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お迎えが来ちゃったんだよ

 ケビン視点になります。

 本来であれば、行軍も演習のうちだから基本的に馬か陸路になる。

 しかし、俺は少しでも早く雪花のもとへ帰りたい。だから賢者殿に土下座して転移陣を使用させてもらった。本来は緊急用なのだが…ま、まぁ有事の際使用できないなんてことになっても困るからな!これも訓練だ。


 国境付近でキャンプしたが、隣国の騎士達が来ない。こちらが早く来すぎたのは間違いないが、確認に来るぐらいはするはずだが…おかしい。これは何らかの罠ではないかと最悪の想定をいくつかしたところで、迎えが来た。


「遠路はるばるよくお越しくださいました。予定よりお早いお着きでしたので準備に手間取ってしまいましたが、こちらの準備が整いましたのでお迎えにあがりました」





 おかしい。






 迎えが来たのはいいが、厳つい隣国の騎士団長ではなく執事か侍従らしき優男が馬車で来た。


「…ええと、ハウエル騎士団長は…」


 隣国の騎士団長の名を出してみた。


「城でお待ちでございます」


 演習だろ?なんで城で待ってるんだよ!明らかにおかしい。

 比較的頭の回転が早いライティスも戸惑っている。しかし、男は何を聞いても『自分は主から命令されただけですから』か『詳しくは主に』としか返答せず、話にならない。


「…行くしかない、か」


 いきなり捕縛、という可能性もなくはない。ライティスや他の騎士達に『決して油断するな』と目線で合図し、俺たちは隣国・ローシィアの城へと向かった。





「ふん、噂通りの醜男ですわね」


 なぜ、こうなったのだ?

 俺は今、身なりを整えられて城の応接室に通され、美女と対面している。


 頭をフル回転させて現状を把握することにした。危惧していた奇襲はなく、我々はローシィアに歓待された。意味がわからず戸惑ううちに俺だけは別室でと案内され、別室には美しい女性がソファに座っていて先程の発言がされたわけだ。

 まぁ、俺が醜男なのは悲しいことに事実だからしかたがない。帰ったら雪花に慰めてもらおう。彼女へのご褒美は何がいいだろうか。彼女を想うだけで、悲しみはあっさりと消え失せた。


「…何をニヤニヤしているのよ、気持ち悪い」


 ああ、忘れていたなぁ。久しぶりに感じる、蔑む視線。悲鳴をあげて逃げ出されたり、卒倒されたこともある。

 いつも彼女は…俺を悪意から守ろうとしてくれていた。当たり前だったのに、彼女が忘れさせてくれていた。俺を庇おうと前に立つ、小さな背中を思い出す。

 彼女の思い出が勇気をくれる。高圧的な女は苦手だったが、今なら大丈夫だ。


「ええと…確かローシィアの…」


「ええ、末の姫ですわ。お前のような獣が話せるだけでもありがたいでしょう?」


「は、はあ…」


 どうせ話すなら雪花がいい。確かに美人なのだが、今の俺は雪花以外に興味がない。


「こんなさえない醜男と結婚だなんて…お兄様、酷いですわ…」


 うん?今、なんて言った!?


「け、けっこん?」


「?お前が望んだからでしょう?わたくしは異界の姫と引き換えに、お前の妻になるのです。そのために貢ぎものとして兵を連れてきたのでしょう?」


「………やられた!!」


「は?」


 つまり、雪花が…雪花の貞操が危ない!


「姫、俺は心より異界の姫を愛しております。貴女が世界一の美姫であろうと、我が心は変わりません」


「………え?」


「俺は…俺達は嵌められたようです。よかったですね。こんな醜男との結婚はしなくて済みますよ」


 さて、そうと決まれば即帰還だ!部下を連れてどうやって脱出するかと思案していたら、聞き覚えがある雄叫びが聞こえた。




『こけこっこぉぉい!!』




 すぐに部屋からテラスに出て、空を見た。空を埋め尽くす、下半身がやたらたくましい茶色の鳥。

 あれ、飛べたのか。走るとこしか見たことなかったな。確か、雪花からあの鳥は走りに特化して羽が退化したため、飛べないと聞いた気がするが…?


 見たことない魔物?の襲来にローシィアの騎士が警戒している。うちの騎士があれは攻撃すんなと止めているのに気がついた。そうだ、アレにはきっと愛しい女が乗っているはずだ。一瞬、愛しい黒髪が視界に入った。


 魔力を喉に集中させ、息を吸い込む。風に語りかける。そして、全力で魔力を解放した。




「あの鳥を攻撃するな!!ケビン=カルディアに殺されたくなければ、鳥を攻撃するな!!!」





 声は、音の波であると雪花から教わった。風を使い増幅や拡散ができることも彼女に教わった。俺の最大魔力強化により極限まで増幅した声は、もはや暴力であった。





 うむ、やりすぎた。





 俺の最大魔力強化による大声により鳥が怯えるわ、窓のガラスが割れまくるわ、騎士達も全員耳をおさえてうずくまっているわで敵味方を問わず大惨事だ。しかし、これで雪花に手を出そうと考える愚か者はいなくなったに違いない。むしろ、手を出す余裕がなさそうだ。

 余談だが、後に雪花からこの大声攻撃は下手をすると敵味方を問わず鼓膜が破れる可能性もあるとの話があり、基本的に使用禁止となった。


「こ……こけぇぇぇ……」


 鳥が本気で俺に怯えている。悪いことをした。近くに着陸したはいいがテラスの隅で丸まって怯える鳥を撫でようとしたところで、愛しい黒色が勢いよく抱きついてきた。


「ケビィィン!ケビンケビンケビンケビンケビンケビンケビィィィン!!」


「セツ!無事か!?」


 彼女から他者の匂いはしない。彼女の貞操は無事らしく、ホッとする。


「ケビンこそ貞操は無事ですか!?浮気はしてないでしょうけど、触られたりしてませんよね!?」


 雪花は俺の身体をベタべタと触りまくった。俺に触りたがるのは雪花ぐらいだ。基本的に俺は女性から毛虫以下の扱いをされているのを知っているだろうに。

 それにしても、人間は鼻がきかないからその辺りをすぐわからないのは不便だな…と最初は余裕だったのだが……


「してない!く、くすぐらないでくれ!」


 な、なんか触り方が…撫でるから服に手を突っ込んだりし始めた。ピンポイントでこう…いやらしいというか…さりげなく感じるところをかすめているような…快感でゾクゾクとしてきた。嫌ではなく、身を委ねてしまいそうで、非常にまずい。そ、そこは……そんな………ぬああああああああ!?

 雪花が本気でヤバイ所まで触ろうとしたので、理性を総動員して雪花の手をはがした。


「だ、だだだだ駄目だ!今は駄目だ!!それ以上は閨でしてくれ!!」


 いつのまにベルトまで外したんだ!?慌てて乱れた衣服を直す。


「了解です。閨でたぁっぷりと、シましょうね?」


 愛しい婚約者は、色気とフェロモンをたっぷりとふりまいてウインクしたあげく、深く口づけまでしてきた。この場で押し倒さなかった俺を、誰か誉めてくれ。婚約者が魅力的過ぎる上に積極的に誘惑してくるから耐えるのが辛すぎる!!

 口づけした後唇を舐めないでくれぇぇぇぇ!!


「………!!!!あ、アオーン!!アオオオオーン」


 幸せすぎる俺は…愛しい婚約者を離したくなくて、でも衝動がすごくて、本能のままに鳴くしかなかった。


「あれは鳴くわ」

「鳴くな。鳴かないやつは種がないわ」

「破壊力がすげぇわ。あれは鳴くしかないわ」

「攻めるなぁ…」

「いいなぁ…」


 団員達の呟きでようやく正気に戻った俺。羞恥のあまり走り出したいのだが、雪花がしがみついているので走ってもあまり意味がない。


「団長、気持ちはわかんなくもねぇけど、時と場所を考えよぉぜ?」


「サズドマがまともなことを言っただと!?」


「マジか!すげぇな、サズドマ!!よく言った!!」


「……………………」


 サズドマは、とても穏やかに微笑みながら俺に縄を渡してきた。


「キシャアアアアア!!」


 そして、鬼の形相で茶化した騎士達に襲いかかった。馬鹿め、最近多少おとなしくなったがサズドマはサズドマだ。


「ぎゃあああああ!?」


「悪かった!からかって悪かったから、落ち着け!サズドマぁぁ!!」


「フシュウウウウ!」


「サズドマ、やめて!」


 シャザルによってどうにか落ち着くサズドマ。縛られて足蹴にされ、ウットリしている。

 そういえば、さっき渡された縄はなんだったんだ?



 縄の先を確認した。






 ローシィアの王太子が卑猥に縛られ、モゾモゾはぁはぁしていた。







「サズドマああああああ!!」


 とりあえずサズドマに関節技を極めた俺は悪くないと思う。


 どうやらローシィアの王太子は、サズドマによってMの世界に誘われちゃったみたいです。

 ちょっと中途半端ですが、次回に続く!!

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