魔法少女☆ルルカ
「……ねぇ、君たちはクエストこなしに来たんでしょ? ちゅーちゅー」
片手に持ったエターナルドリンクを吸いながら、幼女はまた聞いてきた。まさにそのエターナルドリンクで困ってんだよなぁ……とか思いながら、俺は幼女に聞いた。
「君は、ギルドの関係者?」
「そだよー。ボクは獣人の【ケティ・コール】。ここの案内係なのよね。こんなんだけど立派な淑女だよ。年齢はひみつ」
そういうと、ケティは再びドリンクをちゅーちゅーと吸い始めた。クエストのことも気になるが、もう一つ気になることがあるから、そっちを先に聞いておくか。
「ケティ、そのドリンクはいくらで売ってた?」
「ギルド付近の屋台で200ゼニス」
「やっぱりぼったくりじゃねーか!」
あーくそ! 王都だからって完全に油断してた! そりゃあそういう商売してる連中もいるわな! さっさとクエストこなしてエクスカリバー取り返さねーと!
「あ、もしかして王都入ってすぐのとこの店に入った? ボクの同僚もそこでやらかしてたなぁ。そのすぐ横の店だったらまだ良心的だったのに」
「あ、やっぱひっかかるやついるんだ……。んで、そのこと……ってほどでもないんだけど、10000ゼニス以上手に入って、場所が近いクエストない?」
ルルカが呑気に「獣人かわいいー」と、ケティの頭を撫でる。ケティは気にも止めず、エタドリをちゅーちゅーしながら上を見上げると、ふと、ストローから口を離した。
「あ、そうだ。王都近くの平原に、ソードウルフの群れがいるらしい。これなんだけど」
そう言って、ケティはふところから写真を取り出した。俺が見ようとする横から、ルルカも覗き込むように、写真に目を通す。そこには、口の両サイドから刃のような物が突き出た狼らしき動物が、原っぱにたむろう姿が写し出されていた。
「モンスター研究家の人が投稿してくれた写真だよ。なんでも、草むらに隠れてやっとこさ撮影した、命がけの一枚らしい。よくやるよねー、研究者ってのは」
「そんで、そいつらを倒せばいいんだな?」
「そう。こっから馬車で十分くらいのとこだから、ちゃちゃっとよろしく。あ。登録とかしてないなら先に済ませといて」
「ほんじゃあ」と言うと、ケティはちゅーちゅーしながら、次の冒険者へ話しかけに言った。案内係ユルいなー。
「じゃ、適当に登録済ませて、軽くクリアしてきますか!」
「ふふん! このチート魔術師に任せなさいっ!」
こうして、俺たち転生者の初クエストが始まった。
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……はずなのだが。
「じゃあ、とりあえず《ファイアボール》からだな」
俺たちは、ソードウルフの群れから若干離れた場所に立っていた。ルルカの初戦闘ということもあり、まず初級魔法の使い方を教えていた。……なんで魔術師に指導してんだ俺。
「まず俺から撃ってみるから。いくぞ」
そして俺は、「ファイアボール!」と叫んだ。俺の手から、ボウリング玉くらいの火球が生成される。そして、俺はそれを空へと放った。それは赤い軌跡を残しながら、雲の中へと消えていった。
「これがファイアボール。お前の魔力だと多分、今のよりヤバいのが出るだろうから、抑えて、抑えてな?」
「うん、やってみる」
ルルカはそう言い、俺と同じく、「ファイアボール!」と叫んだ。すると、ルルカの手から火球が生成された……のだが。
明らかに以上な大きさだった。例えると運動会の、玉転がしで使う玉が四つ分くらいの大きさだ。初級魔法でこれ? てかこれ使う側も危なくね?
「おいおいおいっ! だから抑えてって言っただろうが!」
「これでも抑えてるんだってばぁ! どーしよコータ、これどんどんふくらんできたんだけど!」
いつの間にか一軒家くらいまでの大きさになっている。チート魔術師こわい。
「あああああ危ない危ないっ! はや、早く撃てーーっ!!」
「どこにー!?」
「もういっそソードウルフの群れに撃ってくれ!」
「分かったー!」
そう言い、ルルカは「えい」と、ソードウルフの群れへと放った。とんでもない火球(初級魔法)が、モンスターを襲う。真っ先に危険を感知した一匹の顔が、恐怖に変わり、やがて、おだやかな表情へと変わった。いろいろ察してしまったか……気の毒に。
その後、激しい爆音と共に、ソードウルフの群れは消し炭となった。あまりにも早すぎるクエストクリアと、自身の魔法で初めてモンスターを討伐したルルカは、ぴょんぴょん跳ねながら喜んだ。
「ねえ見た? 見た? 私の《ファイアボール》! 一発でソードウルフの群れをやっつけたわ! やっぱりチート魔術師な私なら余裕だったわね!」
「あ、ああ……。だけどお前の魔法、そのままだとメチャクチャ危ないから、今後も練習のために、ちょいちょいクエストこなした方がよさそうだな」
「……やっぱり?」
ルルカは冷や汗を流しながら「てへっ」と言うと、帰るための馬車にゴキブリのようなスピードで乗った。……これは長くなりそうだ。
その後、報酬を受け取った俺たちは、再びあの店へと向かった。すると、店のベンチで、ノアと、見知らぬ黒いワンピースの女性が、座ってソフトクリームらしき食べ物を頬張っているのが、遠目に見えた。こちらに気付いたノアが、笑顔で手を振る。俺たちも手を振り返しながら、ノアの元へと向かった。
「お帰りなさい、コータ、ルルカ! あ、えと、これどうぞっ」
ノアは唐突にそう言うと、懐からからお金を取り出した。見たところ、5000ゼニスはある。
「ノア、これどうしたんだ?」
「いえ、私たちもお金を払ってなかったものですから、コータたちだけに負担させるわけにはいかないと思って、町のプチクエストを攻略してました! この食べ物が、その時のおまけです」
そう言いながら、笑顔で謎のお菓子をなめる。ソフトクリームにしか見えないが、またエターナルドリンクと同じで、むっちゃうまいんだろうか。それにしても、ノアは健気だなぁ。
「ま、とりあえずありがとな。ノアたちが頑張った分と、俺たちの分。これでエターナルドリンク代はようやく払え……あれ?」
待て、ノアはさっき「私たち」とか「その報酬でもらった食べ物」とか言ってたな。その食べ物とやらを、隣でペロペロ食ってる女の人おるんやけど。
「あ、あのー……ノアと一緒にクエストをクリアしたというのは、あなたのことでしょーか……」
なんとなく答えが予想できていながらも、俺は隣の美人に訊ねた。
「どうしたんですか、コータ君? 私とあなたの仲ではないですか。急によそよそしくしないでください。それともまさか、見破れなかったとでも?」
「やっぱりゼノンかよ! いや、なんならノアがこっちに手を振ってた時点で「おや?」ぐらいには思ってたけどね!?」
「うっそー……超キレーなんですけど……」
口を手で抑え、驚いた表情で感想を述べるルルカ。確かに、今のゼノンは、ただでさえ中性的だった声質を少し高めの、艶っぽい声に変えており、胸元も、ルルカが唸るぐらいには膨らんでいる。艶やかなストレートの髪は、もともと長めだったこともあり、それだけでは性別が分かりにくかったが、そこにアゲハ蝶の髪飾りを添えることで、より女性っぽさが増していた。




