おっさんは強いんだよ
ようやく落ち着いた私は川で洗濯をしていた。川の水は綺麗で清々しい。洗濯板とたらいで洗濯物を洗っていく。
「イヒヒッ、ねえねえ、オレもその板でゴリゴリしてぇ」
清々しい気分が台無しである。いっそのこと洗濯板でゴリゴリとヤってしまいたいが、無視である。更にかまわれる気がする。
「…すいません」
私の隣には、真の護衛であるシャザルさんがいる。変態は護衛ではなく変態である。そして、シャザルさんは変態から私を護る護衛である。
シャザルさんは柔らかな蜂蜜色の少年である。可愛い。
プクプク君も護衛なのだが、すっかり変態に怯えてしまっている。無理もない。丸々太ってるとかじられそうになれば誰だって怯える。変態は冗談だと言ったが…あれは多分半分本気だった。変態からは私が護ってあげよう。
「シャザル、あれを連れていけ」
イライラしたおっさんにビビるシャザルさん。
「無理ですよ、あいつロックオンすると飽きるまでかまい倒すんですから!」
なんと迷惑な変態か。
シャザルさんは不幸なことに、変態と幼馴染であるためにお世話係にされているそうな。
なんと迷惑な変態か!!
(大事なことなので2回言いました)
「イヒヒッ」
私の呆れた視線に悦ぶ変態。洗濯が終わったのですすいで干した。変態がチョロチョロしてて落ち着かない。おい、私のぱんつをジロジロ見るんじゃない!
「…フヒッ?」
急にニヤニヤしていた変態が真顔になった。
「…シャザル、なんか来る」
変態の口調もまともになった。変態は真面目に周囲を警戒する。
「えっ?…わかった!」
シャザルさんが武器を構える。変態は槍を草むらに突き立てた。草むらからは怒った猪達?が出てきた。でかいし数が多い!!
「総員、戦闘準備!グレートボアの群れだ!」
おっさんの声が響いた。薪拾いをしたり夜営準備をしていた騎士達が慌てて陣を組み、応戦し始めた。
「姫様はぁ、ボクが護ってあげるからねぇ」
「プクプク君…お願いします!皆も護ってあげて!私だけ安全なとこに居るなんて…隠れて大人しくしてるから、皆も助けて!」
「えー」
プクプク君は嫌そうだ。なんか…なんかないかな!?そういえば、チョコがあった!これなら異世界のお菓子だし、珍しいよね!食べ物好きそうだし、これならいける!?
「チョコ!チョコあげるからお願い!」
個包装されたチョコをひとつプクプク君に食べさせた。
「ちょこ……………?」
プクプク君は固まった。
「…………んんんまぁぁぁい!まぁぁいうぅぅぅ!!」
そして、プクプク君は緑色に輝くイケメンに変身して猪もどきを多分木の根っこを操って捕まえたりブッ飛ばしたりした。
プクプク君は植物の力が使えるのかな?いやいや、え?
「え?」
異世界でチョコはパワーアップアイテムなんですか??お徳用チョコ398円。1個あたり約10円ですよ??
「姫様…これは…」
おっさんがビックリしているが、私もビックリしているよ。一応こうなった経緯を話した。
「今後、あまり精霊に姫様の世界の菓子を与えない方がよさそうですね」
「…………………うん」
プクプク君が大暴れなうである。素直に頷くしかない状況だった。幸いちゃんと騎士達は避けているから、コントロールはできているようだ。
「キングが出た!」
「キング?でかっ!?」
今までの猪もどきも普通の猪に比べたらけっこうでかかった。熊サイズもいた。しかし、キングは象サイズだった。しかも背中に見覚えがあるオレンジ頭がいた。
「すみません、しくじりました!」
『副隊長の馬鹿野郎!!』
オレンジ頭は副隊長だったらしい。皆さんから罵倒されてました。
「あ、姫様!」
「!?」
シャザル君の声で気がついた。キングは一直線に私を狙っている。なんで!?
「姫様ぁ!!」
プクプク君の根っこをすべて突破して、キングは私を襲おうとする。怖くて動けない。逃げなきゃ、アラームがけたたましく鳴っている。
「助けて、おっさん!!」
「はああああああ!!ぬん!!」
予測していた衝撃は来なかった。私の眼前には、鍛えぬかれた背中とふさふさの尻尾。そして、まっぷたつになった猪もどきの親玉。
「お怪我はありませんか、姫様」
そして、優しい狼顔のおっさんが触れてきた。
「姫様?」
これはあれだ。吊り橋効果とか言うやつだ。だから、死ぬかもなドキドキを恋愛的ドキドキと勘違いしているに違いない!
「姫様、顔が赤いですが…どこか悪いのですか?」
「た、体調は悪くない」
むしろおっさんが心臓に悪いんだよ!
「姫様は俺をたまにおっさんと呼んでいますね」
「ええ?うん」
「隊長よりそちらがいい。それから敬語も不要です。俺はその方が嬉しいです」
「なら、おっさんも敬語なしね」
「わかりま……わかった。俺はかなり口調が悪いが、かまわないか?」
「うん!」
おっさん呼びを定着させてしまったことを私は後にとんでもなく後悔することになるのだが、お馬鹿な私はこの時、知るよしもなかった。
「なんか、おっさんと仲良くなれたみたいでうれしいな」
「アオオオオオン!!アオオオオオン!!」
え!?今回は誉めてないよ!?
「おっさぁぁぁん!?」
おっさんはまた森へと駆け出して、魚と猪もどきのを残りを狩ってきた。ワイルドを通り越して、野生のおっさんだった。
「あ、そういえばさっきはありがとう。おっさんは命の恩人だね。かっこよかったよ」
「ウルオオオオオ!!ルオオオオオオン!!!」
おっさんがまた駆け出した。おっさんの走り出すポイントがよくわからん。しかし、なんか通常運転なおっさんを見てたらドキドキは落ち着いた。よかった。
「姫様、わざと?まさかの魔性の女?」
「…………はい??私は言いたいことを言いたいときに言ってるだけですが?」
魔性の女とか、そんなけったいなモノになった覚えはありません。
「天然小悪魔か」
「天然小悪魔だね、イヒッ」
「天然小悪魔だったんですね」
「違うから!」
騎士さん達が変なあだ名をつけようとするので、おっさんに言いつけてやりました。そしたら全員おっさんから拳骨くらってました。特に変態とオレンジ頭、ざまぁ。
ちなみに超どうでもいい作者的なイメージ。
おっさぁぁぁん!?
Σ(´□`;)
雪花さんがおっさんを叫ぶときΣ(´□`;)の顔文字が浮かびます。