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異世界ち〇ぽ  作者: ナ王
2/17

 あれから、僕たちは、お互いが、正也さんの身体の一部であったことを確認した。

 右手姉さんは三か月前に、こっちの世界に来たらしい。

 正也さんの右手は、その頃もあったけど、転生の時間軸にはズレがあるのかな?

 この辺は考えても分からなかった。

 そうこうしているうちに、すっかり日も沈み、肌寒くなってきた。

 右手姉さんから予備の服を借りてなかったら、死なないにしても、厳しい状況に追い込まれていたに違いない。

 姉さんは手際よく焚き火を起こすと、リュックの中から取り出した肉片を小枝に突き刺し、炙り始めた。

 ゴクリ……肉のこんがり焼ける良い匂いが漂う。思わず喉がなります。


「……そうか~、大変だったな~。ほい、焼けたぞ! 食え」

「えっ? いいんですか?」

「あたり前やろ、お前は弟みたいなもんや! 食えや」

「あ、ありがとうございます! あ、あち!」

「きーつけや、端っこもたなあかんで」

「はい!」


 お、おいしい! すっかり腹ペコになっていた僕は、遠慮なく串肉を平らげていく。

 想像では、右手姉さんは、聖母のような人だと思っていたけど、実際に見ると、大阪弁の不良少女みたいな人だった。でも、僕には分かっているんだ。この人の優しさが!


 驚いたことに、姉さんはこの世界について、色々なことを知っていた。

 ここはやっぱり異世界のようで、名はカーデシアというようです。

 僕が住んでいた地球と似ている点も多いけど、違いもありました。

 地球では人間が王者だったけど、ここの王者は人間ではありません。

 ここでは、人間は数ある有力種族の一つでしかなく、魔族、魔物、亜人、様々な生き物が地上を闊歩しているのです。

 魔族や亜人の力は、人間を遥かに凌駕していて、人間はその数と狡猾な外交戦略によって、なんとか勢力を保っていますが、その未来は暗く、絶滅危惧種のような存在だということです。

 僕たちがいるこの場所は、この世界の中央部、ナラの樹海という場所でした。

 姉さんから魔物が闊歩するこの森の事情を聞いて、背筋が寒くなってしましました。


「右手姉さんは、ここに来て三か月なんでしょう? 何でそんなに色々知っているの?」


 姉さんは、空を指差して答える。


「あれや、脳から聞いたんや」

「えっ! 脳兄さんもここにいるんですか?」

「んー? お前は聞こえないんかい? 脳の話し声が」

「話し声?」


 姉さんが脳兄さんのこと話してくれました。兄さんも大分前に異世界に転生したようです。ただ、兄さんは僕らと違って受肉はせず、精神体? となって宙を漂っていたそうです。


「あいつの能力はな、全知や。

 よー分からんけど、アカシックレコードとやらにアクセスして色んなことを知ることができるねんと。

 それで、うちに必要な知識を教えてくれたんや。あいつがおらんかったら、ヤバかったでマジで」


「へー、すごいなー、脳兄さんは」

「ちょっと、待ってな……」


 姉さんが、額に指を当てて、ブツブツしゃべり始めた。


「うんうん、ほーか、ほーか、でも、チン〇にも繋げなあかんやろ……かー、せやから、言うとるやんけ! もう、ええわ! とにかくはよせーや」


 怒ったような声を出し、指を離した。


「脳の奴もな、今、いっぱいいっぱいみたいでな。チン〇との通話回路を繋げてる余力がない言うてるわ。まー、そのうち、連絡あるやろ。気長に待っとき」


 姉さんの話によると兄さんの全知という能力は、全てを知るというものらしいのですが、そう簡単なものでもないといいます。

 例えるなら、図書館で本を借りる行為に近いということです。従って本を借りるだけでは、知識は身につきません。本を読む必要があります。読むと言っても、自ずから限界もあるだろうし、本当の意味での全知に辿りつくことは、ないのかもしれないとのことです。ともかく、今は、その読書に忙しく、僕に構っている時間はないということなのです。


「はい。でも、嬉しいです! もしかして他の器官(なかま)も異世界に来ていたりするんですか?」

「いや、知ってるのは、脳とお前だけや」

「そうですか……ところで能力ってなんですか? この世界では、そんなものがあるんですか?」


 右手姉さんがニヤリと笑う。


「いや、能力者は、脳やウチ、お前みたいな特別な人間しか持っておらんよ」


 そう言うと姉さんは、そばに落ちていた石ころを拾う。


 ヒュン! ズドン!!


 何気なく投げた石ころが、弾丸のような速さで飛んでいき、木の幹に当たって破裂した。

 人に当たれば、殺してしまいそうなほどの恐ろしい威力だ。

 唖然とする僕に。


「うちの能力は、これや。この手に掴んだ物を武器に変える能力、『器用な利き腕』や。脳のサポートと、この能力が無かったら、ほんま御陀仏やったで、しかし」


「す、すごいです! 僕も何か能力があるんでしょうか?」

「たぶんな、でもこればかりは、自分で見つけるしかないで」

「脳兄さんは分からないですか?」

「分かるんやろうなー、でも膨大な情報からそれを探し出すんやで、いつになるんか分からんわ。自分で探した方が早いで」

「そうですか、でも、ワクワクします。僕も姉さんみたいにかっこいい能力がいいなー」

「ふふふ、この世界はな、基本的に、暗くなったら寝るんや、今日はもう寝て、明日から精出せや」


 姉さんはそう言って、僕の頭を撫でてくれた。

 エヘヘへ、嬉しいな。やっぱり姉さんは優しい人だ。

 僕は、頭に乗せられた手を握った。


 途端、頭の中に不思議な声が響いた。


 《強制妊娠レベル1:雌ト接触シマシタ。妊娠サセマスカ?》


 何だ、これ?


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