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結婚式なんだよ

 お城を出たら、町の人達からも祝福された。皆口々に「おめでとう」と笑顔で言ってくれる。思わず私も笑顔になってしまう。ケビンの人徳だろう。


 教会では神父様が騎士達に怒っていた。足元の縄から察するに、本当に捕獲したんだと納得した。


「まったく…本来なら拒否したいところですが、ケビン団長は孤児への支援を厭わぬ優しいお方。次からは普通に協力しますから、ちゃんと話すように!」


「すいません!」


 神父様、次はないよ!ケビンの嫁は私だけなんだから!

 ちょうどお説教も終わりのようだ。


「おや、主賓がいらしたようですね」


 神父様は穏やかに私達を招き入れてくれた。簡易の結婚式だから、祭壇の前で神様に結婚を誓って婚姻証明書にサインして終了するとのこと。

 小さな教会にはあっという間に人が集まり、席がなく立ち見の人も多い。

 あ、王様と王太子様いた。手を振ったら、にこやかに振り返してくれたよ。いつの間に来たのか、マーロさん達もいる。



「静粛に。結婚式を始めます」


 凛とした声が響く。場が静かになった。


「我らが母、女神ミスティアよ。新たなる夫婦がここに誕生いたします。どうか、見守ってください。新郎、ケビン=カルディア。誓いの言葉を」


 神父様が祈り、ケビンが私にひざまづいた。


「私、ケビン=カルディアはセツ「ストップ」


 ケビンの唇にそっと触れて首を振った。あれ?泣きそう?


「セツ…やはり俺とは……結婚できないのか?」


「違うよ!ケビン、貴方しか知らない私の本名で誓わせてほしいの!」


 なんでそんなネガティブなのさ!ケビンは嬉しそうに笑うと頷いた。


「…ああ。私、ケビン=カルディアは雪花=芹沢を妻として永遠に心から愛し、慈しむことを女神ミスティアに誓う」


 神父様は頷いた。


「よろしい。では新婦、セッカ=セリザワ。そなたはこのケビン=カルディアを夫とするか?」


 嫁はずいぶん簡易なんですね…


「はい。私、雪花=芹沢はケビン=カルディアを夫とし、彼だけを生涯愛し、護り、慈しむことを女神ミスティアに誓います」


「雪花…!」


 ケビンがウルウルしながら私を抱き上げた。


「わっ!?」


「愛している!雪花!雪花!!」


「ふふ、仲睦まじいですな。では、誓いの口づけを」


 ケビンは片手で私を抱いたまま、ヴェールを捲って私にキスをした。


「ここに、新たなる夫婦が誕生いたしました。女神ミスティアよ、祝福を!」





 皆の暖かい拍手に包まれた中で事件は起きた。








「え?」

「は?」

「い?」


 私のお腹がシャイニング!?めっちゃ光ってますがな!え?何!?我が子…ではないな!?


『雪花ちゃん、結婚おめでとう!』


「誰!??」


 腹から声が…でもたぶんうちの子じゃない!


『なかなか教会に来てくれないんだもの~。まぁいいわ。おめでとう!私は女神ミスティアよ』


「女神?」


『うん』


「私をうっかり魔物てんこ盛りの森に落としやがったうっかり女神?」


『…その節は大変失礼しました…』


 どうやら本物のうっかり女神であるらしい。


「何の用?」


『やっと教会に来てくれたから、帰らない代わりの加護をあげようと思って~』


「え?」


 ちょっと待て。え?

【帰らない代わり】の加護??


「ミスティア」


『なぁに?』


「私は帰れないんじゃなかったの?」


『え?帰れるわよ?ピエトロに伝言を依頼したはずよ?こっちに残ると決めたから結婚したのよね?』


「…えっと…」


「雪花…」


 ケビンがまたしても泣きそうになってる。耳も尻尾もぺったんこ。


「…帰りたい、よな?」


 なんだかなぁ。この人は仕方ないなぁと苦笑した。


「うん」


 彼に嘘をつきたくないから頷いた。嘘をついても見抜くだろう。


「…そう、だよな」


 帰りたい。

 カップメンとかカレーライス、食べたい。職場にちゃんと辞表出したいとか、色々思うところがある。


「でも、向こうにケビンは居ないからここにいる。帰りたいけど、帰りたくない」


 向こうにある大切なものとここで見つけた大切なもの。そして、今私が抱える命を考えたら、帰るはずない。


「…雪花!」


 私を抱きしめるケビンは震えていた。


「元の世界よりケビンを選ぶって言ったのに、忘れちゃったの?」


「そう、だったな。そう言っていた。すまない…」


「帰らない。ケビンとケビンとの子供に囲まれて暮らすって、決めたから。ミスティア、加護は子供達にちょうだい。何があろうと生きていけるやつがいい」


『わかったわ。サービスで他の神様からの加護もつけておくわね』


「え?」


『…ピエトロのこと、怒らないであげて。きっとあの子は貴女にここにいてほしかったんだわ』


「…ピエトロ君には怒ってませんよ。お仕置きはしますけどね」


『うん。ありがとう。じゃあ、産まれる子供達には戦乱に巻き込まれようとたっくましく生きていける加護をつけておいたから!』


「ありがとう」


『それから、貴方達に祝福を!愛し子よ、幸せになりなさい!!』


 ひときわ眩しく輝いて、女神は消えた。




「…あ、新しい夫婦に、皆からも祝福を!!女神に愛されし夫婦に、幸あれ!!」


 女神降臨と実は帰れたというカミングアウトにびっくりしたけど、その後婚姻証明書にサインしてその場で王様が受理というスピード処理で私は正式にケビンの嫁になりました。

 わりとどうでもいい補足。

 ミスティアは教会でなら声を届けられます。お腹がシャイニングしたのは腹の赤子を媒介にしたから。

 赤子達にチート発生の予感です。

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