表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/114

ギルド

結局、「後でお金払うんで」と言って、店に担保としてエクスカリバーを置いていくことで、ようやく店から出られた。店のすぐ横のベンチで、死んだ魚のような目で前を見続けるゼノンと、心配そうにゼノンの顔色を覗き込むノアの姿があった。


「いきなりで悪いんだが……二人とも、お金は持ってないよな?」


その問いかけに、まずノアが「財布は宿に預けていたら……」と答える。だよな、燃えカスになったよな。


ゼノンの方も、無言で首を横に振る。まぁお前が持ってるわけないよな。


「はぁ……資金集めかぁ……」


俺は肩を落としながら言った。ギルドのクエストを攻略していけば、金はバンバン貯まる。ましてやチート持ちの俺が取り組めば一発だ。そこまではいいのだが、ただ、単純に。


「めんどくせぇ……」


倒すのが面倒なわけではない。目的地に行くまでの準備や移動、なんなら登録やら受付までもがめんどくさいのだ。『ターゲット倒したら首を持って帰る』でええやん。なんなの? 市役所なの?


「わ、私はパ~ス……」


こっそり回れ右をしているルルカの襟首を掴んだ。なにこいつ逃げようとしてんの? エターナルドリンク(一人あたり2500ゼニス)分は稼いでくれないと話合わねえよなぁ?


「お前も行くんだよ」


「やだっ! モンスターこわい! やだっ、やだよぉ! ノア、助けてぇ~!!」


十九歳とは思えない、駄々のこねっぷり。その哀れな姿に、町の人たちが口々に「嫌だ……なにあれ?」とか「お母さん、あのお姉ちゃんすごく暴れてるよ?」「見ちゃダメ、さっさと行きましょ」とか言いながら、足早に通りすぎていく。


「ダメだ! ノアにはゼノンを見張っててもらう役割があるんだよ。すまん、ノア。頼めるか?」


「あ、はい」


「コータ君? そこは「介抱しててくれ」では? 見張るってなんですか?」


「うっせ、言葉の(あや)だよ」


俺たちがクエストに行ってる間に、ゼノンが忽然(こつぜん)と姿を消すかもしれない。なんせ気まぐれだ、「みんないないし飽きたな~」とか始まれば、十分に消える可能性はある。そんなことになればいよいよ『どうあがいても絶望』だ。悪いがノアには、見張り役を担ってもらうしかない。


「じゃ、行くぞ」


「嫌だぁ~!!」


いまだ嫌がる魔法少女(十九歳)を引っ張りながら、俺たちはギルドへ向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ギルドにたどり着くと、俺とルルカはひとまず、近くのイスに腰をかけた。ギルド内には、店で見た連中と同じくらいのむさ苦しいおっさん共がいた。しかし。それだけではなく、エリートそうな魔術師のお姉さんや、短剣を丁寧に手入れしている盗賊、かなりの大きさを誇る両手剣を携えた騎士などがいた。


「やっぱ強そうな連中もいっぱいいるな」


「私たちほどじゃないでしょ」


と、呑気に人間観察をする、チート転生者な俺たち。そのルルカの受け答えに「お、行く気になったか?」と問いかける。


「う~……やっぱ行かないとダメ?」


「どうしても怖いってなら、俺一人で行くよ。ただ、Zウォールが壊れた今、王都を守れるのはお前しかいないだろ? だから今のうちに、戦闘経験を積んだ方がいいと思ってな」


そう、この王都はいまや、どっかのアホのせいでノーガード状態。敵転生者がそんな頻繁に現れるとは考えにくいが、それでも対抗手段は持っていた方がいい。


「そりゃそーだけど……。まぁ、やるっきゃないか!」


ようやく踏ん切りがついたのか、ルルカは立ち上がって、拳を高々と上げた。彼女がちっこいこともあり、なんとも微笑ましい光景だった。こんな女の子が、敵に襲われ、命からがら王都に逃げて、ずっとその中で、バリケードを張って暮らしてきたのだ。そりゃ怖いに決まっている。


「ルルカはえらいな」


俺は素直な感想を述べた。ルルカはと言うと、少し照れながら「あ、あんたが連れてきたんじゃないっ……」と言いつつも、


「……ありがと」


と、感謝の言葉を述べた。


「ま、まぁ? 私チート魔術師だし? たった半年でZウォール作ったわけだし? よ、余裕よ!」


気恥ずかしくなったのか、自分を奮い立たせるように、自己暗示をかけるルルカ。だが、俺はその横で別のことを考えていた。


ルルカはZウォールを作るのに半年かかった。つまり、逆に言えばその半年間、王都は今と同じ、ノーガード状態だったわけだ。いつ転生者が乗り込んできても、おかしくはなかったはず……。


「ん? どうしたの、コータ?」


「あ、いや、ちょっとな。ルルカがZウォールを作ってる間は、誰も攻めてこなかったのか?」


「んー、そういえばそうかも。まぁ、転生者と言っても敵ばかりじゃないだろうし、その辺の転生者がなんとかしてくれてたんじゃない?」


「……うーん」


そう言いながら、俺は顎に手を当てた。ノアの証言では、「王都周辺に転生者らしき人物はいなかった」とのこと。なぜ、王都だけがこんなにも狙われにくいのか。真っ先に狙われるとしたら、ここであるはずなのに……。


そうやってうんうん唸っていると、突然、目の前に猫のような耳をつけた、子供の頭が視界に入った。その頭は、耳をひょこひょこピクつかせながら、


「君たちはクエスト申請者なの?」


と、だるそうなテンションで語りかけてきた。俺はあわてて立ちあがり、改めて、そのケモ耳子供を観察する。ウェーブのかかった、肩まで伸びる茶髪に、常に半目状態の眠そうな顔。服装は青のワイシャツにベストと、キッチリ着こなしているのが、本人のダウナーな雰囲気とはちぐはぐで、噛み合っていなかった。


そして、やけに身長が低い。また、美少女ではあるのだが、まだ幼さを残す顔立ちだ。例えるなら、小学校低学年くらいだろうか。そんなケモ耳幼女が、俺たちの目の前に立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ