悪夢の始まりなんだよ
側妃視点になります。
ついに雪花のターン!なかなか酷いです。
ようやく待ちに待った謹慎が解ける日。夫が数人汚職がばれて捕まったりしたが、我が家に問題はない。捕まったのは下っ端だ。
今日のよき日に夫の一人がパーティを開いてくれた。謹慎前に私が見初めた若く美しい夫だ。
「…お待ちしておりました、姫」
私の寵愛を得ようと、夫達が火花を散らす。今回のエスコート役は決まっているわ。
「スティーブ、レイヴン」
スティーブは私に手紙を届けてくれた騎士。レイヴンは今日のパーティを開いてくれた夫だ。
彼らに手を預けてゆったりと歩いた。今日のパーティの主役は私。私はやはり、華々しい場にいるべきなのだわ。
パーティ会場にはたくさんの女性達がつめかけていた。私のために集まったのだ。
女性達が次々に心配していた、具合はどうか、お元気そうで安心しました等、労りの言葉をかけてくれる。
「私は大丈夫よ、ありがとう」
女性達に挨拶をしてまわる。そこに、あの忌々しい小娘もいた。
「ごきげんよう、お義母様」
お前のせいで私は謹慎するはめになったのよ?よく顔を出せたものだと思ったが、周囲は何故か小娘を気遣う。
この小娘は自分を子供だと偽り、騙していたのよ?何故周囲がこの女を気遣うのかが解らない。
「妃殿下、姫様は妃殿下と仲直りがしたいそうですの」
「ですから、わたくし達がお誘いしましたのよ」
「妃殿下はお優しいですもの、きっと許してくださいますわ」
私の友人であり、穏やかな気質の貴族夫人達が優しく話しかけてくる。彼女達はこういう時に厄介だ。善意の押しつけほど厄介で面倒なものはない。
「そうですわよね、妃殿下は『お優しい』ですものねぇ」
「ええ、ケビン様を獣人だからなんて理由で冷遇したりなさらないわよねぇ」
ねっとりと嫌みを言う高位貴族の夫人達にイラッとさせられた。こちらは正確に状況を読み取った上で言っている。
「…そうね」
「わあ、嬉しい!ありがとうございます、お義母様!そういえば、私お腹に子供が3人も居るんです!」
「………そう、オメデトウ」
流産すればいいのに…ああ、そういう毒はなかったかしら?
「しかも、女の子が二人!」
「………………………え?」
何を言われたのかわからなかった。オンナノコガフタリ?周囲もざわめき、口々に小娘へ祝福の言葉を与える。誰も私を見ない。パーティの中心は完全にあの小娘だ。
憎い。私のパーティを横取りした。
許せない。私も頑張ったのに、できたのは息子一人だけだった。もう子宝は年齢的に難しい。
苦しい。私の居場所を奪うやつ…あの女みたいに……ああ、そうか。消せばいい。あの女みたいに消してしまえばいいだけだ。そうだ、そうすればいい。
私はそう考えたら気が楽になった。パーティの主役があの女なのは気に入らなかったが、そうしていられるのは今だけ。そう思えば耐えられた。
「お義母様のために、ケーキを作りましたのよ」
「あら、そう」
私に相応しい美しく豪華な菓子。その特等席に立った瞬間、ソレは現れた。
「あはははははは!」
耳障りな笑い声。そう、葬ったはずの憎たらしいあの女!
「ひっ!?」
血塗れのあの女が…!
「どうなさいましたの?」
「え……?」
見えていないの?今にも私に触れようとするあの……しかし、周囲の反応から、アレは見えていなかったようだ。
「………え?」
いない?
確かに声がしたわ。
いたのよ、目の前に!
そう叫びたかったが、私がアレを殺したと思われないようにしなくては。
「………疲れているのかしら」
人々がざわめく。愛する陛下と王太子が来たようだ。陛下に似ていて王太子は好ましい。あんなつまらない王太子妃にあげるのは勿体ないぐらいに。王が死んだら王太子の妻になるのもいいかもしれない。
笑顔を向けようとして、失敗した。
「ああ、お義母様に紹介しなくてはなりませんわね。新しいお義母様ですわ」
は?
頭がまっしろになった。
そこには、さっき見た血塗れの女と同じ顔。だが、同一人物だなんてあり得ない。若すぎる。
「彼女は私の義姉ですの」
「ケイシィ=クリオです」
別人、と言うには似すぎている。
だが、本人と言うには若すぎる。
「義姉様はなんと、あのケイティ様の姪なんだそうですわ。面影がありますでしょう?陛下がどうしても妻にしたいと望まれましたので、我が公爵家に養子縁組しましたの」
「………は?」
クリオ公爵家に養子縁組された?それは、つまり…
「もうすぐ私の義姉様は正妃になりますのよ!楽しみですわ!」
「せい、ひ?」
「さらに、新しいお義母様は懐妊中なんです」
「…………え?」
ケイシィとやらが幸せそうに腹を撫でた。
せいひ?
かいにん?
陛下は一度も私に触れなかった。閨では陛下は本を読むだけ。しかも、渡りは一度しかなかった。だって、これ以上子供は要らないって言ったじゃない!!
「いやあああああああああ!!」
半狂乱で泣き叫んだ。
どうして、どうして、どうして!?
「いやあああああああああ!!」
夢よ!これは夢に違いないわ!!頭をかきむしり血が出たが、気にしていられない。
「いやあああああああああ!!お前!あの邪魔な正妃も!下賤な獣女も始末して、陛下には私だけなのに!!殺してやる、殺してやる!殺してやるぅぅぅ!!」
そして、私の意識はようやく遠のいた。良かった、やはり夢だったのだわ。
あら?ここはどこ?ベッドが固いわ……何故私の手足に……枷がついているの?
まだ、この悪夢は続くの??




