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油断してたんだよ

 お嬢様ことラトビアちゃんと和解した私。お茶をしつつ話をした。


 また今度お茶をすると約束して、ラトビアちゃんは護衛さんと帰還。サズドマはたくさんのお菓子を抱えて騎士団に戻った。よく考えたら、サズドマはサボりだね。…まぁ、お手柄もあったしいいか。


 それからケビンにお城まで送ってもらい、別れ際にお願いした。


「そういえば、このブレスレットはケビンと私のネックレスと同じ石の欠片なんだ。危険な時とかにケビンのとこに転移する魔法を入れてもいい?」


「もちろんだ。雪花は俺が守る」


 ケビンが快く了承してくれたので、転移魔法を入れておいた。これをしておいて良かったと、お互い思うことになるなんてこの時は思っていなかった。




 お試しという名の初デートがうまくいって、私は油断していたんだろう。普段なら、きっと室内の違和感に気がついた。しかし、ケビンにより夜通し色々された身体はものすごく疲労していて…すぐに眠ってしまったのだ。





 そう、結界すらはらずに。










 誰かが頬を撫でている。ケビンかな?でも、指が細いような……


「ああ、なんと可愛らしい」


 聞きたくない声に、意識が一気に覚醒した。


「!?むぐ!?」


 私に覆い被さっているのは、賢者の弟子である変態だった。名前は覚えてない。

 口を塞がれているから大声を出せない。変態は私に首輪を嵌めた。体からナニかが急速に失われていくのを感じる…魔封じか!


「痛っ!」


 口を塞いでいた手を噛んでやった。血の味が不快だが、気にしている暇はない。相手にマウントをとられているのだから。しかも子供の姿で魔法なしだから、あまりにも不利だ。


「ピエトロ君!」


「残念、結界で精霊様は来れませんよ」


 ピエトロ君も喚べない。もとから期待してないが、近衛騎士も来ないだろう。


「このっ!」


「ははははは、無駄ですよ」


 手当たり次第に物を投げつけるが、結界で弾かれる。この結界を壊すほどの魔法を使えば、間違いなく殺してしまう。今の私は、冷静じゃない。殺すのは最後の手段にしたい。


 どうする?どうしたら…


 その一瞬の迷いが、隙になった。


「きゃああああ!?」


 風魔法で服を切り刻まれた。くそう、しかも見えそうで見えないとか、萌えをよくわかってる…ではなく!怖い…怖い怖い怖い!!


「嫌だ!近寄らないで!触らないで!!ケビン…ケビン助けて!!」


「ははは、役立たずの婚約者は来ませんよ」


 変態は勝利を確信したのか近寄ってきた。

 ケビン、そうだ!ケビンだ!!ひらめいた私は即座にネックレスの石に十字を描いた。ネックレスが魔封じを解除する。やった!首輪が外れた!


「!?やりますね、姫様。しかし、集中できますか?」


「いやっ!!」


 変態が足を触ってきた。鳥肌がたって、集中なんかできない。でも、集中する必要なんかない。あらかじめ施した魔法を発動するだけだ!


「!??」


 光が視界を埋めつくし、昨日ケビンと一緒に過ごしたケビンのベッドに私と変態はダイブした。


「雪花!?」

「ケビン!」


 ああ、安心できる!ケビンが全裸なのもこの際気にならない!私はケビンにしがみついた。世界一安全な彼の腕の中に迷わず飛び込んだ。


「…!?貴様…」


 私の足をつかむ変態を見たケビンにより、一瞬で変態は結界ごと吹っ飛んだ。



 え?




 ケビンさん、それは一応賢者に次ぐ天才魔法使いなんですよ?物理で結界って、割れるの??


「ぐっ…ば、馬鹿な…」


「雪花、あれはお前に無体をしたのか」


「…未遂、ですね」


「そうか、死ね」


 あ、危ない!

 ケビン様がマジギレだよ!彼は私の返答を聞くと、迷わず剣を振るい、変態の首をはねようとした。殺気を感じて咄嗟に結界をはって弾いたけど、次防げるかはわからないね!スゴいわ、ケビン!結界は凄すぎる物理の前では無力らしい。


「雪花、邪魔をするな」


「邪魔するよ!スプラッタ禁止!ほら、こうやっちゃえば無力だし!」


 触るのは嫌だったけど、魔封じを変態に嵌めてあげた。


「!?」


「後は、嫌がらせのスペシャリストと賢者様に任せようよ。私、怖かったの…慰めて?」


「………ぬうぅ…」


「ねぇ…お願い…」


 すり、と首すじにすり寄り、上目遣いでおねだりする。色仕掛けでもなんでもする。ケビンが私のために不必要に手を汚してほしくないし、不安だから離れないでほしい。


 コンコン、とノックが聞こえた。


「…ぼっちゃま、何かありましたかな?」


「…賊だ。納屋にでも縛って閉じこめておけ」


「おや、若奥様?……かしこまりました。若奥様、どうぞご存分に」


 何をとは言わないが、私は頷いた。じいが全裸なことに、特にツッコミはしなかった。


「何?珍しく命知らずな馬鹿でも来たのか?」


「な、なんで貴様ら、服を着てないんだぁぁぁ!?」






 私がこっちに嫁いだら、夜間も服の着用を義務づけよう。そんなことを考えていたら、ケビンに顎クイされた。あら、積極的?


「雪花、怪我は?」


「ありません。あ、足を舐めてください。触るでも可」


「…………………なぜ」


「触られて気持ち悪い。あと、口も手で塞がれたから、キスもたくさん欲しいなぁ…いっそ、怖かったのなんて忘れさせてくれないかな?怖かったの…魔力は封じられるし、触られて気持ち悪いし、魔法を使ったら殺しちゃいそうだし……」


「…泣きなさい」


 そっとケビンが私を抱きしめた。


「もう誰も雪花を害さない。誰も害しなくていい。思いきり、泣きなさい。俺が側にいる。何が来ようと何が起ころうと、必ず貴女を守るから大丈夫だ」


 本当に大丈夫なんだ、と私は泣いた。ケビンの側は安心で安全で、怖いものなんて何もない。私はひたすらに泣きじゃくった。だんだんと、意識が遠くなっていく。



「…さて、どうしたものかな。我が婚約者は本当に愛らしい」


 苦笑したケビンが私にキスを落としたのを感じたのを最後に、私の意識は完全に途切れた。

 今回はきりがいいのでここまでです。ケビンが普通にかっこよくて作者が驚きました。

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