表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/114

ケティ

そして、次の日、俺はノアとルルカに、王都で暮らすつもりであることを伝えた。すると、自分達も同じ屋敷に住み込みたい、と言い始めたのだ。想定していなかった回答に、男子的に少しドキドキしながらも、なぜそうしたいのか聞いてみた。


すると、どうやら二人とも『転生者による世界の危機を阻止する』、という意志は、俺と同じらしく、どうせならこのメンツでパーティを組んだ方がいい、とのこと。それ自体は賛成だが、まだルルカの魔法が危険すぎるので、まずはその練習をするため、基本的には俺とルルカでクエストをこなすことにした。


ゼノンを連れてもよかったのだろうが、練習中にちょっかいを出されても困る。なので、ノアと一緒に、王都に残ってもらい、二人には、物件探しをしてもらった。


そして、一ヶ月が過ぎた頃……。


「ようやく、金が貯まったな……。これなら屋敷も買えそうだ」


俺とルルカが稼いだのと、ノアとゼノンがお手頃価格な屋敷を見つけてくれたこともあり、すでに屋敷を購入できる程度の金は貯まっていた。


「いやー、この一ヶ月頑張ったわ、私!」


さっきこなしたクエストの金を、金庫に預けに行ったルルカが戻ってきた。そして、席に着くなり、テーブルにぐで~っと寝そべり始めた。


「あー疲れた……。コータ、エターナルドリンク買ってきてー。コータの分も買ってきていいからー」


ルルカがだらしない姿のまま、向かいの席に座る俺に金を渡す。ああ、買ってきてやってもいいさ。一ヶ月、ちゃんと頑張ったからな……お前は。だけど、だけどな?


「お前さぁ……この一ヶ月間、結局、魔法はコントロールできず、危ないままだったよな」


ルルカの体がピク、と動いた。構わず俺は続ける。


「確かにお前は頑張った。そこは認めよう。だけどね、その裏で俺が何回死にかけたと思う? お前が「あー、膨らんじゃったー!」ってパニクって、俺の方へ飛ばしてきたのは何回だったかな?」


ルルカがさらにピクピク、と動く。


「なんでこっちに飛ばすのかな? パーティーメンバー殺す気なのかな? 俺に《獅子王の加護》がなかったら消し炭になってたよ? そもそも《ファイアボール》だよ? 本来即死するような魔法じゃないんだよ?」


「ああああああああああああ! ねちねちねちねちうるさいわね! しょうがないじゃない! 私はチート魔術師なんだから!」


「チート魔術師ならコントロールもチートレベルにしとけや! もし誰かが「すまん、タバコの火、もらえるか?」って言ってきたら、お前は災害級の魔法で応対する気かよ!」


「ええそうね! だってデカいのしか出ないもの! そんなやつタバコと一緒に燃えカスにしてやるわ!」


そして狂ったように高笑いを始めるルルカ。とうとうおかしくなっちまったか……。確かにルルカは、この一ヶ月、頑張っていた。だが結局、魔法は調節できず、危険な魔法のままだった。もうこれはこういうもんだ、と、割り切るしかないのかもしれない。


「まーまー、二人とも落ち着いて」


少し高めの、どことなくダルそうな声が聞こえた。いつの間にか、俺たちのテーブルの前に、獣人で案内係のケティが、立っていた。両手にエターナルドリンクを持っている。


「君たち二人は、この短い期間で、精力的にクエストをこなしてくれたからね。ささやかなサービスだよ」


ケティはそう言うと、俺たち二人にエターナルドリンクを寄越してくれた。え、なにこの獣人。天使なんですけど。好き。


「うわぁありがとー!」


ルルカがケティに抱きつき、頭を撫で回す。ケティはされるがままに、ルルカに身をゆだねつつ、自身もエターナルドリンクを飲んでいた。


「エタドリありがとな、ケティ。この一ヶ月間、ルルカの訓練に最適なクエストを持ってきてくれたことも、感謝してるよ」


「案内係だからね。一つでも多くのクエストが消化されることが、ボクの存在意義だから」


やだこの獣人。天使な上にカッコいい……。プロフェッショ◯ル仕事の流儀でケティ特集組みたいレベル。


「とはいえ、たまには自分達の力で探してみるのもいいかもよ。ほら、あそこに張り出されてるでしょ」


俺とルルカが、エターナルドリンクをちゅーちゅーしながら、ケティが指差した方を見る。そこには、壁一面を多い尽くすほどの、クエスト依頼書が張り出されていた。


「自分達で、か……。確かに、ケティに頼ってばかりじゃダメか」


「まぁボク案内係だから、別にいいんだけど。上級の人たちは、自分達の能力や、欲しい報酬を照らし合わせて、ガンガンこなしてる。ボクは困ってる人とか、初心者のサポートがメインかな」


そう言うとケティは、少しだけ、寂しそうな顔をした。そりゃそうだ。自分がサポートしていた初心者が、いつの間にかその補助から離れ、独立していく。それは同時に、ケティとの繋がりも希薄になる、ということに他ならない。


俺は、ケティの頭を撫でると、笑顔で言った。


「俺はケティを頼りにしてるよ。今後も、どうか頼らせてくれ」


「あ、私も私もー!」


ケティは一瞬、目を大きく見開いたが、再びいつものダルそうな目になった。


「不思議な人だね、君たちは。ものすごく強いはずなのに、多種多様なクエストをこなしてるし」


「まぁ戦闘訓練だったり、情報収集がメインだからな。勲章とか興味ないし」


「あ、私も私もー!」


「お前他に言うことないの?」


ルルカが俺の頬をつねってきたあたりで、ケティは「本当に面白い人たちだ」と言うと、ぱたぱたと次の冒険者の方へ向かっていった。その顔には、わずかに笑みがこぼれていた。


「じゃあ掲示板の方行くぞ。あと痛いから離せ」


「意外とコータのほっぺって柔らかいのね~」


「離せ」


そう言って、俺たちは掲示板の方へと向かった。こうして近くで見ると、やはり膨大な数だ。さて、どれからやろうかな……。


と、思っていたその時、あるクエストに、俺の目は釘付けになった。俺が黙りこくっているのを察したのか、ルルカが心配そうに聞く。


「どうしたの?」


「あ、ああ……。このクエストを見てくれ」


そう言って、俺は特定の一枚を指差した。そこには「『ファスター』近くの廃城から、怪しい光が漏れている。調査してほしい」と、記されている。


「ここに書かれてる『ファスター』ってとこ……。俺が最初に、転生者と会った町だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ