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やはり、どうあがいても

そう呼ばれた二人のヒーローは、いまだ状況をつかめずにいたが、やがて、意を決したように言った。


「なんか……よく分からないけど……お姉ちゃんっ!」


「ええ……今なら、いけそうな気がする!」


そう言って、姉妹は邪神の群れへと突っ込んだ。


――――――――――――――――


「……なにこれ、日朝(にちあさ)?」


「そういうテイストのつもりです」


テレビを無表情で見続ける俺に、ゼノンはあくびをしながら答えた。


テレビの中では、姉妹が邪神をフルボッコにしている映像が流れ続けていた。二人とも、まるでコスプレイヤーかのような出で立ちで、ちょいちょい宙に浮いたり、ピンク色の光を放ったりしている。


俺がその映像をぼけーっと見ていると、ゼノンがその後、次々にチャンネルを回した。


――――――――――――――――――


「くっ……! みんな、立ち向かうんだ! このギルドにいる全員でかかれば、きっと勝てるよ!」


『その意気です、ケティさん。エターナルドリンクを飲み続けたあなたの中には、そりゃあもうエターナルな力が貯まっています。邪神なんてエターナルドリンク(煉獄味)の比じゃありませんよ!』


――――――――――――――――――


「みんな、ミスベルから逃げるんだっ! ……大丈夫、ここは僕が残ってっ……!」


『こんなときまで残業とは、相変わらず社畜根性が抜けてませんね、松田さん。今こそおっさんの意地を見せるときです。大丈夫、目の前の絶望なんて、月曜日の会社より何倍も楽勝ですから!』


―――――――――――――――


「勇者が……ノア様がいなくても、私はお前をここでくい止めるぞ! こい、邪神共!!」


『やれやれ、邪神もバカですね。エファリス随一の剣の使い手に挑むとか(笑)。こんな絶望、騎士団長の振る剣の前では雑魚も同然。リンファさん、あなたもひとつ、ここで『勇者』になってみませんか?』


―――――――――――――――――――


「ノアー! 私の光魔法がまた違うとこ行っちゃったぁ! こんなことなら練習しとけばよかったぁー!!」


「ルルカ、焦らないで! コータたちが戦っている間は、なんとしてでも、私たちがっ……!」


『まーだその程度の絶望と遊んでたんですか? 魔術師に勇者、次元の神に超能力者までいるのに、何を舐めプしてるんですか。絶望程度がどうあがいたところで、あなたたちには(かな)わないことを教えてやりましょう』


―――――――――――――


場面が切り替わる度に、俺の仲間たちが、覚醒した力で、絶体絶命の状況を軽く捻り潰していく。


それ以降、どのチャンネルに合わせても、全て、皆、同じ展開で希望に転じていた。そんな中、ゼノンが面白おかしそうに、口角をあげながら言った。


「どのチャンネルも同じ話ばっかりで面白くないですねぇ。…………もっとも、この状況を別の意味で面白くないと感じているのが、一人いるみたいですが」


そんな皮肉を受けた、その一人―――――――アペルデゼスは、無表情のまま、言った。


「本当に、つまらないことをしてくれるな」


そしてアペルデゼスは、翼を広げ、その場から高く飛び上がると―――


「興醒めだ。貴様らは今ここで、最も深い絶望に陥れてやる」


邪神ヘルグが放ったものよりもさらに邪悪な光を、空間全体に放った。


「うわっ!?」


目が潰されかねない勢いで、黒い光が辺りを駆け巡る。なんとか手で顔を被い、薄目で見るも、見ているだけで、精神を持っていかれそうになる。


『コータ君、聞こえますか?』


いつの間にか、ゼノンが姿を消し、俺の脳内で話しかけてきた。


「聞こえるよ。てか、こんな状況でどこ行ったんだお前!」


『コータ君の中です』


「……俺の中?」


なんかそういえば、あいつの声が脳内……というより、直接心に響いてくるような、不思議な感覚がある。


「なんでフュージョンしてんだお前」


『失礼、この異世界に置いてある私のあの体と力のみでは、さすがにアペルデゼスを倒せないと思ったので。なんせ、相手は全宇宙、全時間軸、全世界線の絶望の総体ですから』


ゼノンが、初めて「倒せない」という言葉を口にしたことに、切迫したものを感じる。どうやら本当に、相手は『高次元の何か』であり、神々を手にかけたとんでもない存在らしく、その規模は、ゼノンから見ても果てしないもののようだ。


「俺の力を合わせることで、ギリギリ立ち向かえるんだな?」


『まぁ、コータ君の力なんて雀の涙くらいしかないですけど、ないよりはマシですからね』


空間内に、凄まじい風が吹き荒れる。向かい風に目を擦りながら、それでも、なんとか立ち続ける。


「じゃあ、もう本当に後がないわけだ」


『はい。これが最後になります。君のその剣で、アペルデゼスを貫くのです』


雷撃が、黒い光に合わせて、ほとばしる。アペルデゼスの笑い声が、耳が痛くなるほどに響き渡る。


「どうなっても文句言うなよ?」


汗が頬を伝うのを感じながら、笑ってゼノンに言った。


『大丈夫です、私たちならできますよ』


そして、俺の体は深くかがみこんで。


『さぁ、しっかり剣を握って、前を見て』


言われた通りに、体制を作ると。


「――――行くぞ」


『―――行きましょう』


お互いにそう言って、俺の体はアペルデゼスへと駆け出した。


最初はただ、チートハーレムな異世界を期待していただけなのに、随分な大事(おおごと)に巻き込まれちまったなぁ。


おかげで、異世界に来てから、ずっと壮絶な目に遭うし、なんなら何度も死ぬし。


こんな目に遭わせてくれたんだから、あの絶望野郎は絶対に、この手で仕留めてやる。


向かい風が、俺の頬や、腕をかすめ、傷痕を作っていく。アペルデゼスの声が、より一層大きくなる。


――――そう、これで最後だ。


こんな絶望世界、とっとと終わりにして。


みんなが笑える世界を、掴み取ってやるんだ。




そして、俺の体は、アペルデゼスに向かって、跳んだ。




――――ありがとな、相棒(ゼノン)





――――ここまで付き合ってくれたこと、本当に感謝してるぜ。





「うぉおおおおっっっっ―――――!!!」






そして俺は、色んな思いを込めて、その剣を、アペルデゼスに向かって突き立てた――――――






「くらいやがれっ! これが、聖剣エクス……!!」



『これが、【ゼノンセイバー】の一撃ですっ!!!』






ふぇ?



ふと、手元を見てみるとそこには、かつてのガラクタ武器、『ゼノンセイバー』が握られていて。




そして俺はいつの間にか、ゼノンによって思いきり「ゼノンセイバァーっ!!」と叫ばされていて―――――





……って、こんな一番大事な時になにしてくれてんだお前はぁあああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!!!!!



―――――――――――――――――












\アワレデスネー/

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