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酒盛りなんだよ

 結婚式終了後は宴会になった。会場は騎士団ご用達の酒場らしい。

 経費については異界の姫様嫁入り支度金から出るとのこと。税金の無駄遣い…と思わなくもなかったが、今まで不遇な扱いを受けまくった騎士団へのねぎらいと思えばいいかと特に異論はなかった。

 王様達はお仕事があるから城に帰ったというか連行された。今度お酒を差し入れしよう。




「団長!おめでとうございます!」


 皆からお祝いしてもらった。ケビンも嬉しそうだが、次々酒を注がれている。明日は大丈夫なのかな?


「団長~、よかったれすねぇ…よかったれすねぇ…」


 ガウディさんは完璧に出来上がっているらしく、お店の壁に語りかけている。


「姫様もいかがですか?」


 副団長様からお酒をすすめられたが、私は首をふった。


「こっちではどうだかわかりませんが、私の世界では妊婦に飲酒と喫煙はダメなんです」


「おや?そうなのですか?理由をうかがっても?」


「どちらも体内で子の体に悪影響を及ぼすからです。妊娠中は母体と子はへその緒で繋り栄養など必要なものを子に与えています。それゆえ母体が毒素を入れれば子にも悪影響が出るのです」


「なるほど。では果汁ならよろしいですか?」


「ありがとうございます」


 副団長様からジュースをもらってチビチビ飲みながら周りを見渡してみた。みんなが笑顔で、祝福してくれている。


「…団長はずっとその身を犠牲にしておりました。私は侯爵の次男でしたから、さほど風当たりは強くなかったのですが他の団員への扱いは酷いものでした。団長は常に矢面に立ち、我らを…国を守っておりました」


「うん」


「何度貴族を殴りたいと思ったことか…!姫様には本当に感謝しております。予算だけでなく、あの人が現実を受け入れられないぐらいの幸せを与えてくれて」


「そこはお互い様かな。私も貴方に…貴方達に感謝してるよ。ケビンを支えてくれてありがとうございます。これからも、よろしくね」


「姫様…!団長共々、一生ついていきます!!」


 副団長さん、顔色が変わらず酔っぱらうタイプだったらしい。泣き出してしまった。困惑していたら、シャザル君に話しかけられた。


「姫様、おめれろ~ございまひゅ~」


 シャザル君はべろんべろんだ。大丈夫か?


「シャザル、水飲め」


「やら~」


「……………………」


 サズドマがシャザル君の世話を焼いている。明日はブリザードか?


「シャザルは酒に弱いから、サズドマは酔ったときだけ世話するんですよ。あ、おめでとうございまーす」


 オレンジ頭から説明いただきました。そうか、持ちつ持たれつ…いや、シャザル君の負担の方がでかいな。

 背中から誰かに抱きつかれました。


「ひろいれしゅわ!わたくしにナイショでけっこんしゅるなんて!おねーしゃま、おめれろ~ございまひゅ~」


 ラトビアちゃんに酒呑ませたのは誰だ。一応呑める年らしい。本人が自分の意思で呑んだと護衛さんが教えてくれました。


「ラトビアも水飲め、水!呑みすぎだろ、明らかに!」


「え~、わらくし酔ってませんわよぉ。まらまらのめましゅわぁ」


「酔っ払いは皆そう言うんだよ!姫様は妊婦なんだからのしかかって負担かけんな!」


 おお、サズドマが気遣いを!サズドマはのしかかっていたラトビアちゃんをどけてくれた。


「さずどま~、ジュースのみたい~」


「わらくしもジュースがいいれしゅわ~」


「この酔っ払いどもぉぉ!!」


 酔っ払いに絡まれて文句を言いつつ世話を焼くサズドマとか、新鮮すぎる。しかもキレながらもちゃんとジュース持ってきてるし。笑ったら睨まれたので、撫でてやったら逃げられた。面白すぎる。





 熱気がすごいので、ちょっとだけ酒場を出た。涼しい。


「あ、姫様ぁ!おめでとう!」


 プクプク君からお花と果物をいただいた。


「このレインボーマンゴーはね、温度変化で7色の食感と味を楽しめる奇跡の果物なんだよぉ!」


「わぁ、ありがとう」


「他の精霊達もお祝いしてくれてるよ」


「わぁ…」


 空にオーロラと虹が……これ、天変地異の前触れ?とかってパニックになったりしないよね?

 町の人達が笑顔で空を眺めているから、そこは大丈夫そうだ。後で聞いたが、精霊の祝福と呼ばれ、吉兆のあらわれとして伝えられてる現象なのだそうだ。


「プクプク君、ピエトロ君は?」


「…姫様、怒ってる?」


「ミスティアにも言ったけど、怒ってない。しかしお仕置きはする」


「ボクも黙ってたからぁ、同罪だよぉ。ボクも姫様にいてほしかったの。ごめんなさい」


 ポロポロと涙をこぼすプクプク君。


「ぼくらも」

「ごめんなさい」

「知ってたけど黙ってた」

「ぼくら、ピエトロをそそのかした」

「黙ってたら、姫様帰らないってそそのかした」


「………………」


 うん、怒りにくいなー。


「姫様……ごめんなさい」


 ようやく現れたピエトロ君は、それはもう無惨に泣きはらしていた。

 怒りにくい。そもそも怒ってないけどさ。


「次からはちゃんと話してね。結果的には感謝してるよ」


 日本で、適当な人づきあいしかしてこなかった。だから、心残りがない。生きること…食べていくことに必死で、それがどれだけ寂しいかを考える暇なんかなかった。


「ひめじゃまぁぁぁ、ごべんなざぁぁぁい!!」


「怒ってないったら。それより他に言うことないの?」


 帰らなかったおかげで、大切なものをたくさん見つけた。これからも、きっとたくさん得るだろう。


「え?」


「私、結婚したよ。子供もできたの」


「お、おめでとう?」


「ありがとう」


「ひめじゃまぁぁぁ!おめでどうぅぅ!!」


「ひめじゃまぁぁぁ!」


「ひめじゃまぁぁぁ!」


 何故か他の精霊さん達まで号泣した。なんでだ?精霊さん達をよしよししつつ、酔っ払いを眺めた。

 酒宴は夜更けまで続いた。ケビンも酔っぱらっていた。


 ピエトロ君の罰は、一日おやつ抜きでした。ピエトロ君はお仕置きがゆるすぎる!と言ったけど、プクプク君はなんて恐ろしい罰なの!?と絶望していた。呆れるピエトロ君とショックな様子のプクプク君が面白くて、笑ってしまった。

 雪花さんはピエトロ君があまりにも反省しているので軽い罰にしたつもりですが、プクプク君には死刑宣告でした(笑)

 後でこっそりおやつをわけてあげたみたいです。

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