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うちの妻は健気で可愛すぎるんだよ

 ケビン視点になります。

 全力で仕事を終わらせ、全力疾走で帰宅した。すでに深夜だが、城に泊まるという選択肢はない。雪花は寝ているだろうが、彼女の隣で眠りたいのだ。


 深夜なので静かに移動していたら、自分の愛する匂いに気がついた。


「ん…」


 最愛のつ……妻、が玄関で毛布にくるまり眠っていた。


「雪花?」


 待っていてくれたのか。どうしよう…叫びながら走り出したい衝動と全力で戦う。ソッと温かい頬に触れただけで…幸せになれる。


「ぼっちゃま」

「アオン!?」


 じいはいつの間に背後にいたんだ!?まったく気配を感じなかったぞ!?


「若奥様はぼっちゃまに最初におかえりなさいと言うために、ここでお帰りをお待ちするのだとおっしゃいまして…眠ってしまわれました」


「…そうか…」


 つい尻尾を出してパタパタと振ってしまう。くうぅ…俺のつつつ妻…はなんと愛らしくて健気なのだ…!

 起こさないようにそっと抱き上げた。表情をゆるめて俺にすり寄るのがまた可愛い。きっと雪花は妖精さん…いや、奇跡の生き物なのだ。

※雪花の可愛さでケビンは混乱している。


「…おやすみなさいませ、ぼっちゃま。じいはぼっちゃまに世界一素晴らしい若奥様が嫁いでくださり…嬉しくてたまりません。絶対に逃してはなりませんぞ。若奥様ならばきっと、ぼっちゃまを世界一幸せにしてくださいます」


「…そうだな…いや、違うな」


「は?」


「…家族みんなで幸せになるんだ。俺だけじゃない。雪花が来て、皆の笑顔か増えた。じいも、よく笑うようになった。いつもありがとう、じい。おやすみ」


「ふぐっ……は、反則ですぞ…」


 じいはよく嬉し泣きをするようになった。マサムネも…大人も子供もこの腕で安らかに眠る彼女が来てからよく笑うようになった。

 特に子供達は撫でようとするとよく怯えていたが、今では笑顔で頭を差し出す。彼女はいつだって抱きしめてくれると知っているから、両手を広げて駆け寄るようになった。

 少年達も彼女に誉められて照れ臭そうに笑っている。

 大人達にも常に感謝を忘れず、小さな事でもきちんとありがとうと彼女は笑顔で礼を言う。


「雪花…俺は君がいてくれるだけで幸せだ」


 じわじわと胸があたたかくなる。こんな幸せ、知らなかった。

 これ以上の幸せは無いといつも思っているのに、雪花はどんどんもっともっと俺を幸せにしていく。これが夢なら覚めないでほしい。一生彼女と過ごす夢がみたい。


 いや、一生彼女と過ごしたい。これは夢なんかじゃない。彼女を愛し、慈しんで幸せにしたい。


 枯れることなく次から次へと溢れる雪花への想いに翻弄されながら…そんなことを考えて雪花を俺の部屋のベッドに下ろし………


「ん…やだ…」


 雪花は下ろされてくれず、俺にしがみついている。ナニコレ。超可愛い。


「んん…」


 俺の首にしがみついて必死にイヤイヤしている。ナニコレ、超可愛い。


「し、しかたない…」


 と言いつつ尻尾が布団をバフバフ叩きまくっている。雪花に甘えられると嬉しいからしかたない。雪花を抱き抱えて添い寝すると、安心しきった表情になった。ナニコレ、俺の妻が知ってたけど可愛い。いつか妻が可愛すぎて死ぬんじゃないだろうか。悶えつつも雪花という幸せの塊を堪能した。


「…そろそろ…」


 とりあえず雪花はリラックスしたし、寝間着に着替えるために離れようとした。しかし、また雪花がしがみついた。


「や…」


 ナニコレ、超可愛い。まるで片時も俺と離れたくないと言われているようだ。

※ケビン、多分正解。


 結局離れられないので、添い寝したまま服を脱いで下着姿で寝た。全部脱いで獣化して寝るのも考えたが、また恥ずかしい思いを

しそうだからやめておいた。彼女いわく、ぱんつは大事らしいし。


 ふと思いついて、半獣化してみた。すると雪花は幸せそうに毛皮にすり寄ってくる。

 人化する。何故か胸を揉まれたような…やはりすり寄ってきた。だが、素肌な分やましい気持ちになりそうでまずい。

 今日は少し冷えるし、毛皮の方がいいだろう。再度獣化して、柔らかく愛しい雪花をそっと抱きしめて眠った。



 翌朝、雪花はまだ眠っていた。起こさないように気をつけて、愛らしい寝顔を眺める。つい尻尾が出て布団をバフバフ叩きまくってしまう。


「ん…けびん……?私…」


 雪花が目を覚ました。寝姿も愛らしいが、起きている彼女の方が可愛い。


「…ただいま、雪花。待っていてくれてありがとう」


「そっか…寝落ちしたか…おかえりなさい、ケビン」


 俺の胸にスリスリする雪花。ああ、可愛い。


「ケビンの匂い…」


「!??」


 しまった!昨日は風呂に入ってない!く、くさいかもしれない!身をこわばらせたがどうしていいかわからない。


「いい匂い…」


「アオン!?け、獣臭くないのか!?」


「え?うん。どっちかっていうと人間の匂いだねぇ。獣っぽくない。そういや、昔向こうの世界では『いい匂い』と感じる相手は遺伝子的にも相性がいいって話を聞いたことがあるなぁ」


 イデンシがナニかは解らなかったが、雪花と相性がいいのは嬉しい。


「…毛皮が合う相手とか、運命の番みたいなものか?」


「?」


「毛皮が合うというのも運命の番も、理由なく惹かれあうことだ。正に俺にとっての雪花だな」


 おや?雪花が顔を隠してしまった。機嫌を損ねてしまったか?


「も、もちろんそれは最初だけだぞ!?今は本能的な部分より、雪花の内面を愛している!俺に身を委ねて甘えてくれたり、気遣ってくれたり…おかえりを言うために待っててくれる雪花が愛おしい。いや、愛おしいなどという言葉では足りな「ケビン、ストッブ!!」


「?」


 雪花は真っ赤になっていた。どうしたのだろうか。何やら破壊力がとか、モエシヌとか呟いていた。とりあえず見苦しいだろうから服を着る。


「ケビンが好きすぎて辛い。どストレートキツい。心臓がパーンしそう」


「?」


 よくわからないが好きだと言われて嬉しかった。起きたら何故下着姿だったのかと言われて、正直に説明したらまた真っ赤になっていた。


「お、起こしてよ…」


「?いや、よく寝ていたからな。それに、雪花に離れたくないと言われているようで嬉しかったんだ」


「…そりゃ、そうだよ。ケビンと寝たくて待ってたんだから」


 視線をそらして真っ赤になって…俺の上着の裾をそっと掴む妻の…そうか、これが破壊力か!確かに心臓がパーンと破裂しそうだ!しかし、俺が彼女を同じ気持ちにさせた…のか。




 ああ、駄目だ……アオオオーン!!ルオオオオン!!




 激しい衝動が爆発した結果、俺は朝から鳴いて走り回るのだった。雪花からの愛おしい攻撃に慣れる日は、多分来ない。

 雪花が可愛すぎて辛い…だが、幸せだ…(*´ェ`*U)

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