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お城に着いたんだよ

 朝食は野菜スープとフレンチトースト、昨日作ったソーセージ。皆さん泣きながら食べてました。なんでも蜂蜜は稀少でめったにいただけないらしい。皆さん幸せそうに食べてました。


「姫様は本当に優しいな…皆にも蜂蜜を分けてやるなんて…」


「おいしいものは皆で食べるともっとおいしいんだよね、プクプク君」


「うん!おいしいんだよね~。姫様のふれっちとーす、すんごくおいしい!!」


 プクプク君たら食べかすまみれです。フレンチトーストだよと言いつつフキフキしてあげた。


「く、くーん…………」


 食べかすまみれなおっさんが、チラッチラッとこっちにアピールしている。ダメかな?ダメかな?とうかがう視線に負けた。


「おっさんも拭いてあげるね」


「きゅうううん………はっ!?すすすすまない!かたじけない!」


 最初甘えて素直に拭かれていたおっさんだが正気に戻ったらしく、アワアワしていた。おっさん可愛い。マジかわゆす。ちょっと抱きしめたらダメかしら…チラッと私を見ては恥じらうおっさん、マジ可愛い。


 私がまた暴走する前に、変態が声をかけてきた。危なかった。またおっさんにスリスリしちゃうところであった。変態のおかげでテンションがあっという間に下がり、平静になった。

 変態も拭いてもらいたかったらしい。


「イヒヒッ、ひめさまぁオレは?」


「自分で」


 べしっと顔面に手拭いを投げてやった。


「ちぇ~、やっぱひめさまでもキモいかぁ」


 変態は素直に投げつけられた手拭いで顔を拭いていた。んん?なんだか喜びつつもガッカリしているような??キモいって、鱗?


「マゾい発言がキモいんであって、鱗はキモくない。綺麗だと思う」


「………は?」


「鱗はキモくない。綺麗」


 もう1回言ってからそっと鱗に触れたら、ひんやりとしていた。そして、変態が真っ赤になって跳んだ。


「はああああ!?んなっ!?シャアッ!?ふしゅうううう!!」


 そして走り去った。変態よ、どうした??


「サズドマが鳴いた!?」

「姫様すげぇ!!」

「あの変態が逃げたぞ!!」


「……え?」


「姫様、普通の女性は蛇が嫌いです。あいつは母にも愛されず、普通の人間からも男女問わず蛇獣人だから忌み嫌われてて…」


 シャザル君が説明してくれた。


「うん…」


 あいつも辛い人生を歩んできたのか。




「結果として、何をどう間違ったのかむしろ蔑みに快感を覚える男になりました」




「台無しじゃあああああ!!いやむしろマイナスをプラスに?いや、マイナスを違った方向にマイナスにしてどうすんだああああ!!」


「ついでに人に加害をすることでも快感を得られるようなので、姫様は適度にしばいて常に奴の上の立場だと教えこんでおくことをおすすめします」


「サドもイケる口だったああ!?」


 朝から変態のせいで疲れました。








「さて、では行きますか。姫様は「イヒッ、お~い~で~」


「絶対やだ!おっさん!おっさんがいい!おっさんと乗る!!おっさん、おっさぁぁん!!」


「………だそうだ。姫様、失礼」


 おっさんは私をひょいと抱っこしたまま軽々と馬に跨がった。綺麗なお馬さんだね。私は安心しておっさんにひっついた。ここならば変態も手を出せない。


「では、行くぞ!!」


『おう!!』


 馬がいっせいに飛んだ。




 馬が、いっせいに空を飛んだ!??



「!??」



 異世界の馬は、空を駆ける生き物でした。


「お、おっさん!?空!?馬!?」


「姫様は馬に乗るのが初めてなのか?」


「日本の馬は地面しか走りません!!」


「そうなのか、不便だな」


 異世界の馬は空を駆けるのが普通で、飛べないやつは処分されちゃうんだとか。世知辛い…


「農耕馬にすればいいのに」


「農耕馬?」


「畑を耕したり、荷運びする馬」


「それはいいかもしれんな」



 ようやく余裕が出てきた。風をきって駆ける馬は美しい。


 そして、やはりここは異世界なのだと知った。美しい森、空に輝く川、消えない虹…


「それにしても、このお馬さんは美人だね」


「ああ、羽も美しいぞ。邪魔だから出したがらないが」


「……羽?」


「鳥のような羽がある」


「見たかったなぁ、綺麗だろうなぁ…」


 白い天馬(ペガサス)なんて、素敵すぎ…ばさりと羽ばたく音が聞こえた。


「姫様へのサービスのようだな」


「うわあああ…綺麗!すっごくカッコいい!!」


 お馬さんがどや顔をした気がした。そして、次々と羽を出す馬が増えていく。


「うわあああ、カッコいい!!綺麗!!しかも速い!!」


 明らかにスピードが上がってますよ?


「むう……馬にも姫様の魅力が通じているのか、速いな。これなら昼前には着いてしまうだろう」


「良いような悪いような…でも、お馬さん達、ありがとう!ペガサスなんて初めて見たから、すごく嬉しい!!」


「…姫様」


「ん?」


 耳もとでこそっとおっさんにささやかれた。


「…もし、貴女が帰れなかったら…末席でいい。触れるのを許さなくてもいいから……貴女の夫にしてもらえないだろうか」


「へ?」


「返事は…今すぐでなくていいが、覚えていてくれ」


「うん?うん」


 えっと?つまり?私は、おっさんに、夫にしてもらえないだろうかと言われた。






 つまり、プロポーズ!??






「おっさん、はやまったらダメだよ!私なんかにはもったいないよ!」


「…高望みなのは理解している」


「いや、そうでなく!」


 よく考えたら現在密着していて逃げ場がない。逃げたら落ちる。落ちたら死ぬ。しかし、私ばかりがドキドキするのは気に入らない。おっさんも動揺すべきだ。


「…私が選ぶなら、夫は一人だけです。私に愛される覚悟はありますか?力の限り愛でますけど。こないだみたいにぎゅーしたり、色々しまくりますけど」


「いろいろ……ぬああ!?」


「きゃあ!?」


 おっさんがものすごく動揺したので危なかった。しかし、おっさんの心臓がものすごくバクバクしてたのを聞けたので満足です。

 ちょっとバランスを崩したものの、お馬さん達ががんばってくれたので昼前にはお城に着きました。

 プクプク君にお願いして、お馬さん達にリンゴをあげてからお城に入ったのですが…


「騎士様達、お疲れ様でした。さあ姫様、いらしてください」


 冷たい目をしたイケメンは、騎士さん達に口だけのお疲れ様を言って私に手をさしだした。アラームがわずかに鳴る。この人は、ダメだ。


「……おっさん…おっさんからはなれるの、嫌です!おっさんが居なきゃ嫌です!!」


「姫様……姫様はいきなり連れてこられ、魔物に襲われて怯えている。俺の側から離れるとこのように泣くのだ」


「チッ…仕方ありませんね。では団長殿だけついてきてもいいですよ」


 舌打ちしやがったぞ、このイケメン。


「じゃあね、姫様」

「またねぇ、ヒメサマ」

「お気をつけて」



 騎士さん達に見送られつつ、お城に入ることになりました。

 ようやくお城に着きました。


 変態はSもMもイケる変態ですが、直球に弱いです。実は誉められると逃げます。変なとこがピュアです。

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