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ルルカのひみつ

その後、泣き喚くルルカをなんとか慰めながら、俺たちは王都の門をくぐった。本来、転生者が入る場合は、ルルカが【通行手形】と名付けた魔法を転生者にかけ、Zウォールを通過できるようにしているらしい。だが、今回はそのZウォールが崩壊したので、普通に入ることができた。


王都は、それこそRPGを彷彿とさせる雰囲気の町作りだった。リザードが引く馬車、強そうな鎧を見に纏った近衛、なんだがめっちゃ回復しそうなドリンクを叩き売りするおばさん……。繁栄した、賑やかなその光景に、俺は少なからず感動を覚えた。


「うぅ……ひどいよぉ…………」


その横で、うわ言のようにショックを訴え続けるルルカ。ノアがルルカの背中を擦りながら、手を引く。まるで、さっきの森の中での俺とノアのやりとりみたいだ。


「おや、あそこのお店、良い匂いがしますね! ルルカさんもボロ泣きしてることですし、皆さん、一旦あの店に寄りませんか?」


「お前が泣かしたんだろーが!」


呑気に王都観光を楽しんでいるゼノンに、俺は言った。とはいえ、ここまでの旅で多少疲れていたのは事実だった。そのこともあり、俺は渋々「あの店、行くか……?」とノアとルルカに聞いた。二人がこくり、と頷いたのを見て、真っ先にゼノンが、テンションあげあげで店の中へ入っていった。それに、俺たちも倣って、次々と入店していく。


店内は、外よりもさらに賑やかだった。その賑わいっぷりは、一言で言うなら、日本の居酒屋。木製のジョッキをガンッ、とぶつけ合う音。自分たちが今までに倒したモンスターを、身ぶり手振りで自慢する男たち。そんな男たちの自慢も、美人のウェイトレスが通過する度に、ピタリと止む。その様子を見て、俺は一人、くすくすと笑っていた。


「懐かしいな……この雰囲気。小さい頃、親父に、よく近所の居酒屋に連れてってもらってたっけ……」


少し儚げに呟く俺に、同じ転生者のルルカだけが反応する。


「あー、私も一回あったなー。ジュースばっか飲んでたけど」


その返事に、俺も「そうそう」と頷く。いつか転生者だけで、生前の思い出とか語り合いたいと思った。


とりあえず、入り口から近い複数席に、みな、思い思いに腰掛ける。その時には、ルルカも少し落ち着いてきていた。


「なんか頼む?」と、ルルカ。


「ああ。この店のオススメとかでいいや」


「二人は?」と、ノアとゼノンに聞く。二人とも「じゃあ私もオススメで」と答えると、ルルカが近くのウェイトレスを呼び止め、注文した。


「エターナルドリンク四人前お願いします」


え、なにその不老不死になれそうなドリンク。それがここのオススメなのか……? 不安そうに見る俺を、ルルカがウインクで応答する。ま、同じ転生者だし、日本人の舌に合わなければ、さすがに頼まないだろう。


「なんかメニュー表にオススメって書いてあったから頼んだ」


そしてこの返答である。


「飲んだことねぇのかよ」


「え、そもそも来たことないけど」


「来たこともねえのかよ。さっきのウインクなんだったんだよ」


また一人、つっこまないといけない人間が増えたか……。ノアのふんわり天然っぷりと、ゼノンのめちゃくちゃっぷりだけでも過労死しそうなのに。


「まぁまぁ、コータ君。これでも彼女はZウォールを作った魔術師です。仲良くしておいて損はないでしょう。なんせあのZウォールを作った魔術師ですから」


「私、こいつ嫌い」


ルルカとは仲良くできそうだ。俺はそう確信した。


「あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私は木瀬 瑠流花(きせ るるか)。チート魔術師にして、《神鏡の加護》を持った、十九歳よ!」


待て今十九歳って言ったかこの小動物。


《神鏡の加護》とか気になるワードもあったけど、そんなことより「ルルカじゅーきゅーさい!」が引っ掛かっちまった。


「あの……ルルカ、先輩……」


「あ、どうしたの? 次はあなたの番よ」


ほらほら、と催促する「ルルカ先輩」。やべぇどうしよう。さんざんタメ口きいちゃったけど異世界だからいいよね?


「え、えっと……碓氷 幸太。エクスカリバーっていうチートを頂いた、その……十七歳、です……」


すると、ルルカは身を乗りだし、


「え、嘘、後輩っ!? うわぁマジかぁー。てことは私お姉さっ」


と、言ったところで突然、ルルカの台詞が止まった。そして気まずそうに着席し、俯く。


「……私、後輩の前でギャン泣きしてたんだ……」

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