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短編

確信犯

作者: oga
掲載日:2018/03/07

「600円、丁度になります」


 銀田狼(ぎんたろう)は、コーヒーとタバコ、うまい棒一本を購入し、コンビニから出た。

道端で7分程タバコを吸い、コーヒーのカンに吸い殻を入れる。

そのまま帰社して席に着くと、丁度就業のベルが鳴った。


「お先ですー」


「ちょっと待て」


 引き留めてきたのは上司の今一幸之助。


「お前なぁ、狙い澄ましたように5時に帰って来るの、やめろや。 もう少し前に帰って来て、営業報告せぇや」


 チラ、と時計を見る。


(……チッ、電車に乗り遅れたか)


 この上司の説教だけは、銀田にも読めない。

毎回、これのお陰で狙った電車に乗れないことに、苛立ちを覚えていた。


(やむを得んな、殺すか)


「おい、聞いてんのか!」







 銀田は、会社付近にラーメン屋がオープンする前日に、仕込みを開始した。

マンションの屋上にやって来ると、スパナをふちのギリギリに置く。


(スパナの重量と、ふちに接している面積、この付近の昼間発生している振動数を公式に当てはめると……)


 ノートに走り書きし、計算していく。


(……12時15分36秒に、このスパナは地面へと落ちる。 となると、6秒時間を稼ぐ必要があるな)


 





 翌日、片方の靴を緩め、出社する。

いつも持ってきている弁当は、あえて持ってこなかった。

そして昼の12時ジャスト、行動を開始した。


「しまった! 弁当を忘れてしまった」


「何だよ銀田、俺のおにぎり一つやろうか?」


 同僚を無視して、そのまま今一の所に向かう。

今一も丁度、席を外した所だった。


「今一さん、お昼ご一緒しませんか?」


「なんや、珍しいこともあんねんな。 でも、お前とはいかへんで」


 銀田は、耳打ちするように今一に言った。


「新しいラーメン屋がオープンしたんですよ」


「な、何やて! それを先に言わんかいっ」


 今一は、ラーメンの酷評レビューをつけている。

ラーメン屋がオープンしたとくれば、評価せずにはいられないだろう。

二人は、会社を出た。


(このままラーメン屋に向かうと、スパナが落ちる6秒前に、マンションを通過してしまう。 だが)


 狙い通り、靴ひもが外れる。


「あっ、靴ひもが……」


「何やねん、はよせーや」


 ピッタリ6秒で靴ひもを結び直し、歩き出そうとした時だった。


「あ、俺の靴ひもも外れてんじゃねーか」


(……チッ)


 今一はモタモタと靴ひもを結ぶ。

12秒かかってしまった。


「今一さん、ラーメン屋はオープンしたばっかりなんで、並んでるかも知れません。 少し急ぎましょう」


「ええやん、ゆっくり行こや」


 しかし、銀田は走り出した。


「な、何やねん、せっかちなやつやな」


「今一さん、早く!」


 丁度その時、スパナがふちから落ちた。

スパナは速度を上げ、落下していく。


(あと2秒、1……)


 スパナは見事、銀田の頭上に落下した。





終わり



 



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― 新着の感想 ―
[良い点] 少しだけ怖いですけど ゆっくりと読める作品で 楽しかったです。 [一言] えっと・・・ 私の深読みなのでしょうか?? 秒単位で行動出来る人が、自分の仕掛けに 掛かるのは偶然? それとも、自…
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