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可愛い酔っぱらいなんだよ

 深夜の酒場は死屍累々…つぶれた酔っぱらいの巣窟だった。


「せっかぁぁ…しゅきらぁぁ……」


 私は酔っぱらったケビンにベタベタされていた。どうしよう。可愛い。

 とりあえず自宅にテイクアウトしたいのだが、魔力は使えないし…と思案していたら、迎えが来てくれた。


「うわ、酒くせー!」


「うん…あ、姫様!」


 シロウ君とスノウは迎えに来てくれたらしい。シラフのサズドマが他の酔っぱらいはどうにかすると言ってくれたので、スノウに転移してもらい帰宅した。


「助かったよ。流石にケビンは担げないし」


「だよなぁ。しかし、団長がこんなにべろんべろんになったのは初めて見たよ」


 シロウ君がケビンを見る目は優しい。ケビンは相変わらず私に甘えている。


「セツ姉がいるからかな。おめでとう、セツ姉」


「なら、嬉しいな。ありがとう、シロウ君」


「あの…おめでとう、ございます」


「ありがとう、スノウ」


 そんな話をしていたら…ふと、人数が足りないのに気がついた。


「あ、じい達を置いてきちゃった!」


「ありゃ…スノウ、もっかい行けるか?」


「問題ないよ。場所も覚えたし」


 シロウ君達はまた転移した。私はこのでっかい甘えん坊をどうにか寝室に運ばねばならない。


「ケビン、眠たいからケビンのお部屋で寝たいなぁ…」


「せっか、いっしょにねるにょか?」


「え?うん」


「くぅん…わきゃった……」


 ケビンは私を抱き上げると、あっさり寝室に運んだ。そして、何故かクッションを私の周りに敷き詰める。


「………巣作り?」


 まるで巣みたいだ。ケビンはせっせとクッションだけでは足りなくなり、服も積む。


「くぅん…せっか…しゅきら…あいしてる…」


 満足いく高さに積み終えたケビンに、優しく押し倒された。いやいや、私ウェディングドレスのまんまだよ!着替えたいし、お風呂!しかし、甘えてくるケビンが可愛すぎてレアすぎて、拒否できん!


「せっか、せっか、しあわせらぁ……」


 胸元にスリスリするケビン。もふもふな耳を撫でたら素直にすり寄るケビン。ヤバい、見た目おっさんなのに無邪気でかわゆ過ぎる。しかし、クンクンはしないで欲しい。汗臭いとか言われたら泣くぞ。


「きゅうん…くぅん…」


 尻尾もパタパタしていて嬉しそうだ。私もケビンの首に顔を埋めた。しあわせ~。しばしケビンを堪能する。


「えっと…服、シワになるから脱ごうか。汗かいたし、お風呂に入ろう」


「せっかもいっしょか?」


「……………はい?」


「いっしょなら、はいりゅ」


「……………………はい??」


「おふりょ、いっしょ。こりぇはゆめらんらろ?らから、しゃめるまでせっかとずっといりゅんだ……らめか?」


 どうやら、ケビンの持病である『幸せ過ぎ…そうかこれは夢だ!病』が発症したようだ。けどまぁ、いっか。だから甘えん坊だったのね。納得した。


「…そうだよ。夢だから、ケビンの望みはなんでも叶えてあげる」


「そうか…いいゆめら……なら、このまましたい。せっかはいつもおふろにはいらないとさわらせてくれないから…」


 うん、いきなりハードルたっけぇな!

 しかし、女に二言はない!!


「いいよ、おいで」


 両手を伸ばすと、ケビンは嬉しそうに私に抱きついた。

 そして、ケビンは色々我慢していたことが発覚。私は羞恥心と体力的な意味でヘロヘロになり、いつの間にか寝たというか…気絶した。







 翌朝、目を覚ましたらうちの可愛いおっさん…旦那様がものすごーく挙動不審だった。


「おはよ…」


 ヤバいな。起きれない。声もかすれてる。どうしようかなと考えていたら、急に体が楽になった。どうやらお腹のベイビー達が癒してくれたらしい。感謝すると、笑い声を感じた。伝わったようだ。

 ちなみに、妊娠中の性行為だが異世界では推奨されている。体液による魔力交換により子供が丈夫に育つからなのだとか。何そのエロゲ設定…とお医者さんに言わなかった私を誰かほめてくれ。


 さて、思考が盛大に脱線したがケビンはかなり酔っても記憶があるタイプらしい。


「……あの、昨日…」


「結婚しました」


「そこは、覚えてる」


 呑んでなかったしね。


「酒場で酒盛りしました」


「そこも、覚えてる」


 そこから呑んだからね。


「シロウ君とスノウが迎えに来て帰りました」


「…そこも、覚えてます」


 顔色が悪いね。何故敬語なんだろ。まぁ、問題はそのあとだもんなぁ。


「ケビンが謎の巣作りをしました」


「…………覚えてます」


「いい夢だと言うので、夢のふりしてケビンを可愛がりました。ケビンの隠された願望を知れて良かったです」


「アオオオオオン!!ワオオオオオン!!ルオオオオン!!」


「ケビィィィィン!??」


 どうやら羞恥心が限界だったらしく、全裸で窓をぶち破り逃亡したマイダーリン。割れたガラスはベイビー達が直してくれた。ありがとう、ベイビー達。

 しかしぱんつは…いや、完全に狼になってたからいいか…いい、のか?


 どう頑張っても追いつける気がしないのでさっさと着替えたのだった。しかし、マイダーリンは朝食になっても戻らなかった。全裸でお縄になってないことを祈っておいた。

 久しぶりに雄叫び&逃亡するケビン。変質者としては通報されませんでしたが、あまりのスピードに魔物と間違われて通報されました。

 素早いのでお縄にはなりませんでした。

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