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ちゃんと話しといてほしいんだよ

 私としてはもうこのままケビンの家に住みたいんだけど、流石に国王を無視するわけにはいかないからということでケビンに抱っこされてお城に来ました。


 ケビンがピリピリしてます。怒りすぎてお顔もモフモフです。


「ふかふか~」


「セツ」


「もふもふ~」


「………セツ。怒りを鎮めるのはやめてくれ」


「いいえ。勢いも大事ですが冷静になる必要がありますし、ケビンには不安な私を慰める義務があるんです」


 まあ、本音はケビンをもふりたいからもあるけどね!


「……すまない。自分のことばかりで…そうだな。不安だよな」


「ケビン…」


 ごめんよ、私の方が自分の事しか考えてないよ…呑気にモフモフを楽しんでいてすまぬ。


「イチャイチャするのはいいけど、引きずらないで!歩く!歩くからぁぁ!!」


 泣き叫ぶ変態に二人の甘い時間を邪魔されました。


「…噛み殺さないだけありがたく思え」


 変態を冷たく睨みつけるケビン。ヤバい、超カッコいい。


「き、君には私はなにもしてない!なんで君達は私に酷いことをするんだ!」


「……は?」


 そもそもこいつには『家族を大切にする』が理解できないんだろうなぁ。ケビンには理解できない人種に違いない。


「あのさ、ものすごーく希少で大事な研究材料が私とする」


「うん」


「ケビンや子供達は共同研究者」


「うん」


「あんたは、私を台無しにした…あるいは壊そうとした極悪人なわけ」


「え?」


「普通の人は、あんたにとっての研究と同じかそれ以上に家族を大切にしてる。それを踏みにじろうとした人間が責められるのは当然。わかった?」


「うん…本当にごめんなさい」


「……………………」


 素直にシュンとして謝罪する変態に、困った様子のケビン。


「悪いことしたのは解ったね?」


「うん」


「いい?ちゃんと私に協力して。嘘はつかない。知ってることを話すんだよ」


「うん」


「じゃないと、研究どころか、処刑されちゃうからね」


「……そうなんですか?」


「そうなの。だから、ちゃんと協力するなら…今回だけは助けてあげる」


「解りました」


 うむ。これで大丈夫だね。私も今回の件に関しては、こいつに教えるのが面倒で放置してたから…自業自得な部分もある。まぁ、何か罰でも考えとこう。


 しかし、昨日のパニックが嘘みたいだ。ケビンの腕の中という最高のセーフティゾーンにいるおかげで、私は冷静でいられる。

 勝利すれば、ケビン宅の永住権だ。気合いは充分。


 さぁ、宣戦布告だ!




「異界の姫として、国王陛下に謁見の許可を望みます!!」




 私は魔法で城中に声を響かせた。あ、ケビンのお耳がビックリしすぎてピーンとしてる。一声かけるべきだったか。

 私の声に慌てて近衛やら侍従が現れ、謁見の間に通された。


「ずいぶんと急な謁見の要請であるな。何か不備があったか?」


 王様は苦笑していた。後ろのお妃ことオバサンは超イラついてるみたい。オバサンは呼んでないんだけどね。


「ありました!警備が酷いです!やる気があるんですか?暗殺者やら夜這いやら、ザルにも程があるわ!」





 しん、と謁見の間が静かになった。






「…は?」


 キョトンとする王様。どうやらマジで知らなかったみたい。オバサンは知っていたのか、涼しげな表情だ。


「あの、本当です。私も近衛騎士を買収したり、巡回ルートの情報を流してもらっていました」


 おい、変態よ。正直すぎるっつーか、そんなことしてたのか。


「…マジで?」


 つい素になって確認してしまった。


「はい。結界を破るために集中したかったので。邪魔が入ったらできないでしょう?あ、名前言います?」


「…うん」


 20人程の名前が上がった。多すぎないか?王様がひきつってるよ。だから毎晩毎晩来られたわけか。ザルにも程があるわ!ローテーション勤務してたにしても、大半が買収されてるじゃないか!


「近衛騎士団長を呼べ!!」


 謁見の間に怒声が響いた。ケビンである。怒りのあまり、獣顔になって歯をむき出しにしている。


「醜いけだものが、叫ぶなんて野蛮ですわ!」


 いや、オバサンも叫んどるがな。普段のケビンならションボリするが、珍しくケビンはガチギレしていてオバサンの叫びに反論した。


「これが憤らずにいられますか!我が最愛の婚約者を危険にさらしたばかりか、騎士としての誇りすら売り渡しているのですよ!?貴女には関係ないのですから、余計な口を挟まないでいただきたい!!」


「!?なんですって!?けだものが、この無礼者!!」


「確かに身分は下ですが、俺は騎士団長だ!軍事については貴女に口を挟む権利などありませんよ、義母上(ははうえ)!」


「汚らわしい!下賤なけだものが、わたくしを義母(はは)と呼ぶでないわ!!」





 え?





 あのオバサン、母?いや、継母か!!






 ええ??








 つまり、つまりケビンって………えええええ!??


 ヒートアップするケビンとお妃を横目に、私は王様に話しかけた。嫌な予感しかしないが、確認しないわけにはいかない。


「あの、ケビンは…王様の……」


「…息子だ。側妃の子だから継承権は低いが、2番目の子だな」


「oh…」


 なんというか、もうどこに驚いたらいいの?

 ケビンが私の王子様(笑)ではなく、ガチで王子様だったこと?

 あのオバサンがケビンの継母だってこと?

 王様とケビンが言われてみればわりと似てること?


 なんかもう、ビックリしすぎて頭が働きません。どうしたらいいでしょうか。

 とりあえず…


「名前もそうだけど、そういう大事なことは先に言っておいてよ!」


 ケビンにシャイニングウィザードをかました私は悪くないと思います。

 ついにケビンの家族が明らかになりました。ようやくです。

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