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そうだ、王都に住もう

その後、ノアは、転生者に関する報告をしてくる、と言って、去っていった。それを皮切りに、ルルカ、ポーラ、ソフィアも、自分たちの巣へと帰っていった。残るは俺とゼノンの二人のみとなった。


「じゃあ夜のデートといきますか」


「しねえよ。宿探すぞ」


いまだ美人容姿を維持したままのゼノンが、つれないね、と言わんばかりに顔を横に振る。このデタラメ悪魔とデートなんてしたら、何をされるか分かったもんじゃない。


俺たちは、とりあえず近くにあった宿へ向かい、今日はそこで休むことにした(ぼったくりじゃなかった)。が、金回りがいいわけでもないので、仕方がなく、二人で一つの部屋を借りることにした。


部屋の扉を開けた途端、ゼノンが先に入っていき、ベッドに座った。弾力を確かめるように、手で圧をかけている。俺はというと、わりと重たかったエクスカリバーを鞘ごと床に起き、それを枕にして、寝そべった。……我ながら、なかなか罰当たりなことをしていると思った。


「おや、コータ君は私と一緒に寝るのでしょう?」


「やめろや。ベッドが一つしかないんだぞ? 俺はここでいいよ。もともと、どこでも寝られるタイプだし」


「あー。机の上に突っ伏して寝るのが得意そうですもんね」


「あれは陰キャスキル『たぬき寝入り』だから。……って別にそんな寝方得意じゃねーし!? な、なに言ってんだか!」


くそー……美人になった所で、毒舌っぷりは健在か……。でもなんだろう、なんだかドM心をくすぐられるというか……これはこれで、悪くないような……あかん、何かに目覚めそう。


俺がいろいろとアカン扉を開きかけた時、ゼノンが唐突に言った。


「王都を拠点にしませんか?」


あまりに急過ぎる提案に、しばらく困惑する。だが、転生者に襲われにくく、物資も戦力も豊富なここなら、確かに拠点としては最適なのかも知れない。


「まぁ悪くないな。屋敷くらい、俺とルルカがクエストをこなしまくれば手に入るだろうし、良い戦闘訓練にもなる」


「そうでしょう。魔王軍に関しては、まだ不明瞭な部分も多いですし、クエストを通して、各地に足を運んだ方が、情報も取得しやすいはずです」


そう言いながら、ゼノンはポーラのクッキーを食べた。買ってたのかよ。


「じゃ、ひとまずはクエストこなしてくのが目標かー。なんかようやく始まったって感じだな」


「と、いいますと?」


ゼノンが二枚目を頬張りながら問う。食べるスピード速くね?


「俺はあの村に着くまでは、適当にぶらついてただけだからな。魔王討伐とか、わりとどうでもよかったし、倒しに行こうと思えばいつでも行けると思ってたからな」


「それが、度重なる転生者との対峙で、そうも言ってられなくなった、と」


「まぁそんなところだ。出会ったやつら全員が悪い奴だったわけじゃない。中にはまともな奴もいたんだろうさ。だけど、お互い『転生者』ってだけで、警戒心が爆上がりしちまう。こっちは何も仕掛けてないのに、「失せろっ!」つって、攻撃してきたのもいたしな。目が血走ってたぜ」


ゼノンはそこまで聞くと「ほうれすか」と三枚目のクッキーを頬張りながら、頷いた。お前話聞いてたか?


「とりあえず、最終的には、魔王を倒すのが目標だ。魔王を倒したら何があるかなんて分からない。だが現実に、転生者は敵として襲いかかってくる。それが『魔王軍についてる』のか『個々に悪さを働いてるだけ』なのかさえ、分からんけどな」


最悪、魔王がとっくに倒されていて、転生者がその席についている可能性も、まだ消えていない。その場合、勇者として名乗り出ないのは……世界征服が目的だからなのか? それ以前に、他の転生者が、そいつに従っているのだとしたら……そいつは、いったいどれだけの力を持った転生者なんだろう。結局、分からないことだらけだ。


「どちらにせよ、元同じ世界の仲間だからって、躊躇はしない。この世界の人たちだってちゃんと生きてるんだ。運悪く発生した危険因子なんかに、その平和を脅かさせはしない。そうなる前に、俺が倒す」


「コータ君……意外と決意が固いんですね。でも、みんなが君みたいな存在ではない」


俺は、ゼノンが何を言わんとしているのかが分かった。おそらく、ルルカのことだろう。絶大な魔力を誇る、反則級の魔術師とはいえ、中身は日本の女の子だ。モンスターならともかく、相手が人間だったとしたら、あの子はきっと……。


「ああ……そうだな」


俺は、それだけ言うと、目を閉じた。今はクエストのこと、拠点のことだけを考えていればいい。大丈夫、なんとかなる。分かりっこない未来に、思考を割いても疲れるだけだ。


「じゃ、もう寝るわ。おやすみ」


「おやすみなさい、コータ君」


こうして、長い王都での一日は、幕を閉じた。

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