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乱入してやったんだよ

「まぁ、楽しそうですね。私も混ぜてくださらない?」


 騎士の制服からドレスに着替え、ケビンに髪のセットと化粧をしてもらった私は、たくさんの女性たちが参加するお茶会でそう言った。





 時間は1時間前に遡る。


 たまっていた仕事も片付き一休みしていたら、カダルさんが来た。なんかもう…シャイニングカダルって感じ。元気になりすぎだよ、カダルさんや…まあ、楽しく仕事するのはいいことだけどね。


「姫様!なんと今日は王妃主催のお茶会の日なのです」


「なにそれ」


 楽しくなさそう。


「嫌がらせするにはもってこいですよ!」

「そこんとこ詳しく!」


 私は復讐を忘れない。いや、程度によってはどーでもいっかと流すけど、王妃は許さん。私のケビンをいじめるやつなど、いびり返してやるわ!


 カダルさんによれば、王妃は月一回程度茶会を開くらしい。要は王妃が自分が国で1番優れた女だと知らしめ、満足するだけの下らない会合なんだそうだ。 

 参加の資格があるのは貴族女性であることのみ。


「…私は参加資格があるわけ?」


「もちろんです。姫様は……」


 カダルさんがニヤリと笑った。その後の説明を聞いて、私は飛び入り参加を決意したのだった。





 回想終了。見慣れない貴族らしき身なりの私に、女性達は不思議そうだ。あ、ラトビアちゃんも居るわ。ラトビアちゃんには事情があり子供の姿をしてるので、ぜひせっちゃんと呼んでねと魔法でこっそりお願いした。なんかアワアワしてたけど、なんでだ。


「…貴女は?」


 私より少し年上かな?という女性が話しかけてきた。おおぅ、ゴージャス美女だな!


「はじめまして。異界から参りました、セツと申します」


 礼をとった私に、ゴージャス美女は首をかしげた。


「…え?『体調不良』ではありませんの?」


「見ての通り、健康ですわ」


 女性は王妃を見た。いや、めっちゃ睨んでる。目線で『どういうことですの?』と聞いているのがわかる。王妃は目をそらした。というか、このお姉さん誰かに似ている…お姉さんは私に礼をとった。


「申し遅れましたわ。わたくしは、ローゼンシア=クリオですわ。どうかローザとお呼びくださいませ。愚弟が色々とご迷惑をおかけしているようで、申し訳ありません」


 ぐてい…?愚弟!??


 クリオってまさか…



「マーロさんのお姉様!?」



「ええ、そうよ。弟から話を聞いて、是非会いたいと思っていたの。だからくだらない茶会に我慢して出ていたのに、なかなか来てくださらないんですもの!わたくしとも仲良くしてくれると嬉しいわ」


 ゴージャス美女から笑顔をいただいちゃったよ!


「あ、はい。是非」


 彼女に悪意はないみたいだし、美女だし、ぜひ私も仲良くしたい。


「で、どういうことですの?」


「…何か勘違いがあったようですわね」


 王妃はあくまでも非を認めないつもりだ。このオバハン、実は私をハブっていたのだ。カダルさんによれば、姫様は『体調不良で出られない』と何度も言っていたらしい。

 この茶会は、本来ならば女性たちの数少ない交流の場。この場を利用してオバハンは自分の地位が確固たるものであると示し、好き放題していたらしい。


 私が出れば注目されるのは明白。さらにオバハンは私を大嫌いだから、呼びたくない。しかし、呼ばなければ角がたつ。その結果が呼ばずに『体調不良』で押し通すだったわけだ。

 まぁ、カダルさんも知ってたけど私が行きたがらないだろうからとほっといていたらしい。


 確かに以前の私ならば行かなかっただろう。



 しかし、今は違う。



 私はオバハンへの嫌がらせになるならば面倒な茶会だろうと出てやるし、労力も全く惜しまない。むしろ全力で嫌がらせする。





 つまり私は、オバハンに全力で嫌がらせするウーマンである!!(テンション上がりすぎて意味不明)



「ああ、せっかく異界の姫様がいらしたのですから、是非特技を見せていただきたいわ」


 この茶会、特技を見せて楽しんだりもするらしい。特にオバハン、性格は悪いが歌もダンスも超一流なんで、もはやオバハンの独壇場。

 まぁ、空気読めずオバハンより上手い歌やダンスを披露した令嬢が『謎の事故』や『実家の不正』で居なくなったかららしいけどね。


 裏事情はさておき、私は正直歌やダンスでオバハンに太刀打ちはできないと思う。

 歌はそれなりに得意だけど、私はそもそもこっちの歌を知らんし。知らない歌を歌われても、多分お嬢様達も困るんじゃなかろうか。そして、ダンスが残念な腕前なのは知っているとみた!社交ダンスなんかやったことないから、基本しかできないよ。オバハン、やなやつー。だから、お前の土俵で勝負なんて、してやらないよ!


「かしこまりました。ご用意してきたかいがありましたわ」


 ふはははは、馬鹿馬鹿め!アウェイに行くと解ってて、なんの対策もしないわけがないだろうが!私が手を叩くと、カダルさんがお菓子を運んできた。


「まあ…」


 キラキラと輝く、瑞々しい綺麗なフルーツをふんだんにのっけたフルーツタルト。

 デコレーションにこだわったプリンアラモードには、飴細工の蝶々付き。


「綺麗ですわ」


 ご令嬢がた、興味津々ですね。


「これは私の世界のお菓子ですわ。フルーツタルトとプリンアラモードと言います」


「食べられますの?」


「宝石みたいですわ」


 この国で瑞々しい果樹は稀少だったりする。甘い果物の匂いに魔獣が寄ってくる危険があるから、他国からの輸入がほとんどらしい。つまり、超贅沢なわけ。

 しかも、この国の菓子は贅沢=砂糖たくさんなんで、基本高級菓子は甘すぎる。クリーム系はなく、シンプルな焼き菓子が主流。当然この茶会のお菓子も焼き菓子ばかりだが、皆少ししか食べてない。甘すぎるんだよ。私も食べたくない。もったいないよね。


「おね…せ…せっちゃ……セツ様!これはぷりんですわね!?」


 ラトビアちゃんの目がキラキラしている。せっちゃん呼びはハードルが高かったのね。ラトビアちゃん、以前プリンを食べたら幸せそうにしてたねぇ。


「ラトビアちゃん、プリンに生クリームは正義ですよ。なんなら私のぶんもあげます」


「きゃああああ♪ありがとうございます!」


 某雅なおこちゃまが浮かんだ。皆プリンが好きなんだなぁ。


「セツ様!このフルーツたるとも美味しいです!」


「あ、タルトは余分に作ったからおかわりがある……」




 ラトビアちゃんが食べたのを見て、他のご令嬢達も食べていたらしい。ハンターの目をしていた。なんか怖い。いや、皆さんの視線はフルーツタルト(おかわり)に向けられているだけなんだけど…なんか、優雅なお茶会が…菓子を貪り食らう会になっちゃったような………


「お、おかわり欲しい人!」


『はい!』


 オバハン以外の全員が挙手しました。譲り合いの精神は皆無らしく、なんか牽制し出したよ!?

 この世界には肉食女子しかおらんのか!??フルーツタルトでキャットファイト勃発の予感です。



「では、じゃんけんに勝利した方に進呈します!!」




 お茶会が、じゃんけん大会になってしまった。なんでだ。

 お茶会はまだまだ続きます。肉食女子だらけのお茶会に、マイペース女子もたじたじです(笑)

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