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「おい、止まれよ」
ガタイのよい男たちが、複数現れた。手には、それぞれ鎌や斧を握っている。明らかに“いい人たち”ではないのが、その風貌から滲み出ていた。当然、こんな森の中、ましては夜中では、きっと誰も助けにはこないだろう。
そんな山賊たちに絡まれていた青年ーーーーー内海 零は、着ていたワイシャツのネクタイを締めると、見下すような目で山賊たちを見据えた。
「お前よぉー……黙ってねえでなんとか言えや。あ、それとも黙って金品を置いてくことにしたのかな? それなら早く、ブツ置いて消えろや。殺すぞ?」
一人の山賊が放った煽りに、他の連中も合わせて大笑いする。その響き渡る大声に、森の鳥たちは一斉に、上空へと飛び立った。青年の周りに、鳥の羽がヒラリと舞い落ちる。青年は、そのうちのひとつをそっと摘まむと、
「えい」
唐突に、羽を山賊の一人へと投げた。ストン、と気の抜けた音がなると同時に、羽を額に受けた山賊が倒れた。事態を把握しきれていない山賊たちが、口々に「おい……」と、倒れた仲間へと駆け寄る。
その山賊は死んでいた。目を大きく見開き、口を開けている。人は、自分に降りかかった運命が最後まで理解できないまま死ぬと、そういう表情のまま、逝くこととなるのだろう。
「て、てめぇ……よくも仲間ぅぶぇっ?い、??」
まず、逆上した山賊の頭が潰れた。
その次は、怒りに身を任せて、斧を振るった山賊の心臓が破裂した。
その光景を見て、動けなくなった山賊の体が、紙のように丸められた。
ッパン……ゴギッ……バキリ………グシャッ………グチュ。
耳を塞ぎたくなるような音が、あちらこちらから鳴り響く。破裂、分裂、折り畳み。本来、人間に使われるようなものではない表現が、暗い森の中で行われていた。
「ぁあ……ゆ、許して……くだっ……」
最後に残った、まだ若い山賊が、命乞いをする。震える子犬のような目で、後退りする様を見ていた青年は、つかつかとその若者に近寄り、言った。
「どう殺されたい?」
「う、うわぁああああああ! ぃ、嫌だ、死にたくない、死にたくないぃぃい……!」
必死に逃げようとする若い山賊を、青年はつまらなそうに見つめる。そして、その蒼く、柔らかい髪をワシャワシャと掻きむしると、
「もういいや」
そう言って、片手を上げた。それに合わせ、離れた距離にいたはずの若い山賊が、宙に浮く。
「あ、ああ……誰か、たす、助け……」
「こういうのはどう?」
青年が手首を少しひねった。次の瞬間、宙に浮いたままの、若い山賊の首が、ゆっくりと捻れ始めた。
ギリギリギリギリ……と、骨と筋肉の軋む音が、静かに鳴り始める。
「ぎぃぃああああっ!! いいっ、いたいいたいいた、ぃいぎぃい!あ……あが……ぁ……!」
最後の方には、声にならない声をあげ、そして。
バツン。
「ぁぇ」
若い山賊の、首がねじ切れた。
暗い森の中に、静寂が訪れた。聞こえるのは、風が木を揺らす音と……。
「つまらない……。つまらない……」
退屈を訴え続ける、内海 零の声だけだった。




