないでくれ。


こんなゴミ野郎に、懇願なんかしないでくれ。


自分が本当に情けないと感じる。なんで、こんな時でさえ、歯向かう力が残っていないんだよ。なんで、女の子が頭を下げている姿を、呆然と眺めることしかできないんだよ。


様々な感情が浮かんでは消える。だが、それをしたところで現状は変わらない。俺はただ、シスターの見るに絶えない姿を、力なく見ていることしかできなかった。


「お願いします……やめてください……その人を離してあげてください……」


聞いてるのも辛いほど、震えた、弱々しい声が聞こえる。なんて綺麗な声なんだろう……。俺は場違いと言える感想に、少し自嘲気味に笑った。だが、本当に、自然とそんな感想が浮かんだ。人の死ぬ間際の脳内は、案外適当なことを考えているのかもしれない。


最期に修道女の声を聞いて死ねる……。ある意味、理想的な結末じゃないだろうか。ああ、神様。どうか、次に転生するときは、もっと穏やかな世界で。


どうか…………。


「じゃあ、死んでね」


そう言って、転生者は俺の額に指をあてた。


「あああああああっ!! やめて、その人を離してっ! あぁっ! あああっ…………!!神様……!!」


嗚咽しながら、シスターが転生者に掴みかかる。転生者は、そんな彼女を嘲笑うかのように振りほどくと、もう何度も見た、あのむせ返るような邪悪さに歪んだ笑顔を作り、そして…………。









「助けてほしいのですか? 私、神じゃないんですけど、それでよければ」




へ?




気付くと、いつの間にか、転生者の横に、見知らぬタキシードの男が立っていた。

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