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師匠も巻き込んだよ

 空気になっていた変態が声をかけてきました。


「えっと…私はいつになったら解放されるんでしょうか…」


「あ、忘れてた」


「酷いですよ!」


 いや、意外に空気読めたんだね!気配がなかったわ!

※ずっとついてきてました。正確には、縄で縛られたまんまケビンに縄で引かれてました。


「とりあえず、保護者(賢者)を召喚しましょうか」







 賢者のじじいが来た。なんか研究途中で召喚されたじじいは、不機嫌だった。


「なんじゃい」


「それが…」


※かくかくしかじか説明中。


「…あー!だから嫌だったんじゃ!こんな研究馬鹿のじじいにマトモな子育てができるはずなかろうがぁぁ!!」


 じじいは、わりとご自分をよく解ってらっしゃった。地面に転がりまくるローリングじじいをしばし眺める私たち。年のわりにイイ動きだね。身体強化してるわけではないみたい。


「はぁ、はぁ…異界の姫……セツ様」


 気がすんだのか、じじいは転がったまま私に話しかけてきた。


「はいな」


「アレは確かに罪を犯したが…何が悪いのかもよう解っとらんアホたれじゃ。ちゃんと育てられんかったワシの手落ちじゃ…この老いぼれの命でおさめてくれんか…」


「賢者様!?」


「すまなんだなぁ、お前に常識がないのはワシのせいじゃ」


 ふむ、研究馬鹿なじじいは、この養い子に愛情があるのだろう。自分の命が惜しくないほどに。


「や、やめて!私が死ぬから!悪いのは私ですから!」


 変態が首を振る。泣いて、嫌だ、違うと言う。悪いのは自分。賢者は自分を救ってくれたのだと泣く。貴方の役に立ちたくて研究を頑張ったのだ。足を引っ張りたかったのではないと泣き叫ぶ。

 泣いて私に賢者様だけは助けてとすがる変態。なんだよ、あるじゃん。研究以外の大事なものがさぁ。とりあえず、私の返事は決まっている。


「却下!!」


「!!?あ、嫌だ!やめ…」


「落ち着きなさい、馬鹿」


 すがる変態にチョップをおみまいした。


「痛い!」


「命はいりません。労働力をください」


「!!なんでもします!」


「…やれやれ、こんな老いぼれをこき使うつもりかい?」


「はい。何せ国一番の賢者様ですからね。素晴らしい働きを期待してます」


 こき使う気マンマンですわ。あ、じじいが遠い目した。はっはっは。諦めてね。


「ただ、今はまだ助力不要なんで、とりあえず変態は魔封じ状態で奉仕労働ね」


「なんで!?私正直魔力がないと役立たずですよ!?」


 うん、お前わりと自分を解ってるのね。多分そうだろうねぇ。逆に魔法があれば大概は出来ちゃうんだよね。


「普通を学べ、馬鹿。お前がしたことの意味をちゃんと理解しろ。今回はたまたま私相手だから許されたけど、他の人間なら多分お前と賢者様の首がとんでる」


「でしょうね」


 めっちゃイイ笑顔だな、カダルさん!


「いやいや、投獄拷問の末に処刑だよ」


 メル君!?目が怖い!目が怖いよ!?声が低いよ!?


「そうだな。悔いろ」


 カイン君!?目がマジですぜ!?な、なんか冷気を感じますよ!?


「正直、八つ裂きに…いや、死ねないギリギリで痛めつけてやりたい」


「ストップ、殺意!でも私を大事にしてくれてるのは嬉しいです!」


 めっちゃ怒ってるよね!知ってましたよ、ケビンさんや!さっきの冷気は殺気だったんだね!カイン君よりも激しい殺気で寒いわ痛いわ…殺気ってこんなにわかるものだったっけか!?


「…が、がんばります」


 変態が泣いた。とりあえず、頑張れ。変態は魔力を封じたまましばらくケビン家で働くことになりました。有休たまってるから、それを使って城での仕事は当面お休みです。


「そういや、そもそもお前はなんで毎晩毎晩私の結界を破りに来たの?暇なの?」


 一応実験がしたかったからだろうと予想はしていたけど聞いてみた。


「え?ああ…最初は職場の…誰かに言われたから」


 ん?


「異界の姫様の結界はスゴいから、アレを壊せる魔具を作ったらお師匠様もきっと誉めてくださるって言われて…でも出来なくて途中から意地になって……あれ?でも結界を壊したら…」


「………………唆したのは誰じゃ?」


「え?ハゲの開発主任」


 うああ…ここに来て、変態が嵌められた事が発覚したよ!


「姫様、この件はワシに預からせてもらってよいか?」


「かまいませんよ」


「わ、私……」


「まぁ、これを期に人を見る目を養いなさい」


 顔面蒼白で震える変態…スノウの頭をポンポンしてやった。


 カダルさん達は情報収集に行きました。賢者様もツテがあるそうで、そっちにも協力するらしい。カイン君はオバサンに絶縁状叩きつけてから来るそうで、私達はさっさと荷造りして先に帰宅することになった。そもそも荷物はちょっぴりしかない。


 お気に入りの紅茶に、調味料コレクション、それから……


「姫様、この薔薇は?」


「ん?薔薇だよ」


 ケビンに以前もらった深紅の薔薇だよ。でも大事にドライフラワーとブリザーブドフラワーにしていたなんて、恥ずかしいから言いたくないよ。実はリボンと包装紙までちゃんとしまってあるのは内緒だよ。


「……赤い薔薇だな。加工したのか?見事だな」


「ありがとうございます。上手に加工したし、これも持って行こうかな~」


 いや、うん。ケビンがくれた花だからね。できる限り長く側に置いときたくて加工したから、絶対持って行くけどね。しかし、そこは恥ずかしいから素直に言えないよ。


「…………俺が贈った薔薇…か?」


「ぐふっ!?…………まぁ、その………………うん」


 嘘をついても仕方ないから真っ赤になって頷く私。ふおお…恥ずかしい。あや?ケビンも赤くなってるわ。


「あの、白い薔薇の…花言葉を…教えてくれないか?」


「えふ!?」


 今!?今それ聞いちゃう!?やめて!私のライフはゼロよ!!時間差攻撃はやめてぇぇ!!


「け、ケビンは、花言葉を知ってて赤い薔薇をくれたの?」


 秘技、話題すり替えの術!


「え!?その…はい。こ、こここ恋人から貰ってみたいと言っていたと聞きまして…その、あ、ああああああ貴女を愛しています!だ、だから贈りました!」


 ぐっ、男前だね、ケビン!こうなったら私も腹をくくるよ!


「…白い薔薇の花言葉は『私は貴方にふさわしい』だよ。花言葉の話をしていて、ケビンに贈りたいと思ったからあげました。でも、柄じゃないから恥ずかしい!乙女チックな自分が耐えらんない!」


「…セツは乙女だろう?その…すごく嬉しい。俺もセツみたいに加工したかったな。あのリボンはとってあるが、薔薇は枯れてしまった」


 このストレートが…!しょんぼりしないで!可愛いんだから!!


「ま、また贈ります。今度は加工するから…飾ってください」


「ありがとう!楽しみにしている!」


 尻尾をパタパタさせるケビン、かわゆす。


「そういや、ケビンの部屋はなんでやたら黒いの?」


 ふと思い付いたので、聞いてみた。すると、ケビンが真っ赤になってむせた。


「ぐふっ!?そ、そそそそれは…その…黒は…貴女の色だろう」


「…………」


 ああ、あれね?恋人の色に染まりたいとか包まれたいとか?




 乙女か!




「さ、最初はシーツだけだったが、気がつけば室内がやたら黒い調度品ばかりになっていた。貴女の髪や瞳ほど美しくないが、貴女を連想させる黒が好きになった」


「………」


「す、すまない。女々しいとは自分でも思うんだが…貴女の色が好ましく、美しいと思うんだ」


「いや、うん。わかった」


 胸キュンし過ぎて辛いから待ってくれ。私の婚約者が健気で可愛すぎて辛い。


「き、気持ち悪いか?」


「いえ、ケビンが好きすぎて辛い。なんでそんなにくっそ可愛いの!?誘ってんの!?」


「は?いや…さそ…いや、その、誘うのはやぶさかではないが…いやいやそうでなく…好きすぎて!?」


「あああああ、可愛い!ケビン大好き!!夜ならもう押し倒してるよ!」


「アオン!?」


「今夜、楽しみだね?」


 ケビンは鼻血を噴出しました。あれ?私たち、一線を越えてなかったか?まぁ、それでも純情な彼が大好きです。


 追伸・一連のやり取りをカダルさん達にニヤニヤしながら見られてました。死にたい。

 そういや、部屋のすみにスノウもいました。遠い目をしながら、なんか魔法陣を書いてました。すまん、忘れてた。

 雪花さんが回避したと思ってた薔薇の話と、ケビンの部屋がやたら黒い理由がやっと出せました。

 最近私服や小物も黒が多いのですが、理由を悟ったじい達にあたたかい目で見つめられてます。


 ここで一句。


 黒歴史 忘れた頃に やってくる

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